その1。
よく小説とかでも使われる、「悪女」っていう役付けは、やはり美人の方が多い。
まぁ、それには理由があるのかもしれないが、俺はそんなこと知ったこっちゃない。ただ、そう思うのだ。
でも、そういう美人は、やっぱり清純派アイドルとかでも想像できるし、かっこいい女っていうのでも想像できる。まぁその辺は使いやすいってことになるんじゃないかと推測する。だから小説にもよく載るのだ。
まぁ、この話はあくまで例えだ。これとは基本関係ないんじゃないかと信じている。
そうやって「女」についての自論を頭の中で考えながら、俺は電車に乗っている。
最近よくある、「ネット彼女」とかいって、掲示板上で彼氏彼女関係になるっていうやつ。
そんなネット彼女とかいう奴が、俺にはいるのだ。
その彼女と、ネット上で、リアルで会う約束をした。
これも最近はよくあることだろ?
彼女は、埼玉に住んでいるからといって、待ち合わせ場所を大宮駅の中央改札と指定した。
ということで、緑色を帯びた、埼京線に乗って、大宮まで向かっているという訳だ。
その彼女は、「悪」というものが一つたりとも無い、純粋な子だ。
きっと、顔も綺麗であることを信じている。
小説とかだと、純粋な奴が意外と不細工なこともあるからな…。
心配を胸に抱えながらも、大宮駅中央改札に到着。
通路の両側に改札があり、その真ん中にはなんか大きいが、よく分からない像が見える。
この辺に居ればわかるよな…。
俺はポケットからスマホを取り出し、掲示板上に「到着した。改札の近くの像んとこに居る」と書き込む。すると、すぐに更新され、「私もその辺。」
と書き込まれる。像の周りを一周して、スマホをいじっている人を探した。
全員だった。
やっぱりこのご時世、これは通用しないか。
「手とか、上げてくれない??」そう書き込むと同時に、俺の左隣に居る人が手を上げる。
「あ…。」
…としか言えなかった。人見知りが恐ろしい。
固まっている間に、その人が像の周りを歩き始めた。流石にこれは声をかけないと。
「あ、あのッ!」
その女の人が振り返る。
「どうも、俺…ハヤトって言うんですけど、ミユキさんですか…?」
「あっ…。どうも。こんにちは。ハヤト。初めまして。」
その人は笑顔で言った。
「悪女」という言葉がそのままそっくり似合う、美人さんであった。
「じゃ、行こっか。」
「え、は、はぁ??」
いや、これは生意気に言ったんじゃない。清純派な、可愛い子だと思っていたからのはぁ?だった。いや、まぁでも普通にそこは勘違いされた。
「何言ってんのよ??デートでしょ?」
彼女は硬直している俺の首根っこを掴み、引きずっていった。
なんか…。違う…。
俺は、美人さんに首根っこをつかんで引きずられてもなお、そんなことをぼーっとしながら考えていたのであった。