52
「そうでしょう、そうでしょう」
えへん、という声が聞こえるくらいドヤ顔で胸をそらす穂花がいつになく可愛らしい。神林と会話してる時の彼女は本当に楽しそうだ。私も同じ。彼と会話してると、いつの間にか余計なことまで口走ってしまう。それくらい調子に乗せられるのだ。
「逆に永遠は変わったよね。あたしと話してる時以外は根暗だったのに」
穂花がそう言ったとき、私は隣で神林の肩がぴくりと動くのを横目で見た。気のせいかもしれないと一瞬思ったが、すぐさま反論しないのを見るとどうやら見間違いではなさそうだ。
「……まあ、そうだな。そう言われても仕方ないか」
「反論しないんだ」
「まあね。思い当たる節はあるし」
先ほどまでテンポ良くやりとりしていた二人なのに、急に会話が滞る。なんだか今日はみんなおかしい。自分から二人の過去を質問しといて、やきもきした気持ちにさせられている私も、いい加減おかしいのかもしれない。
「そんなに言うほど根暗だったの? 私にはあんまり分かんないな」
確かに神林と話したことがなかった頃は、口数が少ない人だとは思っていた。だからと言って、たとえば常に下を向いているとか、学校で誰とも口を利かないということはなかった。体育の時間に「二人組をつくれ」と言わればさっと誰かとペアになるタイプだったし、授業前にはクラスメイトから宿題を見せてと声をかけられている様子も見てきた。だから単に人間関係がクリアな人なのだとばかり思っていた。
「日和は知らないだけだよ〜。永遠、小学校の時はほんっとうに誰とも遊ばなかったもんね。同級生からは根暗ってからかわれるし、放課後だっておじさんに連れられて一緒に船に乗ってばかりだったし。たまにあたしとも遊んでくれたけど、中学に上がってからはそれもめっきりなくなっちゃったよね」
「余計なこと言うなよ。穂花は昔から『永遠、永遠』ってうるさいんだよ。そのせいでうちの親にいろいろと誤解されてんだぞ」




