第十六話(挿絵有)「五行庵の柱と、神木の奇跡」
神木の魔物が崩れ落ちたあと、静寂の森に風が吹いた。
サァァァァァ……
その風が、神木の上空から何かを運んでくる。
「ん……?」
武蔵が振り返ると、そこには一筋の光。
「……落ちてくる……」
ナギサが見上げて、思わず息を呑んだ。
風と共に、ひらひらと舞い落ちる──黄金に輝く枝。
まるで太陽の欠片を編んだかのような、神聖な光を放ちながら、それは武蔵の目の前に、そっと着地した。
「こ、これは……!」
空雷が目を見開く。
「ま、間違いないで……! これ、噂話しにもあった“黄金の枝”や……!」
「ひゃー! ほんまにあるんやな、こんなレア素材……ウチの料理包丁に使いたいわコレ!!」
カエデが興奮して飛びつこうとしたが──
ピタリ、と黒鋼が止めた。
「拙者が……真っ先に手にしてもよろしいか、剣豪どの?」
いつものような変態的な目つきではない。真剣そのものだ。
「……それは、“神木の意思”が我らに与えた所望の証。ならば、これは全員の手で扱うべきだ。我一人では抱えきれぬ」
「……そうか」
黒鋼は、そっと手を引いた。
その黄金の枝は、今や「六人の旅の証」として、五行庵の中心柱に刻まれる運命にあるのかもしれない──
⸻
あの“黄金の枝”は、仲間全員の手で大切に抱えられ、やがて五行庵の**中心柱**として据えられた。
それはまさに、“我ら六人の象徴”だった。
だが──柱として安置してから数日後。
深夜、静まり返る庵に響く、コトン……という微かな音。
朝になると、柱の足元に小さな黄金の枝が、一本だけ落ちていた。
「……何、これ?」
カエデが首をかしげる。
「ま、まさか……繁殖か?」
烈火が頭をかく。
「違う、これは……神木が『選びし者』に与える祝福の証」
天道空雷の目が光る。
「しかも……間違いなく、前の枝とは“少しだけ違う性質”を持っている」
ナギサが静かに枝を手に取る。
「これは……癒しの気配がございますわ。まるで、わたくしの魔力を引き出すように……」
黒鋼が続ける。
「このまま、柱として庵に据えておけば、さらに進化するかもしれんのう……」
──そして二ヶ月後。再び“黄金の枝”が、音もなく生まれ落ちた。
以降、五行庵の“神柱”は、二ヶ月ごとに一枝ずつ、新たな黄金の枝を「産み落とす」奇跡の柱となった。
仲間たちはそれを「神の恩恵」と呼び、枝ごとに用途を変え、大切に使うようになるのだった。
⸻
次話、神の恩恵、武蔵の所望に応える!?へ続く。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございますわ。
武蔵さまの“所望ライフ”は、いつも波乱万丈でございますのに……それでも、どこか穏やかな空気を纏っておられるのが、不思議でなりません。
皆さまにも、ほんの少しでも癒やしや微笑みをお届けできておりましたら、わたくし嬉しゅうございます。
次回――
「神の恩恵、武蔵の所望に応える!?」
いよいよ、“あの出来事”が動き出しますの……お楽しみに、ですわ。
もしよろしければ、ブックマークや評価で応援していただけますと、わたくし心より励みになりますの。
感想も、そっと寄せてくださると……武蔵さまも、きっと茶をすすりながら喜ばれますわ♪
それでは、また次のお話しでお会いできますように。
――水姫ナギサより




