第二十九話「ラジオ戦国時代とは!?」
──ラジオ戦国時代とは何か?
それは、すべて《五行庵ラジオ》という、辺境の竹林にて始まった一本の放送がきっかけだった。
第一波──「謎の木刀剣豪・武蔵、世界へ電波デビュー」
魔道大国フラムネスの上層、七塔貴族の間でひそかに広がった《五行庵ラジオ》。
その内容は、素朴で、素人くさくて、しかし異様に耳に残る。
何より、情報の選び方が異質だった。
ある時は名も知らぬ山奥の料理の話をし、またある時は鍛冶職人の変態的な素材愛と情熱を。
またある時は火の盾を巡る謎ギミック会議、武蔵の“木刀への愛”という偏執の語り口、更には急に始まる大自然生バトル実況、その後のノリと勢いだけでの宴会報告、そしてお便りコーナー(誰から?)
それらを、涼しい顔でナチュラルに届けてくるのが《武蔵》。
一人称「我」、見事な低音ボイスと超絶天然ボケで、リスナーの脳にじわじわと焼き付いてくる。
放送の最後に必ず言う、
「では皆々、よき静寂を所望する。さらばだ」
──その決め台詞に、今日も貴族の誰かが感涙していた。
第二波──「真似する者、現る」
「これは“ラジオ”という、新たな文化である!」
そう理解した富裕層たちは、自らの“電波塔”を建設し始めた。
名家の娘が《魔導詩朗読放送》を始め、老いた研究者が《符文学講座》を延々と語り、貴族の子息たちが《お悩み相談室》なる公開人生相談を開設。
が──
すべてが《五行庵ラジオ》に勝てなかった。
なぜなら、あまりに人間味が足りなかったからである。
五行庵には、「笑い」「暴走」「ツッコミ」「鍛冶と料理、木刀の変態」「急な超絶バトル」「天然の哲学」がすべて詰まっていた。
あれはラジオではなく、「日常という名の小劇場」だった。
第三波──「ラジオ戦争、勃発」
ついに貴族たちは悟る。
『これ、内容より“パーソナリティ”だわ』と。
こうして各勢力が、それぞれの“看板声”を擁立し、次々とラジオ放送を打ち上げ始める。
内容は政治批評から愛のポエムまで多岐に渡り、電波は魔導を超えて拡散し、ある日民衆にも届いてしまう。
──その時、完全に“ラジオ戦国時代”は幕を開けた。
民衆たちは語る。
「なんか最近、貴族がやたらしゃべりだした」と。
その中心にいるのは──やはり、五行庵
「今宵の一曲は、風飛カエデの“焼き鳥バラード”」
「姫の人生相談コーナーは、ナギサっちにおまかせ」
「天道空雷の『陣形でわかる愛のかたち』」
「拙者、今日はついに“鍛えすぎて折れた”話を披露いたす」
「烈火の大盾クロストーク! 今日は爆発するぞ!」
そして、最後の締めはやっぱり──
「天然木刀・命名:『静かなる爆心』、いかがであろうか?」
「ナイナイナイナイナイッッ!!」
全員からの怒涛のツッコミとともに、今宵も世界は笑いと電波で包まれる。
──これが、《ラジオ戦国時代》の、静かなる、しかし熱すぎる真実である。
次話、五行庵フェス開催決定!世はまさに大・ラジオ戦国時代ッ!!へ続く。




