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恋の消失パラドックス  作者: 葉方萌生
第五話 潮風にのまれて
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「私、バスケのことほとんど分かんないけど。でも頑張ってダメだったことはたぶん無駄じゃないよ」


「おお、励ましてくれてる? さんきゅな」


神林が、今度は白い歯を見せて明るく笑う。ドクン、と心臓は正直に脈打った。

ああ、ダメだ。

もう意識しないって決めたのに。

だけど、意識する・しないって理性でどうにかなるものなんだろうか。抑え込んでいるうちは、少なくとも彼のことを意識しているわけで……。


「あー……」


「どうした?」


思考がショートしそうな私が突然声を上げたものだから、神林からしたらさぞ怪しかったことだろう。


「いや、なんでもない」


「日和って真面目なやつだと思ってたけど、時々変だよな」


「変はひどいなぁ。でもそうなるか」


彼となんでもないやりとりをするだけで、胸はきゅっと締め付けられる。私はまだピエロになれていない。穂花の背中を押す前に、もっと鍛錬しないと。


「じゃ、もうそろそろ始業だしまたあとで」


「うん」


またあとで話すことがあるのか、もしかして話しかけてくれるのか、いや単なる社交辞令なのかと考える暇もなく、雪村先生が「席につけー」と教室に入ってきた。心なしか前よりも肌が黒くなっている。「先生日焼けしたー!」と女子たちにつっこまれているのを見て、やっぱりなと確信。夏だもん、先生だって遊びたくなるよね。

私も、神林ともう一度だけでいいから遊びに出かけたい——と、また余計なことを考えてはぶるぶると頭を振った。

考えない考えない。

私は彼と友達でいると誓ったのだから。


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