遠ざかるふたつの光
掲載日:2025/12/17
レイトショーの帰り
河岸の段に腰を下ろし
煙草に火をつけた
秋夜の澄んだ空気に、煙がゆっくりほどけていくのを
ただ、静かに眺めていた
視線の先、ひとつの光が遠ざかっていく
飛行機
見えているのに、音は届かない
あの光を見ているうちに、いつかのあなたを思い出した
あなたはあの光に似ている
顔は思い出せるのに
声だけはもう思い出せない
私には、遠すぎたのだろう
呼びかけた声は、風に溶けた
私には、眩しすぎたのだろう
目を閉じても、残像だけが残った
まだ火が残った煙草を地面に擦り
夜の冷たさだけを連れて帰った




