第二十五話(挿絵有)「建設!五行庵ラジオブース!〜防音か?妄想か?木刀か!?〜」
——翌朝。
五行庵、朝霧の竹林に響く音は、鳥のさえずりではなく……
「そこだァァァァッ!もう一段、音が漏れるぅぅぅ!!」
烈火の怒号だった。
「落ち着け、烈火くん。これは“音漏れ”やのうて、“声が自由を求めている”んやってば」
カエデが天井裏に頭を突っ込んだまま、声を返す。
「だからって、お前の“変態料理トーク”が庭まで響いたらダメだろ!子供泣くぞ!いや、居ないけどさァ!!」
ラジオブース建設——それは想像以上にカオスな工程だった。
設計は空雷、構造施工は黒鋼、木材調達と加工は武蔵、内装装飾と音響効果はナギサ、発案と司会進行はカエデ。
そして、突っ込み役と予想外の炎上要素担当は烈火である。
「拙者、壁材に神木の“二番枝”を使ったが……あの枝、なんか喋っておらぬか?」
黒鋼が一歩下がって、耳を澄ます。
「我も聞いたぞ、たしか『……木刀よ……もっと……』と」
「ヒッ!? こっわ!!それ木刀が生まれた時の“余韻”やて!?もはや呪物やん!!」
カエデが工具を落としかける。
「拙者的には大変興味深い」
黒鋼はそのままラジオブースの柱に頬ずりした。
「落ち着いて、皆さま」
ナギサがふわりとラベンダーの香りを放ちながら、魔法の結界を展開。
「ここには水音の結界を張りますわ。川のせせらぎと小鳥の声を背景に、わたくしの“姫さま人生相談コーナー”を──」
「いや、もう何でもアリだなこのラジオ!」
烈火が呆れつつも、どこか楽しげに椅子を並べていく。
**
その日の午後、ついにブース内装が完成する。
調音用の壁布には魔獣の繊維が織り込まれ、声質強調の魔法陣が床に刻まれた。
録音機材は黒鋼の手による“魔導鉄製”で、ナギサが調律。
ブースの名前は「五行波動録音室」。
そして、メインの録音ボタンが、何故か武蔵の木刀型であった。
「我が録音開始の合図は“魂の一撃”と決まっておる。ポチッとな、などという軽薄さは……邪道也」
「ボタンを“ポチッ”じゃなくて“バキッ”て入れるの世界でお前だけだぞ!」
烈火が叫んだ。
「……でも、なんか愛着湧くわ」
カエデが苦笑しながら木刀ボタンを撫でると、魔導具が「ピィィン」と澄んだ音を鳴らす。
「いい音ですわ……」
ナギサもうっとり。
「武蔵どの、それはまさしく“心音”。木刀がラジオと一体化した奇跡の瞬間でござるな」
黒鋼が全身震えていた。
空雷は静かにブースの天井を見上げると、ふと口を開いた。
「このブース……ただの録音室にあらず。“変態達の魂が交差する時空の狭間”と見たり」
「詩的に言うてるけど、それ要するに“カオス”やろ!」
カエデの最後のツッコミで、スタジオに笑い声が満ちた。
夜——。完成祝いのささやかな宴が始まり、カエデ特製“魔獣手羽唐”と“テリヤキ風炊き込みご飯”が机に並ぶ。
「ところで第一回放送のテーマ、どうする?」
烈火が口をもぐもぐさせながら尋ねる。
「もちろん、我と木刀の出会いからであろう」
武蔵が即答。
「いや、それ誰が聞くねん!!」
次回、「五行庵ラジオ、ついに放送開始!第一回ゲストは……木刀!?」へ続くッ!!
よっしゃー!ついに完成やで!
五行庵、そして――夢のラジオブース!
最初は「なんで庵にラジオブース!?」とか思てたけど……
いざ完成してみたら、めっちゃテンション上がってもうたわ。
姫さんは嬉しそうやし、烈火くんは叫ぶし、空雷は機材に語りかけてるし、創冶は変態グフフやし、武蔵くんは……なんか静かにお茶飲んでるけどな。
ウチらの喋り、実況、変な空気も、これから全部、ラジオ越しに届くようになるんやって。
そんなん、めっちゃ面白いやろ?
せやから――
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次回も、聴き逃し……ちゃアカンで?
ほなまた、ラジオの前で会おな♪
――風飛カエデ




