第二十四話「謎の木箱、新たな挑戦への幕開け」
とある日。
陽が傾きはじめた頃、五行庵の門をくぐって、風飛カエデが小脇に古びた木箱を抱えて戻ってきた。
肩にかかる風の装束が少し汚れているのは、どこか廃村のような場所を漁っていた証拠らしい。
「ウチ、えぇもん見つけてしもたんよ~!」
嬉しそうにそう言いながら、皆のいる囲炉裏の間にドンと木箱を置く。
「おお、何だそれ?かなり古びてるけど……」
烈火が箱をひょいと持ち上げるが、ずしりとした重さに驚いて眉をひそめた。
「ただの箱にしては重いぞ?」
「見た目はただの木箱やけどな、中に魔力が循環しとるのがわかったんよ。試しにちょっとだけ解放してみるで」
カエデが風の魔力を指先に集め、慎重に木箱の蓋をずらすと、内部で微かに水晶のような核が煌めいた。
「……ほう?これは……音声魔導具か?」
黒鋼が身を乗り出し、鼻息を荒くする。「拙者、こういう古代工学魔導系には目がないのでござる!」
「音声……?」
武蔵が首をかしげ、木刀でそっと箱の側面をつつく。
「これは何だ、音を記録する術具か? あるいは、鳴き声の封印か?」
「ふふっ、違うよ武蔵くん。これはな……ラジオっぽいやつや!」
カエデがどや顔で胸を張る。
「ラジオ……?」
ナギサが興味深げに目を細める。
「放送、というものですのね。音を遠くに飛ばして、人々に伝える……うふふ、面白うございますわ」
「なるほど……空間に魔力を乗せて音を飛ばす原理……」
空雷が指先で空中に簡易な魔法陣を描き出し、空間魔法との共鳴を確かめている。
「応用すれば、遠方の拠点とも連絡がとれるな」
「待て、それより重要な問題がある」
烈火が腕組みして立ち上がる。
「誰がそのラジオってやつで何を喋るんだ?まさか——」
「ウチがやってみたいんよ!!」
カエデが勢いよく手を挙げ、満面の笑み。
全員、一瞬沈黙。
「……ふぬ?」
武蔵がぽつりと漏らす。
「いや~なんか、面白そうやん?あの魔導具使って、五行庵から放送してみるっての。料理のコツとか、旅の話とか……あと変なリスナーからのお便りとかも読んでみたいやん!」
「変なって……誰が送ってくるんじゃ、そんなもん!」
烈火がズッコケる。
「ふむ、我が木刀道について熱く語る場として使ってもよいのだな……?」
武蔵はすでに妄想の世界へ。
「拙者は魔導具の整備担当としてラジオのチューニングを極めるとしよう!」
黒鋼は工具袋を背負って走り去る気満々。
「わたくし、朗読パートなら得意ですわ。お便りコーナーで活かせそうですわね」
ナギサはしなやかな指で扇子をパタパタと開閉する。
「天道空雷も参加する。リスナーの質問に、論理的かつ変態的に答えていく所存だ」
平然ととんでもないことを言い放つ空雷。
かくして、「五行庵ラジオ」企画は始動した——!
果たして誰がどんなコーナーを担当するのか?
カエデの夢は実現するのか?
放送事故は起きないのか!?
そもそも聞く人はいるのか!?
そのすべてを、次回——お届けする……かもしれない!?




