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私は、そのまま校舎を駆けていく。外からザーッと雨が地面を打ち付ける音が聞こえた。今年の梅雨入りは例年より早いのだとこの間のニュースで見た。梅雨って早く始まったところで必ずしも早く終わるわけじゃない。だったら、早く始まるだけ損じゃん。走りながら、どうでもいいことを思う。
途中すれ違う生徒にぶつかりそうになりながら、下駄箱まで一直線に走った。5時間目の始業のチャイムが頭上から降り注ぐ。下靴に履き替えもせずに、校舎から飛び出した。今度は冷たい雨が身体に打ち付ける。ポケットにICカードが入っているのを確認して、やってきたバスに飛び乗った。乗客の何人かが、上履きのままでびしょ濡れの私を見て何事かと驚いているのが分かった。私は誰とも目を合わせないようにして、一番後ろの席に座った。
何も見たくないし、知りたくない。
自分に蓋をして溶けて消えてしまいたかった。
きっと今頃、教室に戻らない私を先生が不審に思っているに違いない。もしかしたら誰かに探しに行かせているかも。それとも、神林が先に先生に事情をすべて話しているだろうか。
雨の水滴が張り付いたバスの車窓から、歪む世界を見つめながら、私は思考をぴたりと閉じた。




