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神林はしばらくあごに手を当てて、アプリについて思案しているようだった。
漫画やアニメの世界でしか起こり得ないことが、いま現実に起こっている。
これがどういうことか、いくら賢い神林でも論理的に説明することはできないだろう。
「こんなこと言われても、意味分かんないよね。ごめんね、混乱させて」
「何が起きたのかは正直俺にも分からない。大事なのは、これからどうするか、だよな」
神林は冷静に、「春山さんは本当はどうしたいの」と聞いた。それは、彼が私の話を信じてくれているということを教えてくれていた。
「……柚乃を元に戻そうと思ってた」
「元に戻す方法はあるの?」
「あるよ。いま画面に書かれてる通りのことをすればたぶん戻るんだと思う。確証はないけど」
「この『代償:彼女が飼っていた猫を奪うこと』ってとこ?」
「そう。これってたぶん、柚乃が大切にしてたペットを奪えば柚乃が帰ってくるんだと思う」
「つまり、消したものを元に戻すにはそれなりの代償が必要ってことだな。確かに筋は通ってる」
分かっていることを二人で整理したところで、私はもう一度スマホの画面を見つめた。『代償』の二文字が、胸に重くのしかかる。
「でも、本当にいいの? 遠藤柚乃は春山さんをいじめた人なんだろう。春山さんは、彼女に苦しめられてたんじゃないのか。彼女が帰ってくるってことは、また同じことが始まるってことだと思うんだけど」




