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窓際の一番後ろの席に座った私は、ゴソゴソとカバンから英語の教科書を取り出した。ふう、と一息ついて顔を上げ、黒板を見る。中川先生がチョークで文字を書くたびにはらはらと粉が落ちていた。
しばらくはじっと授業を受けていたのだが、授業が終わる5分前に、私はある違和感に気づいた。
なんだろう。
何かが足りない。
正体が分からないのに、不安の水たまりが胸の中でどんどん滲んでいく。
ノートと黒板に視線を行ったり来たりさせていたけれど、突如襲われた不安に、思わず顔を上げて教室を見渡した。一番後ろの席だから、一眼で教室全体を眺めることができる。
「うそ……」
不安の正体にようやく気がついた私は、誰にも聞こえないぐらいの音量だが声を上げてしまった。
遠藤柚乃が、いない。
私とは真逆の廊下側の四番目の席にいるはずの彼女がいない。「いない」だけならば欠席ということも考えられたが、明らかにそうではない。だって、彼女の机と椅子ごと、教室に存在していないから。
よく見れば廊下側の列だけが五列になっている。三十六人クラス、縦横六列の私たちのクラスで、一列だけ机が五台しかないなんてありえない。それこそ、この間私の机が隠されていたときのようだ。
しかしその時とは決定的に違うことがある。遠藤柚乃自身がいないということ。もしかして、いろんな人の恨みを買いすぎて彼女の机が隠され、彼女自身は学校に来ていないだけ? でも、「机を隠す」という嫌がらせ自体、前回の件で相当注意されているし、そんなことをするのは柚乃以外に考えられない。
だとすればどうして……。




