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「俺は、春山さんが傷つくところを見たくないんだよ」
ドクン、と心臓が跳ねた。彼と会話を重ねるたびに、彼が私を見る目がだんだんと力強いものに変わっていく。例えば穂花と話をするとき、彼は同じようなまなざしを穂花に向けるのだろうか。
彫りの深い目元を、思わず見つめてしまう。一部の女子たちが、彼のことをかっこいいという理由がなんとなく分かる。外国人風の顔立ちが好きだという人間は多い。けれど、彼の本当の良さは、彼と会話をして初めて知ることができた。
神林とは深い話をすることができる。時には知られたくないこと、言いたくないこともあるけれど、彼だったら笑わずに聞いてくれると信じられるのだ。
知らなかった。神林にこんな懐の深い一面があっただなんて。
「……ありがとう。もう少し考えてみる」
彼の親切を、私は台無しにしてしまいたくない。
できることなら彼の言う通りにしたい。
でも、まだ決心がつかなかった。このまま柚乃を始めからいなかったことにして、平穏に過ごすことを選んでもいいのか。
「分かった。決めるのは春山さんだから、もう何も言わないよ。でも納得のいく答えを出して欲しい。頼むから」
切実な彼の声が、私の胸にすとんと落ちてきた。そうだ、どちらが正しいのか、じゃない。納得のいく答えを出せばいい。バラバラになっていた脳内の声たちが、腹の底へと収まっていく。
「もうお昼休み終わるね。戻ろっか」
「そうだな」
青い空をバックに、神林は立ち上がった。はい、と手を差し出されて私は彼の手を掴む。自然と恥ずかしさはなくなっていた。




