三話 序章
暗闇に支配された空間。
その中で、一人の少年と一人の男性が円卓を囲んでいた。
「それでどうなんだニャ」
少年の口調は語尾に似合わず厳しいもの。
「お前は目上の人に対してニャを止めることはできないのか」
それに男性は気の抜けた声で返した。
円卓を囲んでいるだけで円卓会議をしている訳では無いので上下関係は成立する。
「分かっているだろ。これは代償として取り憑いた『不幸』の一つ何だからニャ」
「『アレ』に押され気味なのか?」
「まさか、ヤツは条件付きで屈服させたニャ」
「へぇー、何の条件かは……教えてくれそうにないね」
「誰がお前なんかに」
「そんなに嫌悪している奴の所にわざわざ来たってことは……同じ環境を味わった同情すべき彼のことを訊きにかな」
「いいや、俺の体験した現象はあいつほど陰謀渦巻いてなかったニャ。大体俺らは同情何かいらないんだニャ」
「そうかい? それは失礼」
そして含みのある笑いを発した。
「それでアイツはどこにいたんだニャ」
「異世界、ティラスメニアだろうね」
「異世界? そんなのが存在するのかニャ。あるとしても何でそんな所に」
「はは、何でだろうね」
「無責任ニャ」
「まぁ、我々たちが知っているものたちが全ての魔術師ではないだろうからね」
「……どうするつもりだニャ」
「どうしようもしないさ。私たちは私たちのするべき事をするだけさ」
「じゃあ、あの計画を」
「行うさ。彼は僕が見つけた天然ものの因子の一人なのだから」
「下種めが」
「下種でも悪役でもいいさ、世界のためだからな。君にも手伝ってもらうよ、君の世界を守るために」
「……ニャにをすればいいんだニャ」
「特別なことは、何も。今まで通り君の力で場を整えてくれればいいのだよ、猫屋くん。そろそろ、大詰めだろ?」
「……了解した、夜霧新」
こうして世界は今も刻々と動き出す。
猫屋は立ち上がった。
「最後に訊きたいんだが……向こうの時間とこちらの時間はどれくらい違うんだニャ」
「さあ、どうなんだろうねー?」
「……」
猫屋は新がまともに答える気がないのだと断じ、暗闇を後にした。
「全く……頭のいい人間は扱いに困る。嘘だとばれているや」
その割に表情に困った様子は無かった。
「何も変わらないさ。時の女神さまが眠っている今、お姫様がお茶目でもしてない限りはね」
そう虚空へ呟くと、新もまた立体映像である自分を消した。




