甘い物は偉大だ!
私の名前はアンセル。
このウレイスト家で働くメイドの一人で、もう10年ぐらい前から働いている。
私は故郷を魔物の大量発生で失くし、途方に暮れているところをローエン様に拾われて養子ににしてもらいました。
それからは、ローエン様の元でメイドの修行を積みました。いまでは立派なメイドです。
私が働きだしてから2年が過ぎたある日、長男であるトビア様が生まれました。
それからトビア様の身の回りのことをやっていましたが、今でも大変だったことを覚えています。なにせ拾われてから子供と遊ぶなど、したことがなかったため勝手がわかりませんでした。
それに私以外の4人(ローエン様は抜いてます)も、私と似たような環境で育った為か誰もが困惑してましたね。
しかしメイドたるものすぐに適応しなければなりません。私たちは1年間で育て方を覚えていきました。・・・まぁそれでも無理な人はローエン様がみっちり、スパルタ教育をしてましたが。
そして私は現在アーセル様のお世話役に任命されています。トビア様の時の経験を活かしていたので困ったことはありませんでした。
しかしアーセル様の方に問題がありました。・・・いえ問題がなさすぎた《・・・・・・・・・・》と言いましょう。
本来良いことなのでしょうが、ローエン様も心配してらしてましたし。
あら?この匂いは・・・誰か厨房を使っているのかしら?
「ふー、やっとできたかな?」
あれから試行錯誤を重ねて、アップルパイが出来上がった。最初に作った物は緑色のアップルパイができてしまったので、色どりを良くしつつ味を再現するのに時間がかかってしまった。
「アーセル様?・・・ここで何をしておられるのですか!?」
「ちょっとお菓子を作ってみたの。アンセルもどう?なかなかの出来―――」
「いけません!そのようなこと、アーセル様がすることではありません!第一危ないです!」
やっぱり許可を取った方が良かったらしい。うう・・・甘い物が食べたかっただけなのに。
あの後帰ってきた母親に少し怒られた後、夕食後に作ったアップルパイを食べることになった。ちょうど夕方頃だったのでちょうどいい。
4人でテーブルに座り、食事を食べていく。今日の献立は、ゴア肉のステーキと山菜スープだった。ゴア肉は結構の値段がするお肉で、味は大変美味しい。見た目は硬そうなのに、口に含んだらとろけるような味わいを出すので、王族もひと押しするほど。
しかし今は食後に出てくるアップルパイが楽しみでしょうがない。夕食が終わると父親が声をかけてきた。
「そういえば今日のデザートはアーセルが作ったらしいが・・・何時の間にそんなことを習ったんだ?」
「(ギクッ!そういえば甘い物が食べたいから作ったけど、どう言い訳するか考えてなかった・・・)」
どう言い訳をしようか迷っていると、横からローの援軍が入る。
「すいません旦那様。アーセル様がどうしても誕生日に皆を驚かせたいので、内密に教えて欲しいとお願いされたのです。申し訳ありません」
「そう。そんなことを思って作ってくれたなんて・・・。私は嬉しいわ!ありがとうアーセル」
「そうか・・・ローならば不思議でもないな。もういいぞロー」
「簡単なことでございます」
ローのおかげで説明を誤魔化すことが出来たので、万々歳だ。完璧執事の名前は伊達ではない。