四話 序章
三ヶ月という時で、王国内での身喰らう蛇への態勢は完全に固まりつつあった。
国無き医師団内で最大権力を誇る医長に唯一戦列に参加する事を許可された看護士長・プシュケと背徳姫・アンネの両名による裏ギルドの捕虜の尋問−−と言う名の拷問−−の結果、現在身喰らう蛇に残る人間はマスターただ一人だと判明し、そのため、国無き医師団はプシュケのみを送り、王・ニブルドも特記戦力を女郎蜘蛛、黄金騎士団特務部隊隊長・アーサー、竜神の叫炎・ドレイク、星妖精の空・ユーキ、カヤ、久澄碎斗に絞り、説得を続けた。
だが応じたのは、女郎蜘蛛の三名とカヤだけ。
アーサーは国への遺恨から、ドレイクは従来の性格から拒否し、更にユーキはアルニカ・ウェルミンの情報を集めている際に行方をくらまし、久澄碎斗も国軍、四方の巫女の捜索虚しく四界、王域内にはその存在を確認することは不可能であった。
国軍情報部隊に配属されたカヤの命令系統も確立され、女郎蜘蛛を仲介役とした不可解な門の表向きのマスターとの交渉の末、裏の三傑・不可解な門、黒い尾、不可視の竜による干渉、また後への戦争の火種になることは防がれた。
また、ニブルド自身の判断と働きかけでティラスメニア全人類に身喰らう蛇との戦争についての情報を開示、国王の補佐兼指南役の『評議会』による裏からの過干渉が臭わされたが、魔導星がそれを物理的に処理、事なきを得る。
後への問題を起こしそうな点を全て消した国側は、未だ行方の解らない身喰らう蛇の動きを待つしかなかった。
そんな折り、ユーディ、ユーキ、カヤ、アルニカ、久澄不在の星妖精の空の本拠地が外套を着た謎の人物の襲撃を受け、全壊。その跡地を調査すると、初代から引き継がれてきた遺産・勇者の鍵が失われていると判明。
ユーディは既存の情報からすぐにそれが身喰らう蛇による襲撃だと判断。
その報を受けたアンネとプシュケが星妖精の空のメンバーに記憶抹消の魔法の可能性を踏まえた上で取り調べ。
しかし記憶抹消の形跡はなく、顔や身体は外套で隠れていたため特徴も判らず、情報はそこで途切れてしまった。
−−その数日後、王域監視システムからラウラ平原を指し赤色警報が鳴り響く。
次の瞬間、ティラスメニア全土を大きな揺れが襲った。
と同時に、ラウラ平原地下から銀色の城が浮上する。
真上に存在した太陽の光を遮る程に浮上した城。そこを音源とし、世界中に鍵を開けるような音が鳴り響いた。
冷たい空気がティラスメニアを包み、各界に存在した魔物らが狂暴化を始める。それはまるで、東の主、破壊の理である破壊神龍が暴走した際に発した氣に当てられた魔物のようであった。
四方の巫女は、前空の操守・ハーツ・フェアリーの言によりあれを魔王城だとニブルドに知らせる。
また、今は不完全にしか封印が解けていないが、それでも世界に及ぼす様々な影響も伝え、ニブルドは自身の判断の甘さに怒りを覚えながらもそれを抑え、後々に不利になるのを覚悟で『評議会』の権力を使用。全ギルドに各界の魔物と明確に狂暴化した人間の沈静化を命令。
その情報を受け取った国無き医師団も事態を重く見て前人員による協力を明言。
魔導星もユーディ、デーゲンを除き国軍を引き連れ、アンネは南、ヴァンは東、アーデルトは西に配備された。足りない北は自主的に協力を申し出たアルベルトが派遣される。
デーゲンは、この期を狙って動き出すであろう『評議会』からの暗殺者−−暗殺を専門に扱うギルドや伝説の暗殺鬼《夜》を警戒し、ニブルドの守護に回っている。
そして魔王城−−即席の呼び名として天現の城−−へ四方の巫女、アルニカ・ウェルミン、ユーディ・ニィーズ、ニーネ・アルタナ、ヒーナ・エリア、そしてハーツ・フェアリーが向かう。
彼女達は、空の操守・アルニカの魔法にて空高く浮かぶ天現の城内部へと跳んだ。




