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翌日の5時間目は一時間丸々HRに当てられた。お昼ご飯を食べた後に数学や英語の教科ではないことに、クラス全員が歓喜していた。HRなんてほとんど休憩モードで受けられる。誰もがそう思っていたことだろう。
しかし、予想に反して担任の雪村先生の熱がすごかった。
「いいか、文化祭と言えば青春! お前らの青春の良し悪しはこの期間に決まると言っても過言ではない!」
昨日、プロテインを飲みすぎたんだろうか。それとも以前よりも盛り上がった筋肉が熱を発しているんだろうか。と誰もが疑いたくなるほど、先生は本気だ。
「さて、実行委員だが。誰かやりたい人はいるか? 男女一人ずつ必要なんだが」
シン、と静まり返る教室。誰もが先生と目を合わせないように視線を宙に彷徨わせている。私もその一人だ。昨日成績のことで母と喧嘩したばかりでとてもじゃないが実行委員なんて引き受けられるはずがない。
「はい」
視界の右端でスッと一人の手が伸びた。物好きもいるもんだと思い視線を合わせると、神林の黒髪の先が窓から吹き付ける秋風に揺れていた。窓際に座る私の目の前に、カーテンがフワーッと広がり一瞬視界を遮られる。カーテンが元に戻ると、雪村先生が「おっ」と嬉しそうな声を上げているところだった。
「神林、頼むぞ。他に異論のある男子はいないか?」
誰も何も声を発しないところを見ると、反対する者はいなそうだった。あとは女子だな、と思いの外スムーズに議論が進みそうだと安心した様子の雪村先生は、組んでいた両腕を解いて教卓に手をついた。
しかししばらく待っても女子の立候補者は現れなかった。
女子はくじ引きか、学級委員にふられそうだな——と誰もが予想していたとき。
「あの」
真っ直ぐに手を挙げたのはクラスの人気者である遠藤柚乃だった。
「おお、遠藤か。やってくれるのか?」
「いえ、立候補じゃなくて推薦なんですけど」
「ほう。誰を推薦したい?」
「私は春山さんがいいと思います」




