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15分ほど走ると、東西を流れる川に突き当たった。子供のころ、夏休みに友達とこの川で遊んだことがある。浅い川で、上流だからか水はかなり澄んでいる。川に足をつけバシャバシャと水を掛け合ったり虫取りをしたりした記憶が頭の隅に弾けては泡のように消えた。
「はあ……はあ……」
立ち止まり、肩で息をしながら周りに人がいないことを確認する。ここまで来れば、遠藤家からはかなり離れているため猫が自分で家に帰るのはなかなか難しいだろう。
「みゃー」
知らない土地に連れてこられた飼い猫は、寂しそうに声を上げた。河原に降りて、腕の中から彼を降ろすとブルッと猫は体を震わせた。
しばらくの間、しょんぼりとしっぽを下げてあたりをキョロキョロ見回していたが、知らない場所に連れてこられて帰ることができないと判断したのか、草むらの中をとぼとぼ歩き出した。
草の間に消えていく猫の後ろ姿を見守りながら、私はその場にへたり込む。猫を抱き上げてからここに連れてくるまでの間、全身が強張っていた。気づかれないように、不審に思われないように、と気を張っていたので精神的に疲れがピークに達していたようだ。
彼はこのまま、河原を彷徨いながら飼い主を探すのだろうか。
せめて食べ物には困りませんようにと見上げた空に浮かぶ星たちに祈った。




