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異世界武蔵転生『我、天下無双は飽きた故、のんびり所望ライフを所望する』  作者: 二天堂 昔
第一章『我と最高の仲間たち〜全てにおいては単純にスローライフのためにて天下無双を貫く我が生き様よ』
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第三話(挿絵有)「風、駆け抜ける刃。出会いは双剣の嵐」


――旅に出て、三日目。


山を越え、谷を渡り、我、武蔵はとある町の市場いちばを歩いていた。

目的はただ一つ。


「……ふむ。良き木材があらば、数本ほど拝借したいものよ」


木刀素材の収集である。


目利きの鋭さは異常で、道端に転がった折れた椅子の足一本からでも、その木の年輪や油分を読み取る変態ぶりを発揮していた。


そんな時――


「うおおっ!? どけどけぇぇっ!!」

「きゃっ!? 泥棒よ! 誰か止めてぇっ!!」


群衆の向こうから、一陣の風のごとく飛び出してくる影があった。

それは包丁のような物を両手に持った、忍装束の少女。

背は小柄で、顔には笑み――いや、ニヤリとした悪戯いたずらな色。


「ま〜た食い逃げかいっ! ったく、三日も飯抜きゃそりゃそうなるわ!」


挿絵(By みてみん)


走りながら独り言。

だが――我の眼は彼女の「足運び」に注目していた。


(この動き……風の如し。いや、それ以上に“無駄”がない)


飛び上がる。壁を蹴る。天井を滑る。落ちる。着地。走る。

一瞬の迷いもなく、人々を避けながら、風のごとく駆け抜けるその姿――


「……見事な所作なり」

我は、思わず口に出していた。


次の瞬間――

彼女の視線が、こちらを捕えた。


「あんた、動かんといてやぁああああああっ!」


バシュン!


我の前、地面スレスレに一本の包丁――いや、双剣の片割れが突き刺さった。

瞬間、彼女はその柄を踏み、飛び上がり、我の頭上を飛び越え――


「おお、見事な飛術ひじゅつ


「褒められても困んねんけど! てか、あんた誰やねん!?」


着地した瞬間、彼女は振り返ってツッコんできた。


「名乗ろう。我が名は武蔵。この地にて木刀道を極めし者なり」

「……あかん、剣豪あるある系の変態や」

「我の何が変態か、具体的に十文字以内で説明願いたい」


「変態は変態ってだけで説明不要やろーっ!!」


──ガンッ!!


カエデの風の双剣が、我の木刀「木魂こだま」と激突する。


軽やかでありながら、芯を打つ一撃。

対する我の構えは、微動だにせず。


(ほう……良き“風”を持つ娘だ)


彼女も目を見開いた。


「なんなんあんた……ガチで止まってるだけなんに、こっちの刃が負けた……?」


「我が求めるものは“動かぬ剣”なれば。――して、名を聞かせてもらおうか」


「……風飛かざとびカエデ。忍者、兼・料理人。ついでに、変態の相方役ってとこかもね」


「良き名である、カエデどの。共に旅をする気はあるか?」


「……何その誘い方。いきなりボケるとは思わんかったわ」


「我、常在“真剣”にてそうろう


「もうええわ、しゃーない。ついてったるわ!」


こうして、風のようなツッコミ娘・カエデが仲間に加わった。


――五行庵、最初の柱。風、ここに立つ。



▶次話:「武蔵とカエデの道中の様子」へ続く

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