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恋の消失パラドックス  作者: 葉方萌生
第五話 潮風にのまれて
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「へ」


間抜けな声を挙げたのは紛れもなく私だ。柚乃の口から突然私の名前が出てくるなんて思ってもみなかった。クラスメイト全員が一斉に私の方を振り返る。何十もの瞳が自分の方に向けられていて、目を逸らそうにもやり場がない。


「春山か。先生は問題ないと思うが、本人はどうだ」


その場で決断を迫られて、「あの」「えっと」と返す言葉が分からなくて混乱

する。ちょっと待って、展開がいきなりすぎて思考が追いつかない! 文化祭の実行委員をやろうなんて私の計画の中にはなかった。去年だってクラスで一番積極的だった子がやっていたし、私は教室の隅で指示された仕事をするので精一杯だったから。


雪村先生の真っ直ぐすぎる視線があまりにも眩しい。でも一番気になったのは私を見つめる神林の表情だ。まるで「日和ならできる」とでも言いたげに、凛としたまなざしを向けていた。再び窓から風が吹きつける。今度はカーテンではなく、私の髪の毛が視界を遮る。いつの間にか胸のあたりにまで伸びた髪の毛が、さっと顔を撫でてもとの位置に戻った。彼が意味深に頷いたのにつられて、私も無意識のうちにこっくりと顎を引いていた。


「お、やってくれるんだな。ありがとう春山! 神林、春山、よろしくな」


ちょっとした私の仕草を肯定の意に受け取った雪村先生がバチバチとうるさいほどの拍手を披露して、みんなもそれにつられてパチパチと手を鳴らす。私以外の全員が今胸の内でほっとしているのが分かる。無事に実行委員が決まって良かった。自分に火種が飛んでこなくて良かったと。


なりゆきで実行委員になってしまった私は誰にも聞こえないように小さくため息をつくどうする。どうするよこれ。人前に立つのはあまり得意ではないし、実行委員になったことが母にばれたら今度こそ家を追い出されかねない。

柚乃が一瞬私の方を振り返って完璧な笑顔を見せた。なんで、とちょっと不満を言いたいところではあったが、彼女が私を推してくれるのは意外だし嬉しかったのも事実だ。嫌がらせなんかではなく、純粋にいいと思ってくれているのだということは理解していた。


「早速今週末に実行委員会があるから、神林と春山は出席するように。残りの

時間でクラスの出し物を決めよう」


ひとまず今日の大仕事である実行委員決めが終わった雪村先生は涼しい顔で次の議題へと話を促した。もう先生が実行委員やればいいのに、と思ったのは私だけではないだろう。


早速私と神林は前に立たされて、文化祭の出し物を決めにかかった。お化け屋敷やらカフェ、フリーマーケットなんかが毎年人気で、みんなが提案してくるものもほとんどが人気の出し物だった。


先ほどの実行委員決めの時とは異なり、全員が好き好きにやりたい出し物を発言していった。トントン拍子に話し合いは進み第一希望から第三希望までの出し物が無事に決定。 同時に終業のチャイムが鳴り、第一回目の文化祭の話し合いは順調に幕を閉じた。


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