表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

6.第3層 鼯鼠の間


お尻が焼けるー。ローブは絶対に焦げている。

いや。そうでもなかった。焦げない仕様なら結構便利かも。


「あと何匹ですか~~」

「数匹だ。もう少し粘ってくれ。納豆。納豆」

「え~~」


いやー唯々、直進してくるだけのモンスターを仕留めるのは楽だな。


これじゃあただのAIM練習だな。AIMにAIMを合わせるためのAIM練習だからちょうどいいか。


やべえ……エセ神にとりつかれたかも。


残りの数匹をレーザーで撃ちまくって何とか気を持ち直した。


「全員倒したぞー」

「はあ……はあ……それで……もう止まっていいですか?」


少女がかすれた声で言う。


そういえば少しずつスピードが落ちていると思っていたところだ。


「上の階層までお願い。自分で昇降板探すより早いからな」

「そんなの鬼ですよー。昇降板?そんなのどこにあるんですかー?」

「お前じゃないのか?」


他にも2階層に人がいるのか?それならこの少女や俺が出会っていてもおかしくない。


じゃああの骨が?しかし、人間が骨になるまではかなり時間がかかる。

足跡や痕跡がくっきり残るなんてそうそうないだろう。


てことは……何者かが俺を誘い込んだ?それともこの少女の勘違い?嘘?


「その……『お前』はやめてください……出来ればルナリエって呼んで貰いたいです……」


ルナリエと名乗る少女は俯きながらもじもじする。


なんか超可愛い。これ一応、美少女救済イベント成功かー?

おっと!何考えてんだ。今はそれより大事なことがあるだろ。


「あぁ……すまんルナリエ。所で一階層から二階層にどうやって上がったんだ?」

「苦手ならルナでもいいです……特別ですよ。あっえっと!私はここに来たときからずっとこの階層に居ました」


これが真実なら。

あれはAIMの物で間違いないな。

たまたまなのかドジなのかそれとも俺への罠なのか。

いずれにせよ本人に聞いてみないと分からないな。真実なら


「えっと……鬼さん。これがしょうこうばんですか?」

「歩夢でいいぞ」


やっと見つけたか。どれどれー。


「昇降板ではあるが、これは1階層から2階層に上がる昇降板だ。一周してきたな」

「また振り出しですか~……」


なんかルナが俺の娘みたいな気がした。

やめろお……俺の過去に捨てたロリコンが復活してしまう。


俺は同僚にロリコン趣味がばれた時に捨てると誓ったんだ。


あれ何でバレたんだろうな?どうせ遊び半分の奴がこっそり『デバック重要書類』って言うファイルを開きやがったんだ。


あの時は大変だった。思い出したくもないぜ。


「はぁ……もうダメです。そろそろご褒美をください」


前をずるずる歩いていた月兎が地面に座り込み、上目使いで何かを求めてくる。


ご褒美!?何をすればいい……金か?金ならあるぞ。


「金貨しかないがいいか?」

「むぅ……お金じゃないです。言わせないでください」


なに?何?ナ二?七二?もしかしてそういう事?刺激が強すぎる……


「撫でて欲しいです……恥ずかしいですが」

「お、おう」


俺はこちらにすり寄ってきたルナの頭をなでなでしてみる。


耳が柔らかい。これは禁断症状が発芽しそうだ。


「もういいですよ……今度は歩夢……が私を運んでください」


お嬢様のためなら地の果ててでも駆け抜けて見せますよ。


は……ははっ!ダメだ。これ以上誘惑される前に早く出よう。


「あれ?ルナ。ちょっとお前重くないか?なんか引っ張りずらいんだが」

「ひぅっ!んんんっ!」


顔を真っ赤にしてどうしたんだ?まさか……獣人にまでそういうのあるの?なんかめんどくさいな。


「歩夢さん。嫌いですぅ……」

「ごめんって!」



「よし。やっと見つけたぜ。時間はかかったが何とか3層に行けるぞ」

「……」

「ところでルナは戦えるのか?流石に3層は危険だからな」

「……」


ぐっ!何かずっとルナがムスッとしている気がする。

まださっきの事引きずってるのかよ。仕方ないな。


「俺が悪かったってルナ。発言は撤回するからそんな怒るなよ」

「ここから出たらいっぱい甘やかしてくださいね……それなら許します」


おいやめろ。死亡フラグ立てるな!縁起が悪いなー。

これはもしかしたらキュン死フラグかもしれん。胸が痛む。


「ところで……戦えるんだよな?」

「私は基本的には弓ですけど……今は武器を持ってなくて。戦えません!」


護ります。ルナのためなら俺は史上最強のAIMですら倒せるかもしれない。



「行くぜルナ。いざとなったら俺に任せなさい」

「嬉しいです!私も出来ることはしますね……役に立ちたいので」


ふぅ……まずは自分を制御しきらないとな。


俺は自分で昇降板乗った後、うなだれたルナを持ち上げ昇降板に乗せた。


昇降板は光を放ち、障壁の出現と共に上に上昇する。


「わぁ!何ですか?これ?面白いですね」


この世界の人間にとっては珍しいものだからな。俺は毎日見ていたが。

自宅が狭―い狭―いマンションの一部屋にずっと引きこもってたからな。エレベーターで周りから冷たい視線を……。


俺は嫌な思い出を思い出したせいか少し気分が悪くなった。


「開きましたよー。歩夢。早く出ましょう……」


ゴツゴツ岩の広間?ここは迷路じゃないのか?何だ。何もいないじゃないか。

ボーナスステージそれとも……。


あれ?ここだけ地面が暗いな。まさかっ!


「月兎っ!避けるぞ。上だっ!」

「へっ?」


俺はぼーっと突っ立っている月兎を引っ張り影の中から出る。


俺達が離れてまもなく巨大なムササビとヒョウが混ざったような真っ白なボスが地面に降り立つ。


おいおい。これはモンキラじゃねえんだぞ……さすがに銃一本じゃきついぜ。


「はわわわわわ。ど、ど、どうしましょう」


隣で月兎が激しく動揺しているのが分かるくらいに震えている。


「どうするって戦うしかねえだろ。それ以外に道はない」


どうせここから逃げたって下でモンスターと消耗戦に挑んで飢え死にか討ち死にのどっちかだ。

それならこのギャンブルに賭けるしかねえ。


「月兎は昇降板近くで待ってろ。危なくなったら逃げるんだ」

「で……でも歩夢は?いなくならないで欲しいな……」


ルナが寂しそうな表情でこちらを見てくる。


やるしかねえんだ。


「俺は戦う。あいつを倒す」

「必ず倒してください……応援してますから。また撫でてください……」

「あぁ……」


ピコン!

歩夢の能力ステータスが大幅に上昇しました。

いかん……集中しなければ。さあ!行くぞ。


俺はいつものFPS感覚のダッシュで安全距離を取りながら、ボスにデバッカーを連射する。


くそ……動きが速いな。安全距離を取ってもすぐに詰めてくる。

弾はオートエイムみたいに吸い付いて比較的当てやすいが距離が……


スタミナを回復する時間がない。


ボスは絶え間なく爪でひっかき尻尾で薙ぎ払ってくる。俺はそれを避けつつ、安全距離を取りながらデバッカーのレーザーをお見舞いする。


あれ本当にダメージを喰らってるのか?少しも聞いてる気が……。


そう思った瞬間、モンスターの動きが一瞬止まり俺は身体を休めつつ銃を撃ち続ける。


はぁ……はぁ……デバッカーの仕事とは思えないほどの運動量だな。

アルクウならもう数百ポイントは溜まってるんじゃねえか?


「歩夢!気を付けてください……何だが嫌な予感がします!」


昇降板近くからルナの大声が聞こえる。


何だって?ダウン状態じゃねえのか?


「グウオオオオッ!」


途端、ボスの咆哮が耳を刺す。


俺は鼓膜が破けないように慌てて耳を塞いだ。


おいおい。マジでモンキラらしくなってきたじゃねえか。


でもやることは変わらねえ。安全距離を取りながら、デバッカーを撃ちまくる。それだけだ。

さあ……安全距離を……いない?


慌てて正面を振り向くと、赤い残光とともに影の如く現れたボスが片腕を振りかざしていた。


くっ!間に合うか?完全防御態勢。ダンゴムシ!


振り降ろされた爪は丸まった俺の背中に当たり遠い遠い壁まで吹っ飛ばされる。


「歩夢ぅぅぅ!ビックリしましたよ!」


そこは悲鳴を上げて泣き崩れて欲しかった。視力良すぎだろ!!!


俺はゴツゴツ岩でできた壁に勢いそのままぶつかった。


ブックマーク、いいねありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ