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「日和、ネットで調べてみたけどこっちにも載ってないわ。何も出てこない」
さっとネット検索してくれていた穂花が、怪訝そうな顔でこちらを向いた。
いよいよ、本格的に怪しいんじゃないか。
「削除すればいいんじゃない? そもそも使い道が分かんないわけだし」
「そうだね」
穂花の提案通り、長押しをして「削除」を押そうとしたところで指が止まった。
「どうしたの?」
「『削除』ボタンがない」
「え?」
どれどれ、と私のスマホを覗き込む穂花。普通のアプリなら、長押しすれば削除ができるものだが、件のアプリは長押しをしても何も表示されない。
「つまり、なぜダウンロードされているのかも分からない上に、消すこともできないというわけか〜。名前は『SHOSHITSU』なのに変なの」
この不可解な状況を少しでも明るくしようと笑いながらそう言う穂花の気遣いに敬服したい。
「よく分かんないけど、何かのエラーじゃない? 放って置いたら大丈夫で
しょ」
穂花の言う通り、スマホ側のバグかもしれない。
放っておくのが得策。でも。
口には出せないが、私は自分の中に渦巻く一つの感情に気づいていた。
『あなたが消したいものを、入力してください』
消したいものが本当に消えるのなら。
遠藤柚乃たちが私を見て嘲笑する姿が脳裏に浮かぶ。
痛い、恥ずかしい、苦しい。負の感情を、押しつけられる毎日からおさらばしたい。くだらない攻撃に、自分がこれほど壊れやすいなんて知らなかった。できるなら、もう一度高校二年生をやり直したいと思う。彼女たちのいないクラスで、できれば穂花と同じ教室で何不自由なく青春時代の一ページを埋めていきたい。
もう二度とクラスで肩身の狭い思いをしなくて済むのなら。
お弁当箱を片付ける穂花に気づかれないように、ゴクリと生唾を飲み込む。
私は、突如現れたアプリの効果が気になって仕方がなかった。




