ひとりぼっちの木
高校時代に書いていたものを思いだして書いてみました。
あの頃の世界はこんな雰囲気だったかな。
広い広い荒野の中に
一本の木がぽつんと立っていました。
その木の上には時計がそっと置いてあって
ずっと時を刻んでいました。
木は千年の間
ひとりで立っていました。
その昔、木の周りには森が広がり
たくさんの動物が集い、鳥が飛んでいました。
今は、動物の姿は絶え、鳥の声は消え
周りの木々も姿を消してしまいました。
いつの間にか木の上に置かれていた時計だけが
時を刻む音を立てていました。
千年の間、夏の暑さの中も冬の寒さの中も
木はひとりで過ごしていました。
木がひとりぼっちになって千年のある日
時計が鐘を鳴らしました。
そして時計は時を刻むことを止め
世界は静寂に包まれました。