46
一緒にテスト勉強しない? と穂花にLINEで誘われたのは翌日の午前十時ごろのこと。私は即刻「いいよ」と返事を打って、部屋着からTシャツにジーパンに着替えた。三日前に学校をサボってから、母とろくに口をきいていない。今日は土曜日で母は仕事が休みだが、できるだけ顔を合わせたくなかった。
トートバッグに勉強道具を一式詰め込んで、一階へ降りた。
「どこに行くの?」
ソファに寝ていた母が今まさに出かけようとしていた私に声をかける。休日の母はいつも家で寝ているか本を読んでいるかのどちらかだ。
「友達と勉強」
「友達と? そんなんではかどるの」
「いいじゃん。好きにやらせてよ」
吐き捨てるように言って、私は玄関の扉を開けた。曇り空が真っ先に目に飛び込んできて、念のため傘を持っていくことにした。
梅雨の時期、偏頭痛が煩わしいのか母はいつにもまして私への当たりが強くなる。体調の変化でいちいち私に突っかかってこないでほしい。もう高校生なんだし、友達と一緒だろうが勉強くらい真面目にやれる。
自宅から足を踏み出すと、羽が生えたみたいに自由になった気がする反面、母と分かり合えない憂鬱さに羽が萎えていくようにも感じられた。子供じゃない、と自分では思っているけれど、結局両親の庇護なしには生きていけないから大人でもない。いまの自分の立場がもどかしかった。




