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「なんの話よっ」
穂花は神林のことを話しだすと普段より楽しそうだ。よっぽど彼と仲が良いんだろう。神林も心を許した相手にはよく喋るみたいだし、私にとっては穂花の方が彼とお似合いに見える。穂花は神林のこと、どう思っているんだろう。今まで聞いたことがなかった。なんとなく、二人の関係には立ち入ってはいけないような気がしている。
「そんなことより日和、大丈夫なの? 昨日いきなり帰ったって聞いてびっくりしたよ。それに今日は熱で休んでるし。なんかあった?」
先ほどまで頬を緩ませていた穂花が、真面目な表情で身を乗り出して聞いた。
「何もなかったらこんなことにならないよね」
「まあ、そうだよねー。真面目な日和が5時間目をブッチしてそのまま早退なんて」
「先生たち、怒ってるだろうなぁ。次学校行くの気まずいよ」
「えー大丈夫じゃない? 先生たちだって、きっと何かあったんだって察してくれるでしょ。不良でもないんだしさ。それよりマジで何があったの」
穂花とは友達になってからなんでも話してきた。お互いの恋バナや家庭のこと。勉強の悩みに人間関係。だからこそいま、穂花が抱いているであろう不安がよく分かる。私が、学校をサボることになった理由を想像できないのだろう。
私は穂花に昨日、一昨日の出来事を話そうか迷った。話したところで信じてくれるか分からない。それに、余計な心配をかけてしまうかもしれない。
私は目の前に座る穂花の目を見た。そこで初めて、彼女の瞳が私を真剣に見つめていることが分かった。穂花はいつからこんなふうに私にまっすぐな視線を向けてくれていたんだろう。先ほどまで悩んでいた自分が恥ずかしいくらいだ。ようやく私は彼女に一連の出来事を話す決心がついた。




