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「お父さんって、漁師の?」
「そう。夏は決まって俺も海に出てる。風が気持ちいいしな」
「へえ、偉いね」
気がつけば自然と神林と言葉を交わしている。穂花がいるだけで、その場が明るくなるし私たちは気兼ねなく話ができる。もしかしたら穂花は、私たちの関係をどうにかしたくて 今日神林を呼んでくれたのかな。
そういう気遣いを、さらりとやってのけるのが穂花だ。彼女とは去年からの付き合いだけど重々分かっていた。
「そうだ、あたしサイダー買いにいこっと。二人もいる?」
たこ焼きを食べ終わった穂花がお尻についた土草を払いながら聞いた。サイダー、という響きが焼きそばの塩気で満たされた口の中で弾ける心地よさを想像させた。
「ほしい!」
「俺も」
二人とも即答。
「分かった。じゃあちょっと待ってて」
気の利く穂花は一人でサイダーを買いに出かけた。
「任せちゃって大丈夫かな」
「大丈夫だ。あいつは昔からああだから」
「ふふ、そっか。世話焼きなのは昔からか」
夏の夕闇がそうさせているのか、私も神林も、この間までの気まずい空気感を忘れて以前のように普通に話せていることに驚く。
「あのさ、終業式の日はごめんね」
自分でもびっくりするくらい素直に言葉が紡がれていく。
「俺の方こそ、ごめん。春山さんのこと傷つけちゃったみたいだ」
「ううん、そんなことないよ。私が神経質になりすぎてただけだから」




