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7.再戦

背中が痛い。だが流血もしていないし、骨も折れてなさそうだ。良かった。


壁にぶつかった衝撃をローブが吸収したんだな。

背中の痛みは多分、吸収しきれなかった衝撃が伝わったせいだろう。


本当に……こういう時だけはライルに感謝しなきゃいけねえな。


このローブがなかったら俺の身体はボスに引き裂かれた後に壁にぶつかって粉々だったろうな。


あんまり考えたくはないかも……


さて今の問題は3つだ。一つ 身体が壁にはまって抜けない。二つ 結構地面まで距離があるから降りれない。 3つ。ボスが天井を伝ってこっちに来ている。


「歩夢さん……あの……何とか拾うので降りて来ても大丈夫ですよ」


打開策を考えていると下からルナの声が響いてくる。


気づけばさっきまで昇降板辺りに立っていたルナが俺のすぐ下まで来ていた。


まずい!こっちにはボスがいるんだよ。


「バカっ!来るなっ!」

「そんな言わなくても……ひぃっ!」


ルナの呼び声に反応していたボスが歯をむき出して、ルナの方に跳び降りる。


あぁ……終わった。守るって誓ったのに……諦められるかよ


「すぐ行くから!逃げろぉぉぉぉっ!」

「うわぁぁぁぁん!助けてくださーい歩夢ぅぅぅ」


ボスが全速力で月兎を追い回しているが、ルナに追いつく事はなくいい感じの距離感で追いかけっこをしている。


よく考えればルナは俺の何倍も足が速かった。単純に逃げるだけなら大丈夫そうだな。


よし!この時間の間に抜け出す方法を探しだすぞ。


問題が一つ解決した。後はどうやって抜け出してどうやって降りるか。


「身体は簡単に抜ける。後は地面に降りるタイミングでダンゴムシになればローブが衝撃を吸収する。それが一番の良作だ」


男にも女にも聞こえるような謎の声が俺の考えの中に入ってくる。


それがいいな。

勝手に人の考えに割り込んできやがったけど。いい考えだと思う。


でもこの声は一体……?ライルの声な気もするけど……なんか違う……でも俺の頭に話せる奴なんて限られてるし。


「ちょっと歩夢ぅぅぅ!早ぐっ助げてくださぁぁぃ……」


あ、そうだった。早く助けないと死んでしまうな。今、行くぜ。君のヒーローが。


俺は身体に力を入れて、身体を壁から引き抜く。

引き抜くと共に俺は全体を丸くして、地面まで落下した。


俺は高反発マットの様に地面で一回小さくバウンドし、地面の上を転がる。


痛てえ。いくら万能ローブとはいえ、全ての衝撃を吸収できるわけではないんだよな。

衝撃をまともに喰らうよりはマシだとは思うが。


さて……やられた借りは返させて貰うぜ。


「おい。ギリ聞こえてんだろライル。この銃。もう一丁くれないか?」

「なんで分かったの?ボイチェン使ってたのに……。えっと……銃だね。でもこっちから送ることはできない。AIMのせいで位置が特定できないようになっているからね。だから非常用としてトリガーを前に押して。それと……トドメはよく貯めたので決めるんだよ」


ライルがノイズ混じりの声ながらも、俺に丁寧な説明をして通信を切った。


その発想はなかった。本当にトリガーなんて前に押せるのか?


俺は言われたとおりにトリガーを前に押してみる。


すると鉄のぶつかり合う音と共に太かった横面積の半分くらいのデバッカー二つに分かれた。


なるほど……二重なってたのか。どういう構造で出来ているかは知らんが、つまり片方ずつの威力は2分の1という事か。いいだろう。


やっぱゲーマーならこうじゃないとな。片手銃なんてカッコ悪い。


俺は西洋のガンマン風にデバッカーを両手に構え、ボスの方へ全速力で走る。


はあ……足遅っ。全然追いつける気がしねえ。

向こうからこっちに来てもらうか。


「おーいルナ。チェンジだ。こっちに来い」

「うぅ……頑張ります!」


遠くの方からボスを引き付けた月兎が自動車並みの速さで向かってくる。


いやいや。誰もそんなスピードで引き付けて来いとは……


まあいい。今の俺は気分が高揚しているんだ。それくらいは気にしない。


しばらくバグ修正ばっかで忘れていたが……やっぱり強力な相手と戦うのは楽しいな。


「リベンジマッチだ!」


俺は月兎と入れ替わり、挨拶代わりに二丁のデバッカーで胴体を集中攻撃する。


ボスは俺の姿を見た瞬間、再び目の色を変える。


途端、デバッカーレーザーを圧倒的な瞬発力で躱しながら、じりじりと間合いを詰めてくる。


「男と女で態度を変えるんじゃねえよ」


俺はボスが身体を捻りながら振り回す尻尾を華麗に躱し、羽や尻尾にレーザーを撃ち込む。


狙いは部位破壊だ。ゲームじゃあんまり意味はないかもしれないが、現実のモンスターへの部位破壊効果は絶大。


相手の使える技の種類は一つでも減らしておかなければ。


その結果。ボスの数回の簡単攻撃を躱すうちにレーザーは尻尾を砕き、爪を折り、ムササビらしき翼をあちこち穴だらけにした。


「グルルルゥォォォ!」


雄たけびからの一撃。さっきはぶったばされたが……同じ轍は踏まない。


しかし、ボスの下から突き上げてきた腕は無情にも脊髄反射で躱した俺のローブに当たり、上へ吹っ飛ばされた。


轍ふんじゃったー。轍ふんじゃったー。また同じ轍をふんじゃったー。

俺死んじゃったー。


待て!勝手に死んではいけない。高所。振りまいたレーザーエネルギーの溜まる場所。

これは絶好のポジションだ。


ボスはここぞとばかりに怒りのオーラを纏いながらこちらまで高く飛翔してくる。


脚のバネだけでここまで来れるのかよ……。

でもその方が回避率が減ってAIMを合わせるのが楽だぜ!


俺は二つの銃を一つにくっつける。それと共に銃から慣れ親しんだ声が響く。


「エネルギー吸収……出力全開」


ありがとうよ。ライル。


Wショット オーバーリミッター。


そう心で唱えトリガーを引く。デバッカーからは強力な青色のレーザーが射出され、

突っ込んでくるボスを地面に叩きつける。


ボスは地面で少し唸った後、風に吹かれた塵のように消えた。


興奮状態の終わった俺は重力に身を任せて地面へと落ちていく。


ボスを倒した……これだけで俺にとっては大きな成果だ。新技名超カッコよかったな。

しかし……デバッカーはエネルギー切れだな。すぐ回復するとは思うが。


てか……俺落下してるじゃん。何とかダンゴムシで耐えられるか?

それでも命は助かるが……骨折はするな。


「歩夢ぅぅぅ!今、拾いますからー」


声の方を振り向くと、地面の方でこちらに猛烈なスピードで走ってくるルナの姿があった。


まだ希望があるじゃねえか。落とすなよ。絶対に落とすなよ。冗談抜きで。

俺も何か出来ることをしなければ。そうだローブ。


俺はローブをムササビの様に広げる。


これで少しでも落下の衝撃が抑えられるなら


俺はそのまま急降下し、俊足の月兎にスライディングキャッチされた。


いや。落とさないんかい。落とされたら死んでたが。


「ナイスキャッチ!ゴールデングラブ賞狙えルナ!」

「ぐすんっ!怖かったです……歩夢さんが死んでしまったら私はどうやって……」


ルナは俺の傍で俯きながらも俺の胸元に顔を埋める。


これで胸を撃たれない男がこの世にいるのだろうか?


俺はその頭をもう一度よく撫でた。


やっぱモフモフだぁ……ウサ耳最高。


「きつかったな。でも大丈夫。今の俺は負ける気がしない。ボスを倒すぞ」

「はい……そういえばさっき、隠し扉を見つけました……障壁で塞がれてましたが」

「ナイス」


もう既に見つけてたのか。手間が省けたな。


AIMはもっと手強いとかやめてくれよ。もう体力はあまり残っていないんだ。


「ところで歩夢さん……恥ずかしくなってきました」

「えっ!あっああ。悪い。つい夢中で」


俺はルナの頭から手を離し、近くの地面に寝転がる。

ルナも耳をピクピク動かした後に力が抜けたように地面に寝転がる。


俺たちはそこで束の間の休憩をした。


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