異常事態
震える石世界と書いて、震石界。
それが今から俺達の向かう所だという。
森世界、森創界は例外とし、何故か此処最近外界と縁を切っているという彼の世界のことを誰も知らなかった。
何故森創界が例外なのか、語ったユーディの中で一応森世界出身ということになっているのを利用し、訊ねる。
ユーディ曰わく、森世界の理であるブレイクマスタードラゴンはこの惑星、ティラスメニアに存在する破壊を司る神みたいなものらしいのである。
唯一神を理に持つ世界として、一種の神聖域扱いをされ、外界との関わりをお互いの同意の元、極限まで絶たれているのだという。 だから、東の巫女、現空の操手がどんな人物で、今はどうなっているのか分からないらしい。
森創界には、できるだけ心配をかけたくないという理由から近寄らずにいたが、空の操手が誰か、早々に訊きに入った方がいいかもしれない。
そう思いながら、久澄は西の街道を静かに進んだ。
今回ばかりは渡りの町で宿を取ることになった。
丁度いい時間に町に着いたのが大きな理由である。
宿屋と看板に非常に大きく書いてあった其処に吹き出しそうになりながらも、頭ではこっちの方が売上アップに繋がりそうだなと冷静に考えていた。分かり易いのはいいことである。
ユーディは宿屋の主人にツインで部屋を頼んでいた。
それを軽く流しそうになったが、
「待ったユーディ、ツインって事は同じ部屋か? それはマズいだろ」
ユーディは今更何入ってるんだと言いたそうな顔をしたが、しかし口にしたのは呆れを含んだこんな言葉である。
「サイト、此処に泊まる金はウチ持ちやで、何で言うほど心も懐も冷めてはないけど、何時、何が起こるか分からないんや。一緒に居た方が色々便利、やろ?」
「……全くをもってその通りです」
ぐぅの音も出させない意見に久澄は同意を示すしかなかった。
久澄としてはユーディが嫌やなんじゃないか、と思っての発言だったのだが、どうやら大丈夫なようだ。
つまり、久澄の内心はそんな心配ができるほどに余裕があった。結局、そういう感じにならなければ、もしくはしなければ、まともな羞恥心が生まれなくなったためである。
慣れというものは恐ろしいな、と感じつつ、久澄はユーディが宿主から部屋の鍵を受け取る光景を眺めていた。
「ふぅ〜」
そんなリラックスをする音が部屋に入るなり聞こえてきた。
久澄でもユーディの声でもない。なら答えは、と久澄は脳から左目に命じ、原視眼を発動する。思ってすぐの発動に、これにも慣れたものだなと頭の隅で自嘲をする際にある苦いものを噛み潰すような感覚を覚えた。その感覚こそが魔眼差別の原因の一端となっているわけだが、此方に来て日の浅い久澄がそれに気付けるはずがなかった。
自分の感じた感覚が、そんな根の深い問題へ繋がっているとはつゆ知らず、久澄の左眼は声の主を捉えた。
十歳位の幼い顔つきに、これから大きな成長をするであろう凹凸の無い身体、そんな見た目相応に幼さを残す大きな目。しかし、アルニカとはまた違う澄んだ空色瞳には何か只ならぬものを決意したような強さが宿っている。
ハーツ・フェアリー。前空の操手にして、星妖精の空創設者にして、初代マスターという凄い経歴を持つ彼女が先程の声を発したのである。
「やっと喋れるわ」
その発言に、久澄だけでなくユーディまでもが成る程という風に首を縦に振った。
彼女、ハーツは自身を知恵の実という神話クラスの存在に変えているのだという。
変えたとはいえ、知識を記録するものは人間の脳なため、色々と制限が付いているのだが、変わる際に其処にあるハーツという存在を世界に漂う存在という、まあ簡単に言えば自分の身体を空気に変えたため普通の人物には見えないのである。
見ることができるのは、物事を視る系の魔眼となる際に制限を付けた四方の巫女だけなのである。
しかし、見えないだけで其処に居るので声は届く。
こうして原視眼を発動させているのは、何だか失礼だからである。
今まで一緒に居たときは街道に人が居ないのをいいことにユーディをからかったりと、黙っていることを知らないとばかりに喋り続けてるわけだが、今まで一緒に旅をしている時は、夜中だったり、早朝だったりと人が居ないことが当たり前の時間だったのだが、今日は宿をとろうとするに適切な時間に町に着いたことから分かる通り、街道を歩いている際は、商人の馬車や、旅の者が居て当たり前の時間だったのである。
それが例え、周りの人から二度見されるほどの速さで歩く二人がいい感じに町に着くような時間帯であってもだ。
そんな中、何もない−−普通の人からはそう見える−−虚空から声を出したらどうなるか。
最初は聞き間違いかなで済むかもしれないが、如何せんハーツはお喋り好きなマシンガントークっ子なのである。
聞き間違いで無いのだから何時かおかしいとバレる。バレるだけなら喋らしておくが、音源が久澄達から離れないので面倒なことになるのは目に見えている。
ギルド管理館に居た、初クエストの時に報酬を投げ渡してきた男性を思い出す。
あれだけ星妖精の空は嫌われているのだ。音源と共に居る二人組が現マスター・ユーディと所属者の久澄だとバレれば色々調べられ、結果、答えは分からず尋問してくるに決まっている。
正直に答えてもバカにされるだけ。答えなければ帰してくれないだろうし、はぐらかそうとしても耳に入れてくれないだろう。嘘を言うという手段もあるがそれを実際にやってみろと言われバレるだけだし、実演できても次は何故そんなことをやったのかという話になるだけである。
本当に面倒くさいことこの上ない。
面倒くさいことと、どうでもいいことで睡眠時間を削られるのが何よりも嫌いな久澄としては御免被りたい。
なので一旦、着替えの替えなどを整理しに、誰も居ない星妖精の空、ギルド内にてユーディから人が多いという旨のことを聞いた時にハーツに頼んだのである。
ゆっくりと腰を据えられる所で話を聞くという条件を提示し、渋々承諾を貰うことに成功したのだ。
つまり、これから彼女のマシンガントークを聞くことになるのだ。
話の内容は面白いし、たまに為になることも言うので嫌ではないが、為になることを言うのより少し多いくらいの頻度で此方に話をふってくるのは久澄としてはツラいものがあった。
ふりが、面白いこと言って、もしくはやって、という芸人殺し−−芸人ではないが−−なものばかりなのである。
多少、他人とのコミュニケーションが怖い久澄としては、其処で声が出るはずもなく、重く、冷たい空気を作り出してしまう。
知恵の実なら悟ってくれよ、と思わなくもないが、わざとやっている節も見受けられるのでその気持ちを口にする気はとうに失せてしまった。
今日もまたふられる可能性に気分が沈みそうになりながら、久澄は左眼でハーツを収め、彼女の言葉に耳を傾ける。
表記するのも憚られる程たわいのない話を繰り返して何個目かの話題の時、ハーツは久澄の木刀を左手の人差し指で指差した。
因みに逆の手は、部屋まで持ってくるように何時の間にか頼んでいたユーディのお陰で運ばれてきた三人分の内、ハーツに配られた食事のパンが持たれていた。
持てるの、とツッコミを入れたい衝動に一瞬駆られたが、そういう生体なんだなと諦め心の内に留めた。
持ってきた人が先程対応してくれた人とは違かったため、廊下に微かに漏れ出たハーツの声をユーディの声と判断してくれたらしく、面倒事にはならなかった。
三人分という変わった事にも、配膳者が久澄を見るなり納得顔で渡してくれたため此方も大事無く済んだ。
ハーツは準備のよいユーディに感謝の言葉を述べてから、いただきますの声と共に運ばれてきた食事に口を付けた。
久澄達も倣い、食材とこの料理を作る過程に関わった全ての人に感謝の言を述べてから、同じく口を付ける。
主食のパンはアツアツながらもしっかりとした固さを持ち、噛む度に麦の味わいを口いっぱいに広げた。
白色のスープは、その見た目とは違いサラサラしたものでクリーミーな味わいを味蕾に伝え、パンの味わいと絶妙にマッチし食べる手を休ませない。スープの中に具として転がっている鶏肉の様なお肉にはしっかりと、しかし適度な塩味が付いておりそれが益々手を休ませない理由を作る。
その量は一般男子高校生である久澄のお腹を満足させる位であり、ユーディ達では食べきれないのではないかと考えたが、それは杞憂な様で二人とも食べるペースを落とさない。
いち早く食べ終わった久澄はそんな二人の食べっぷりに驚嘆を覚えながら眺めていたところ、ハーツが不意にスープの入った底の深い皿を持っている左手からそれを下ろし、指を差したのだ。
指の先を目で追い、木刀を視認、それから再びハーツの方へ向き直る。
久澄が向き直り、不思議そうな顔をしているのを見て、ハーツは自分の培った経験から判断したそれを口にするのを決定した。
「それ、その木刀、かなりダメージを蓄積しているわね」
「そうなのか?」
久澄の表情が疑問から驚きに変化したのを見て、続きを話す。
「一日二日で割れるってことはないけれど、それでもダメージが蓄積していることは確かよ」
久澄には、思い当たる事が幾つかあった。
例えばブレイクマスタードラゴン戦。
例えばユーキとの修行中。
例えば石蛇戦。
大きくダメージを負わせたといえばこの三つがまず最初に頭に浮かぶ。
元々は森世界の、普通の魔物から身を守るために作ってもらった物である。
なのに、森世界の理と戦うは、属性関係無い世界であるとはいえ岩にぶつけまくったりすればダメージも蓄積していくだろう。
「けれどいい剣ね。素材もいいけれど、加工かしらこれは? まあ、とにかく凄いわ。製造者の腕ね、今までこの剣が此処までしかダメージを負っていないのは」
「そうなんだ」
久澄は心の中で加工者であるミヤに感謝を述べながら、一度戻る際に素材を持ってって新しい剣を作ってもらおうと決定した。幸いにも村長に貰った五十エルは残っている。
久澄は言いながら決定したためハーツの次の言葉を聞き逃すことはなく聞き続ける。
「そうよ。そうね、場合にもよるけれど、やっぱり木は四界の属性の中で最弱なのよ。無論、世界の中では最強だけどね。使っているところは見たことないけど王都領域内でも何度も使っているのに目立った傷が無いのは、やはり凄いことよ」
再び久澄は木刀を見た。
ハーツが言った通り此処から見る限りは傷が無い。普通は無いはずが無いのにだ。
知り合いに素晴らしい人が居たものだと、此処に居ないミヤへ感嘆を覚えた。
その後は再び特記すべき話題はなく、唯一話題にできそうなハーツからのふりは、記憶に蓋をし、重石を乗せてしまったため話すことができない。
何をしたかは話せないが、ベッドの上に座っているハーツが足をバタバタさせながら腹を抱えて大笑いし、ユーディが此方を慰めるような目線で見ている今の状況だけを話しておこう。
どうせ明日には現実に戻されるのだ。
後で後悔しようが何であろうが関係なしとばかりに、つまり諦めて久澄はハーツのふりに答えていった。
だがやはり、ハーツの反応とユーディの視線に含まれるものは変わらなかったと報告しておくべきだろう。
誰にだよ、というツッコミは心の中で留めることに思ったより簡単に成功した。
部屋の東側から降り注ぐ日差しに、久澄は意識の覚醒を促された。
久し振りに感じる柔らかな布団に包まれる安心感に、まどろむ意識。
だが、そんな久澄の意識を覚醒させようとしている鬼のような人物は、次のアクションを起こした。
しかし、久澄の意識は、この状況をおかしいと思える程度には覚醒していた。
何がおかしいのか。それは東日が射し込んできたことである。
安眠を妨害してしまう東日の対策はしっかりされているのである。具体的に言えば黒いカーテンで。
だが、柔らかな布団で寝るという行為は一人暮らしである元の世界にてしか行えなかった贅沢なため、誰がそんなことをしたのか、というところまでは頭が回らなかった。
そんな久澄の意識の隙を突いて、腹部に重たい衝撃が走った。
鋭いとも、鈍いとも言えない衝撃に、反射的に意識が反応してしまう。
久澄は凄い勢いで開けた目にて犯人を見た。まあ、普通に考えれば一人しか居ないわけだが。
犯人であるユーディに殴られた腹部をさすりながら起き上がり、同時に思う、何故星妖精の空には暴力的な人間しかいないのかと。
ユーディは、勿論久澄の考えていることなど気付かず、一仕事終えたとばかりに大きく息を吐いた。
そして言う。
「さて、行くで」
久澄はその言葉に、気怠げに起き上がった。
起き上がった久澄を見てユーディは噴き出してしまった。
それもそうだろう。久澄の頭は、ギャグマンガにて爆発に巻き込まれたような弾けた寝癖を付けていたのだから。
久澄は何故ユーディに笑われたのか、その原因に気付いている。
まともな布団で寝ると何時もこうなのである。
その笑いを甘んじて受け続けるのは些か面倒なので、寝癖を直しに洗面所へと足を向けた。
寝癖というのは重力を無視した現象である。久澄は声を大にしてそう叫びたかった。
無論、寝癖がそんな大それたものではないと分かってはいるが、叫びたいのである。
まあ、何が言いたいのかというと、寝癖って全然直らねーってことである。
悪戦苦闘、とまではいかなくとも、それくらい努力はしたのだが、ピョコピョコと跳ねる髪が幾つか残ってしまった。
この頭で人前にでるのかと、久澄は気にしている様子だが、宿主としては見慣れた光景な様で、少し眺めてから表情を動かさず、部屋の鍵と代金を受け取った。
因みに、夜飯有り、一泊、朝飯無しで八千エル。
先程聞いたときには妥当かなと思いながらも、心苦しさを感じた。しかし、今更あれこれ言うのは失礼だなと思い、素直に感謝した。
朝飯を抜いた理由は、先を急ぐ必要があるからであり、それでもしっかりと朝飯になりそうな物はギルドから持ってきているため、今日の朝飯が抜きな訳ではない。
しかし、昨日の晩飯を食べた身としては、朝に期待していた、と言う部分もあったためちょっぴり悲しい気持ちになったのだが、ユーディがボソッと「失敗したな」と呟いていたのを聞いてしまったため何だが色々考えるのは止めた。同じくハーツにも聞こえていたため、空気を読んで文句を言うことはなかった。
宿主のおじさんに礼を言い、宿を出て、何処も一緒な作りをしている渡りの町、イーブから三人は旅立った。
道無き道を進む。それが震石界に辿り着くための唯一の方法らしい。
震石界の件も含め、世界三ヶ所の理を祀る地を知るユーディに、凄いと思うよりまず、何故知っているのかと思う気持ちが先に出た。
特に話すこともなく、黙々と歩き続けていたため、話題作りも含めてユーディに聞いてみた。
少しの逡巡の後、ユーディからこう返ってきた。
ユーディは試練を終えた後、とある理由により深雪界に居られなくなったため村を出て、世界を旅することになった。
自分にこんな力が宿っている理由を考えている内に、何時か自分の力や他世界に居る巫女の力が世界にとって必要になると考え、もしその時は自分が架け橋となるため調べ尽くしていたのだという。侵鉄界に関しては小さい頃、たまに遊びに行った経験があるため知っていたらしいが。
色々と分からない部分はあったが、それを聞く気にはなれなかった。
ユーディの顔が辛いものを抱える人間のものになったからだ。
誰にも語りたくない過去は自分にもあり、共感に近いものを覚えたため、「へぇ〜」とだけ返し、久澄は口を閉ざした。
鉄世界の鉄の様に生えた石。
それに石世界に踏み込んでいるんだなと感じつつ、少しづつ硬くなっている地面を蹴り、進む。
鉄世界の地面も硬かったが、また違う硬さ、言葉には表現しにくい違いが感じられた。
道無き道は唐突に終わりを告げた。
踏みしめる硬さは変わらないが、地面に転がる小石の量があからさまに変わったのである。
そして久澄は、今まで廻ってきた三世界の何処にも無かったあるものを視界に収めた。
石の門である。
その門は堅硬そうな見た目に、灰色の石のみで作られた物らしく、その色のみなのが、それを実際よりも大きく見せていた。
そしてその下に二人、石の鎧を着た男性二人が、片方が腰に剣、もう片方が背中に、原始人の使っていたような先が石の槍をかけて佇んでいた。
事態を確認するためにユーディの方へ向く。
しかし、この光景はユーディにとっても意外なものらしく、訝しむ様に門や人を見ていた。
だが此処に立ち止まっていても情報は得られないと判断したのか、門に向かって歩き始めた。
勿論、彼方からも此方の様子は伺えるので、警備兵−−と勝手に解釈−−は焦ることなくユーディを止めた。
「貴様、王都の者か!?」
槍を持つ方が、些か平和的とは言えないニュアンスで素性を尋ねてきた。
「いいや、違うで」
しかしユーディはあくまで冷静に対応する。
「では何をしに来た」
「…………っ」
関係者以外に本当の目的を話すわけにはいかないため、質問に返答することができなかった。
「答えられぬか。なら早々に立ち去ってもらおうか、王都の者よ。うちの姫は渡すわけにはいかないからな」
そう言い男は背中にかけてある槍を構えた。
それに倣う様にもう一人の男も剣を抜き、構える。
そして、二人はユーディへ槍にて突き、剣にて斬りかかった。
構えられた瞬間、久澄は駆けていた。
ユーディと警備兵の間に入り、左手で左目を隠し、設定を少しいじりながら原視眼を発動させる。
左手を視ることなく、世界に漂う原子を視る。
五行の理、土の式、二式、土塊。
それにより男等の攻撃は弾かれる。
貫通するダメージが一切無いことから、今日は調子がいいなと感じつつ、久澄は、前行ったユーディとの特訓の際、コツを掴んだ二式の内、闇の式、二式を使用する。
五行の理、闇の式、二式、影喰。
影喰の能力は、対象からものが其処にある証明である影をなくし、消すというものである。
しかし、影喰を動物や虫に使うと存在が消えるのではなく、意識が無くなるのだ。これは影が無くなったことにより存在があやふやになる程、曖昧な存在でないからだ。
その力の通り、男性二人の影は失われ、意識を闇の底に落とす。
「たくっ、相手の力量くらい見定めてから動け」
久澄は別にユーディを救うために動いたのではない。あれくらいの攻撃ならユーディは口笛を吹きながらかわせる。
問題はその後の正当防衛である。
石世界ということは失念していなかったが、それ以上にハーツが語った『理を超える力』がどんな風に作用してしまうか分からない。
原視眼を解除し、助けてしまったことを怒っているかな、と恐る恐る振り返った。しかし、ユーディは思案顔で虚空に話しかけていた。
ハーツに話しかけているのである。
ハーツからも何やら返答が返ってきて、二人は幾つか議論を交わしあっていた。
二人も感じていたのである。何かがおかしいと。
結局、先に進んでみないと答えが分かるはずも無いということで、気を失った男性二人を門の脇に寄りかからせ、重々しい門の扉を久澄とユーディは開けず、天空転写を発動し、天星移動にて向こう側へ渡った。ハーツは言わずもがなである。
しかし、此処で三人は一つの失敗をした。
多少のリスクは省みず、ハーツの力で男性のどちらからでもいいから情報を抜き取っておくべきだったのである。
それで何が変わったというわけではないが、それでも警戒はできたのだから。




