第十一話 「竹林着きし六人、そして剣豪あるある」
朝靄を抜けた先に広がるのは、静謐なる竹林。
淡く差し込む光が、青緑の葉に反射して宝石のような輝きを放っている。
風が吹けば、竹と竹が擦れ合い、笹がささやくような音を奏でる。
「……ここだな。ウチらの“所望ライフ”を始める場所」
と、風飛カエデが目を細めて言う。
「拙者の鍛冶工房も、これだけの静けさがあれば申し分ないである」
黒鋼創冶が腕を組み、唸るように頷いた。
「わたくし、ここが……好きですわ」
水姫ナギサは光に包まれた竹の道に、そっと手を添える。
「いいじゃねぇか、ここ。オレさまの盾さばきも冴えわたるぜ!」
護堂烈火は早速空手形を切り始める。
「天道空雷、この地を“戦術的楽園”と認定する」
天道空雷はその場で三歩、無駄に意味深な歩法を踏んだ。
そこへ、やはり当然というべきか――
武蔵がすっ……と竹林の中心へと進み、背筋を伸ばして構える。
「……ふっ、ここまで静寂なる場に立つと、ついやってしまうな」
木刀をゆるりと握り、目を閉じる。
「出た、またや……!」
カエデが、すかさずツッコミ体勢。
「――剣豪あるある、その二十五」
「“竹林で構えを決めた時、九割の剣豪は“我、ここで何人斬り伏せたかのう……”と過去に思いを馳せがち”」
「いや知らんがなッ!!」
見事な間髪入れで、カエデの裏拳が武蔵の額にヒット。
「……ふふ、懐かしい感覚ですわね」
ナギサが笑い、創冶と烈火も吹き出す。
「剣豪どの、いずれ“竹斬り試合”なる行事でも開催しますか」
「ウチがルールブック書くで」
「なら拙者は勝者のための“竹製大槌”でも打ちますか」
笑いの渦が竹林に広がる――
かくして六人は、己が“所望”の居場所をついに手に入れたのであった。
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次話、「ここに我らの庵を建てようぞ、五行庵!」へ続く。




