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とある概念が見た終末
それが重い瞼を開けて最初に見た光景は、赤い赤い酸漿に実が天に昇っていくものだった。
辺りを見渡せば、断片的な情報が目の前に広がる。寝起きざまの目が映す景色のように、ところどころが霞んで見える。
死していく魔の術を使う人の子ら。
槍に穿たれる法衣の老爺。
天上にて断罪の言葉をこぼす左手に火の剣を持った天使。
酸漿の実の中には、死した者の魂が入っていた。
またか、とそれは思う。結局人間は定められた運命を帰ることはできないのか。
故ににまた、刻み込む。過去に、この光景を刻み込む。
終わることのない世界での賭け。終わりを迎えるいつの日かまでに人間が自分たちの可能性を超えることを信じて、それは刻む。
そして、世界は終わった。




