あかないまど
今日、私は世界を見た
私と同じ「人」がたくさんいて
波の音や鳥のさえずり
私にはもったいないくらいの景色だった
流れゆく時を知らなくて
大人はいつもだんまりを決めこんで
いつも窓から見える景色だけが
私の生命だった
みんなにとって私は“特別な子”
外にでちゃキケンだって
笑顔をくっつけた人たちが
世界を遮ってしまう
今日、私は世界を見た
私と同じ「人」は叫び声ばかりあげ
大きな爆音・嫌な臭い
私には眩暈が足りないくらいの景色だった
欲しい物はすべて手に入るの
おいしい食事もかわいい人形も
たった一つ叶わない願いとは
外に出ては行けないこと
窓の外の景色が気になっちゃって
ついに私は窓を開ける
笑顔がひきつった人たちが
お出かけした今がチャンス
今日、私は世界を見た
私が想像していたものはなく
耳を塞いだって、目を閉じたって
もう記憶を消すことは出来ない景色だった
昨日、私は世界を見た
望む世界はなかったけど
新鮮な空気に惚れ惚れしながら
私は今、ドアを開けるんだ
誰かが私を呼んでる気がするから
今日、私は世界の仲間入り
なんかの理由で戸籍がない子供が
大人のいいつけを破り、あこがれていた外に出た瞬間。