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恋の消失パラドックス  作者: 葉方萌生
プロローグ
2/127

1

学校に通うのには市営バスを利用していた。私立星川学園は、俗世間から隔離されることを第一に考えたのか、街のはずれに位置していた。しかも、長い坂道を登らなければ校門にたどり着くことができない。坂道は、桜並木になっている。桜の季節は、花吹雪の舞う通称「星川学園坂」に写真を撮りに来る人が多くいるほど、桜は美しい。


バスは、星川学園坂の真下にある「星川学園前」というバス停に止まる。

だから、私と同じように通学にバスを利用している生徒は多く、同じバスに乗っているとはつゆ知らず、バス停でクラスメイトと鉢合わせることもしばしばだ。特に朝は乗客が多いため、バスから降りて初めて、知り合いの存在に気がつくということが日常茶飯事だった。


高校二年生の5月、ゴールデンウィークが明け、みんな意気消沈しながら登校する日が訪れた。

しかし私はそこまで憂鬱じゃない。「学校に行きたくない」と思ったことがないのだ。そう聞くといかにも、「青春を謳歌する明るく活発な女の子」をイメージするかもしれない。はたまた、「とてつもなく成績が良くて、勉強が大好き」な優等生を思い浮かべるかも。

だが実際の私はそのどちらでもなく、どちらかと言えば「地味で陰キャな女子高生」だった。

メイクやおしゃれに腐心する同級生たちを尻目に、休日でも制服でいいや、と適当に服を選ぶ。「華の女子高生」の無駄遣い。でも大丈夫、あと二年もすれば「華の女子大生」だもん。ま、大学生になったところで、結局この陰気な性格は変わらないんだろうなあとしみじみと思う。いとあはれなり。


とにかくまあ、そんなにいやでもない高校生活、かといって華にはならない高校生活を送っていた。

今日だっておそらく、いつもと変わらない平坦な一日が始まるんだろうな。


バスが、「星川学園前」にたどり着く。学園の生徒たちがわらわらと降りる。

ほら、今日もいつもと同じ風景が広がっている。


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