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受け入れられない、というのが正直な気持ちだろう。まして穂花にとっては、いくら「遠藤柚乃が消えた」なんて言われても、その人は元からいなかった人で、いまいちピンと来ていないに違いない。もし逆の立場だったら私だって今の穂花と同じ反応をするだろう。
「信じられないよ。でも、日和が嘘なんかつくわけないし、あたしは信じる……」
「ありがとう。そう言ってくれるだけでも救われるよ」
完全に受け入れられたわけではないだろうけれど、私のことを理解しようとしてくれた穂花に感謝した。
私は立ち上がって部屋のカーテンを開け、「お茶入れてくるね」と部屋を出た。熱はもうすっかり引いていた。朝に比べると身体がかなり軽い。
お茶を持って部屋に入ると、窓の外で雨が上がり晴れ間が見えている。梅雨の間に時折覗かせる晴れの空は、普段の晴れの日よりも温かく見える。
穂花とお茶を飲みながら、私が遠藤柚乃の名前を入力した経緯と、これからどうしたらいいかを話し合った。
「今ではすごく後悔してる。確かにいなくなって欲しい人ではあったけれど、
まさかほんとに消えちゃうなんて思ってもみなかったから」
「そりゃそうだよね。名前を入れて少しでも心が軽くなるなら、って気持ちあたしにも分かるし」
「ありがとう。でもここからどうしたらいいか分かんないんだ。元に戻す方法でもあるのかなって……」
「難しいね……。アプリは今どうなってるの?」
穂花に言われるがまま、私は『SHOSHITSU』を起動した。そういえば昨日からこのアプリを開いてさえいなかった。
真っ黒な背景の画面が映し出され、画面の中央に浮かび上がる白文字。この間までは『あなたが消したいものを、入力してください』という一文が表示されていたのに、今回は違った。




