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ファクターズ  作者: 綾埼空
二話 巫女との出会いと守るべき思い
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西の村

 固い地面というのは衝撃を吸収しない。つまり歩くために踏み込んだ衝撃が、そのまま足に返ってくるのである。一歩一歩の衝撃は微々たるものだが、繰り返し受け続ければ大きな疲労度なるのだ。


 地球ではそれを諺として後世まで伝えている。


 ちりも積もれば山となる。



 何を言いたいのかというと、一時間以上も石の上を歩き続ければ疲れるということである。


 門を通り続けてから体内時計時間で二時間強。

 なかなか変わらない景色に精神をやられかけながらも、グダグダ歩き続けていた。


 原視眼で視て、ダイアモンド並みに原子の結びつきが固い地面であることを確認してしまい、そんなものを踏みしめていたら疲労は溜まり、気も滅入る。


 何分か前から十歩に一回のペースでアキレス腱を伸ばす動作を入れながら誤魔化していたが、限界だった。


「ユーディ、村までどれくらいで着くんだ」


 その質問に、ユーディは久澄と同じ様な、疲れを溜め始めたような表情で振り向き、言う。


「分からん」


「へ?」


 思わず立ち止まり、ユーディの表情を窺う。しかし、その表情に嘘を言っているような感じは窺えなかった。


「どうゆうことだよ。村の場所は分かってるんじゃなかったのか」


「分かっているで。いるけど……おかしいんや」


「何が?」


「普通なら、あの門を抜けて十何分かで着く距離なんやけど」


「ふむ」


 久澄の思考にユーディを疑うという項目は無い。疑う意味が無いと分かっているからだ。


 なので「ふむ」と呟いてみたが、呟いただけで何が浮かぶわけでもなかった。


 だが、停滞にあった二人の思考を再び動かす声が虚空から降ってきた。


「これは……やられたわね」


「何か分かったのかハーツ」


 即座に原視眼を発動し、ハーツの姿を捉える。


 ハーツは舌を小さく出し、その姿はまるで空気の中に含まれている情報を調べているようであった。


 知ろうと思えば、その情報体がある限り何でも知ることのできる『知恵の実』である彼女は、今初めて久澄たちの前でその力を使用した。


 そんな彼女が「やられた」と言ったのだ。何かしらの現象が関わっているのは確かである。


 原視眼にも映らない何かが。


「幻覚を見せる魔法ね。道理で辿り着かないわけよ。正解はアッチよ」


 そう言い森に視える左を指差した。


 其方に向き直り歩を進めながら疑問を問う。


「誰が生み出しているんだ? 原視眼には映ってないけど」


 原視眼。今更説明する必要もないくらい使っている力だが、この異常事態が意味することを改めて理解するために思考する。


 名は体を表すの言葉通り『原子』を『視る眼』であるところのこの眼は視覚できる全ての情報を原子レベルで察知できる。無論視た情報を処理するのは人の脳なため、ハーツの『知恵の実』同様制限は付くわけだが、久澄はぼやかして視るという方法で脳処理を間に合わせているのである。では、どうやって原子を見分けているのかというと、原視眼持ちは原子を色で見分けているのだ。百何種類もある原子を見分けるのは大変だが、その百何種類が同じ場所に漂っているわけでもないし、設定を変えてしまえば必要な原子の色だけを視ることもできる。


 なので久澄の原視眼で情報が察知できないということは、異常な物質の原子どころか不自然に置かれたため変な感じになっている場所が無いということだ。


 そのことを知っているハーツは、それを踏まえた上でこう答える。


「魔眼はあくまで視る眼。視る光景自体を変えられたら見破れないものなの。勿論、並の魔法使いなら見破れるでしょうが、魔眼を騙せる幻覚使いはこの世に何人いるのかしらね」


「いるで、一人」


 ハーツの言葉に被せるようにユーディは思い当たる一つの可能性を告げる。


 二人は驚愕したが、すぐさま意識を耳に集中し、次の言葉を待つ。それに答えるようにユーディは言葉を続けた。


「魔導星の一人、幻惑のアーデルト、幻覚魔法だけなら世界一と呼ばれてる男や。石世界出身だってことは知ってたんだけど……まさか震石界におるんか?」


「……? どういうこと?」


 最後の自問の内容におかしなものを感じた久澄は歩く足を休めず、そう質問をした。


「アーデルトはな、一年に一度の魔導星が集う場にも幻覚で参加をするという筋金入りの秘密主義者なんや。分かっているのは石世界出身ってことだけで、性別、年齢、その他諸々が謎の存在」


「それが此処にいる可能性があると」


「そうや。本当にそうやとしたらマズいことしてしまったな」


「何で?」


「この幻覚、ウチらがあの門を無理矢理抜けてきたのがバレているのは確実や。そのまま敵判断されたら勝てる見込み無いで」


「まあ、ユーディは攻撃特化だもんな」


 攻撃と幻覚では、時と場合によるが、おおよそ九割幻覚に軍配が上がる。


 雰囲気からして正々堂々なユーディには確実なハーツの力を借りるという手も無いのだろう。


「まっ、その時は俺がるよ」


 だからこそ久澄はそう言った。久澄はそういう時にハーツの力を借りるのに特に思うことが無いからだ。


 綺麗事を言っていたら後悔する。それを実体験として知るくらいの過去を久澄は抱えているのだった。







 二、三時間前に通った白い石の門と全く同じ門を中心に同色の外壁が村を囲っている。それが外側から村を見た景観だった。


 ユーディは大股で門に迫り、まるで殴るような勢いで門を叩く、否、叩こうとして失敗した。


 何故なら、ユーディの拳が当たる前に門が開き、その手は空を切ったからだ。


 開いた門の向こうに居たのは、黒縁の眼鏡をかけた短く暗い緑髪の長身の男性。整った顔に笑顔を貼り付けているというイメージを三人は感じた。


 綺麗なアルトで男性は、何処か演技じみた一礼と共に言葉を発した。


「お久し振りです、ユーディさん。其方の方は始めまして、アーデルトと申します」


「……あんたがアーデルト?」

「ええ、私がアーデルトです。そういえば本当の姿を見せるのは貴女にも初めてになりますね」


 いかにも今気付いたという風に表情を動かし、五指を額に付けた。


 その行動を見たユーディは怪訝、というには野性的な気配を纏い始め、悪い癖を発動させる。


「何で実体を表した……いや、それを問うのは白々しいか。それで、ここでるんか」


「おっと、貴女はいつ見ても好戦的ですね。いや大したことではないんですよ。この村では基本幻覚は使わない主義ってだけなので」


 ユーディの性格を知りながら敢えてその性質を引き出すような台詞回しをしているのだと今更ながらに悟り、久澄は次の言葉を探し数秒の間黙っているユーディが言葉を口にする前に割り込んだ。


「それで、あんたがアーデルトさんかは大事だけど横に置いといて……あんな幻覚をかけたくらいなのにお出迎えってわけではないんだろう」


 アーデルトの纏う感じから敬語を敢えて避け、元々の目的に沿う疑問を問うた。


「いえいえ、あなた方が門番を無視して入ってきたのを感じ、勝手ながら私は試しただけです。我らの姫に会う権利があるかどうかを」


 前半痛いことを言われ息を詰まらせかけたが、何時間か前にも聞いた普段は聞くことのないニュアンスを含んだ言葉に疑問を呈する。


「姫?」


「はい。あなた方が西の巫女と呼んでいるお人、ヒーナ・ネィーン様です」


 答えられたら意外な答えに二人は、身体の中で何かが弾けるような感覚を覚えた。


 その感覚と共にのどの奥に引っかかるような疑問が久澄の脳の奥底に生まれた、が疲労の所為でそれを形にすることが出来なかった。


「何故西の巫女があんたらの姫なんや?」


 久澄の抱えた疑問とは違うものであったが確かなものであった。


「それは私の口からは。訊きたければヒーナ様に」


「訊きたければってことは、俺たちは許可を得れたと」


「そうなります。それでは着いてきて下さい、色々と相談したいこともありますし」


 半身にずらし、門の内へ二人を招く道標のように左手を村の方へ向けた。







 村というべき広さの内観は、真ん中に一本道が通り、その脇に一階建ての石造りの建物が並び、道の先には一つだけ作りの違う二階建てのこれまた石造りの建物が堂々と構えている形だった。


 どこもこういう造り何だなと思いつつ、アーデルトに導かれ真ん中の道を村の住民に奇怪な目を向けられながら通り、敢えて気付かぬふりで最後になる村を眺めていた。


 向かう先は一番奥、久澄の知識では森創界や侵鉄界の村長宅である二階建ての建物だと言われた。其処に西の巫女が居るとも。


 面積はあくまで村なため、目的の建物へは一分も経たずに辿り着いた。


 何故か嫌な予感が背中に走り、無意識のうちに口に溜まっていた唾液を喉を鳴らしながら呑み込んだ。


 この感覚を久澄は知っていた。過去三度、忌まわしき記憶と共に刻み込まれている二例とアルニカの事件、計三度の誰かが肉体的、精神的に死んでしまうような、そんな予感。絶対的に身に染み付いてしまっている喪失への本能的恐怖。


 久澄はそんな感覚を身に纏いながら、いつの間にか開かれていた石の扉から家の中へ一歩踏み出した。






「ふっふっふ」


 三人が入り終わりアーデルトが後ろ手で扉を閉じた音が響いたと同時に、暗闇に包まれた空間にソプラノの中でも更に高いであろう音域の笑い声が響き渡った。


「我が予言通り来たな。星星の導きは我が目に映っているのだよ」


 明かりが唐突に点き、二階の空間から落ちないように作られているであろう石の手すりの上にレディースの短パンを穿いた肩胛骨まで伸びた栗色の髪に同色の瞳。背は一五〇前半、ユーディやニーネより少し小さいくらいだろう。


 少女−−西の巫女、ヒーナ・ネィーンはいきなり其処から飛び降り、膝を柔らかく使い危なげなく着地した。


 そして再び、


「さあ、名乗るがいい、星に導かれし人間たちよ」


 ユーディに対して星とは、と思いつつ、不意に久澄の頭にニーネに言われたある言葉が反芻される。



『……西の巫女には気を付けて』



 そういうことかと今悟った。








 中学二年生の人格形成期には外から様々な影響を受ける。それだけならよいが、感性も外の目を気にし始め少し突っ張ってしまう傾向にある。


 そのため大人に従うのがカッコ悪い何ていう反抗期というものがあるのだが、専門家曰わく必要な時期で、個人的にも親離れの一環として必要な時期だと思っている。


 だが、反抗期とは別のルートを踏んでしまう場合がある。子供心というのは日々新たな刺激や冒険を求めているもので、その本能を心のデリケートな時期に冒す病がある。


 誰が呼び始めたか、それは中二病と呼ばれ、主な症状はアニメチックな言動、行動、格好をすることで、軽度なら周りの目を気にするが重度の症状になると目や口を我関せずで通すことができるという。


 だが中学卒業、もしくは高校入学、就職という変わり目を迎えると八、九割方自然に治る病なのだが、しかし、この病には後悔という後遺症があり、具体的には既知の者からの奇怪な者を見る目、過去を思い出し悶え死にしそうになる、尾ひれのついた噂を流されるというものがある。


 久澄は自身のそんな知識に照らし合わせて目の前の少女を見た。


 服装は普通の物で、変な装飾品も付けていない。いきなり目を押さえたりしないところを見ると行動も大丈夫らしい。


 だが、


「さあ、黙ってないで名乗りなさい。と言っても星の力によりあんたたちの名は知ってるけどね」


 言動に難ありだ。


 別に中二病の人を変に特別視する精神の持ち主では無い久澄は、放っておくのが一番と思考を断ち切った。


 それよりも。


 久澄は瞳だけを動かし右に立つユーディを見た。


 呆気に取られたように口を薄く開けているユーディの姿に諦めを覚え、目の前の少女の言うことは自分が対応しなければと口を動かす。


「俺は碎斗。右に居るのがユーディ・ニィーズ、南の巫女だ」


 久澄碎斗と名乗らなかったのは、無意識の内にニーネの言葉を引きずってである。


 ヒーナは名前を言われた順に栗色の瞳を動かした。


 右から左へ。最後に何もない虚空に目を止めた。


「そこの人は?」


 ハーツが居るのであろう宙を指差し問うてくる。


 訊かれるとは思っていた。しかし、


「姫。失礼ながら其処には誰もいらっしゃいませんが」


 そう、関係のないアーデルトが居るかぎり彼女を紹介することは出来ないのだ。


 まあ、中二病の人なら普通の人には見えていない何かが自分にだけ見え選ばれし者とかと思うのだろうからいいのだが。


 しかしヒーナは久澄が思っていたようなリアクションは欠片も起こさず、むしろ疑念の気持ちを抱いていた。


「……そうね、見間違いだったわ。アーデルト、案内ありがとう。もう引いても大丈夫よ」


「姫、私は説明を」


「平気よ。キツいことを言うようだけど、貴方が居ると話しにくい議題もあるから。そんな目をしなくても大丈夫、あの方の事はきっちり話すから」


「……分かりました。姫、失礼します」


 アーデルトはヒーナに一礼し、次に久澄、ユーディに向き直り一礼。後ろにある石ドアを静かに開き再び一礼、静かにドアを閉め立ち去っていった。


「さて、サイトだったか。あんたは何の関わりが?」


「ユーディがマスターをやっている星妖精の空のメンバーってだけだよ」


「……! 星妖精の空。じゃあ彼女が天修羅?」


 明らかにユーディに視線を向け驚き、そして何かを思案するような表情を作った。


「(やはり兄様はそこまで解った上で二つ名を)」


 呟く、と表すだけでは足りないくらい小さく、確かにあった過去を思い出しながら口の中で確信の言転がす。


 無論、そこまで小さいのだから、複雑な事情があるとはいえ普段の性能は普通の人間と多少しか変わらない久澄たちの耳に届くわけもなく、少し空気に波を生み出すだけだった。


 まあ、普通や特別どころか、人間という枠を越えてしまっていて、尚かつヒーナは四方の巫女であるためどんな音域の言葉も聞き逃さないように意識を傾けていたハーツの耳にはその言葉は届いたが。


 しかし、聞こえただけで意味を知る術は何通りかあるが、意味をまとめると一つに集約され、またその方法は彼女にとって一番やりたくない行動なため、最終的にヒーナの言葉は各個人の中で消化されることとなった。


 思案顔で自分の世界に入っているヒーナを見て、これは少しかかるなと思い、久澄は左手で左手を軽く覆う。そして原視眼を発動。


 身体を動かしドアの方を見る。外に居る人間のみを見れるように設定済みの眼は、外居る人間に含まれる原子を全て映す。


 人の形をしたさまざまな色が三十から四十あり、元々視たかったドアの前には誰も居ない。


 念のため家の中、周り、屋根、地下を視てみたが何も映らなかった。


 盗聴の警戒を終え、一瞬考え原視眼の解除は止め、覆う左手を外し、淡い緑色に発光する目と幾何学模様を浮かべる瞳を障害無しに解放した。勿論右目は閉じたままである。


 その行動に合わせたかのようにユーディの硬直が解け、ヒーナの思案と回想が終わった。


 内から外へ、過去から今へ意識を戻したヒーナは変わっていた現実に目を見張る。


 その目は久澄の左目を映していた。


「悪い。コレ、駄目だったか?」


 あからさまな視線に気付かない程鈍感でない久澄は、先程の巻き戻しのように左手を左目に被せた。


 しかし、焦るように両手を振りながら発した一言は、彼女の性質を思い出させてくれるものであった。


「いやいやそうじゃない。魔眼持ちって始めてみて、話には聞いていたけど……やっぱカッコイイものね」


 中二病イコール魔眼ではないだろうが、やはり憧れはあるのだろうなと思わされる。身近って程ではないだろうが、現実にあると証明されているのであれば憧れも強いだろう。地球でも似たようなことは根付いている。


 しかし、


「そんなにいいものでもないぞ。確かに便利ではあるけど……これは神を殺そうとした烙印何だからな」


 ヒーナはばつの悪そうな顔で目を逸らす。その表情から窺い見るに知っているのだろう。


 魔眼、それは神に反逆するものに戒めの意味を込めて埋め込まれる呪い。


 万物に宿るという付喪神を代表とする低級神からティラスメニアに存在する理自体である上級神まで量や質は違うが持っている。


 一ヶ月の修行の始めにユーキに話された真実。ブレイクマスタードラゴンが敢えてぼかし、疑問を持たれないように気を付けていた現実。


 この性質から魔眼持ちは差別され、また久澄たちは互いに何故魔眼を持っているのかを訊くことは無かった。


 ちなみに追記としてユーキは付け加えの説明をしていた。それは、先天性の魔眼持ちについてだ。


 生まれつき魔眼を持っている者は、勿論神を殺そうとは思えない。


 先天性の魔眼は神によって特別なみらいを決められ、世界に何かしらの影響を与えるまじないであるという。


 だが、生まれつきかどうかは身近な人間にしか分からず、家から出ると差別の対象となることが多い。


 しかし普通の魔眼持ちとは違うメリットがあり、それは脳に魔眼で視る景色を全て受け入れられる部位があるということである。


 生まれくる確率は百年に一度あるかどうかで、また先天性が生まれてきた場合はその時代に何かが起こる前触れとなるという。


 魔眼について、ユーキの恐ろしさを思い出してしまい身震いしながら改めて確認を終えた。



 以上の説明も全て知っているであろうヒーナが大丈夫と言ったため左手を外す。


 解放された左目で右少し上を捉える。


「改めて、そこに居る彼女はハーツ・フェアリーさん。前空の操手だ」


「うん、確かに居るのね。で、何でアーデルトには見えなかったの」


「それは私が説明するわ」


 沈黙を守っていたハーツが声の何時もより声のトーンを下げ話って入った。


「ただ、碎斗君。これから話すことは四方の巫女以外には聞かれたくないことだから……」


「分かった。で、俺はどこに居れば?」


「それなら少し案があるの。ユーディ、あの身代わり作るみたいな技できる? スターなんちゃら」


「……天星残滓スターダスト? ならできるけど」


「じゃあ、三体程造って。空間は私が用意するから」


 そう言うとハーツは何事かを短く唱え、数秒後、久澄の左に水飴を混ぜたような空間の歪みが生まれた。


「えっと、天星残滓」


 ユーディはその歪みに向かって手を伸ばし技を唱えた。


 何となく事情を察しながら確信の持てない久澄にハーツは答えを提示した。


「じゃあ碎斗君、私がいいって言うまでその中で三式の練習をしてなさい。どうせ二式はできるようになってるんでしょ」


 いつ見抜かれた、と思いつつもすぐに答えに辿り着いた久澄はハーツの経験と洞察力に脱帽しながら、善は急げとばかりに歪みへ足を踏み入れた。







「さて、私たちは私たちの会話を始めましょうか。お互いに色々『確認』したいこともあるだろうしね」


 久澄が空間内で練習を始めたのを確認し、失われた歪みを思うところは違うなからも見つめていた巫女二人へ、言葉に緊張感乗せ、ハーツは言った。


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