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「さっきの言葉、私もそう思う」
「スリーポイントだってとこ?」
「ふふ、違うよ。『必要のないものなら、捨てちゃえばいい』ってところ」
「ああ、そっちか。俺のモットーだからな」
「そうなの?」
「ああ。煩わしい人間関係、無駄なおしゃべりの時間、無意味な五教科の勉強」
「いや、最後のはいるでしょ」
「そう?」
「そうだって」
「くそー」
神林は優しいだけじゃなくて、冗談を言える人でもあったんだ。
彼がおかしそうに笑う。久しぶりに、男の子とこんなに話した気がする。
「じゃあ、俺部活あるから」
「そうだったね。今日はありがとう。また明日」
「ああ、また明日な」
教室から去っていく彼の背中を見つめる。小学生の頃は、男の子って自分より身長が小さいことがほとんどだったのに。いつの間に、神林みたいに大きくなったんだろう。
私も帰ろうとカバンを持ったところで、ふと先ほどの彼の言葉が気になった。
煩わしい人間関係。
思うに彼は、本当に心を許せる存在としか、関わろうとしないのだろう。
だったら私は、彼に関わっても良かったのだろうか?
彼は、私のことを「煩わしい」と思っていないのだろうか。
翌日、またその翌日、と日々が過ぎてゆき、1学期の中間テストが終わっても、梅雨になり、期末テストが近づいてきても、遠藤柚乃から私に対する嫌がらせは終わらなかった。それどころか、日増しにひどくなっていく。
しかし、どうしてかクラスでは柚乃を非難するどころか、「もっとやれ」と彼女を後押しする人が増えた。
なぜなら、彼女には「人を味方につける」類稀なる才能と、完璧な容姿と賢さを持ち合わせていたから。
特に、男子生徒からの支持は絶大だった。高校生にもなって、クラスのカースト上位に逆らえないなんてみっともないと呆れるところだが、当の私は柚乃からのいじめに震えるばかりでどうしようもないヘタレだ。




