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私はポケットからスマホを取り出し、『SHOSHITSU』アプリを起動した。気のせいかもしれないが、一瞬彼が眉を潜めた。心当たりでもあるのだろうかと思ったが、「なんだこれ」と呟く様子を見るとそうではないらしい。
真っ黒な画面の真ん中に、昨日穂花と見た『消したもの:星川学園2年2組遠藤柚乃』『代償:彼女が飼っていた猫を奪うこと』の文が浮かび上がる。
「これは、どういう意味だろう」
「もともとは、『あなたが消したいものを、入力してください』って書いてあったの」
「消したいもの、か。それで春山さんは、“遠藤柚乃”の名前を入力したわけ
だ」
「……そう。最初はそんなの嘘だろうって思ってたんだ。まさか、入力したも
のがそのまま消えるなんて思ってなかったから」
「そりゃそうだよね。本当とは思えないな」
神林が自分と同じ意見を持っていることにほっとしつつ、私は続きを話した。
「柚乃からの攻撃で、思ったよりも心が擦り減ってたみたい。だから、ちょっとした気晴らしのつもりだったの。それが、次の日に本当に柚乃が消えてるって知ってパニックになって……」
「それであの時に至るわけだ」
「うん」
神林が柚乃のことを認識していないと知り、雨の中学校をサボって家に帰った日のことだ。
上手く話せたかは分からないけれど、実際に起こったことを伝えることはできたと思う。




