表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋の消失パラドックス  作者: 葉方萌生
第一話 捨てちゃえばいい
12/127

11

「てか、なんで春山さんが謝るの? なんも悪いことしてないじゃん」


春山さん。

彼は私のことをそう呼ぶのか。

思えば、彼に名前を呼ばれたのは初めてだ。ううん、彼だけじゃない。学校にはたくさんの生徒がいるはずなのに、まともに名前を呼んでくれたのは数えるほどの人間しかいない。


「そうだけど……。でも、私のせいだよ。ごめん」


「……」


彼は、想定外の人物からの謝罪に心底戸惑っているようだった。余計なことをしたかもしれないと、気まずくなった私は伏せた目で自分の足元を見つめた。汚れた上履きを、いますぐ綺麗にしたいという衝動に駆られる。だってこんなんじゃ、あまりに格好悪い。格好悪い私が、格好悪く男の子に謝っている。そんなの、耐えられないじゃないか。


「おっけー。この話はもうこれで終わり。あいつら、マジで意味わかんねーいじめしてるんだな。なんで春山さんみたいな良い奴にあんなことしたんだか」


それ、貸して。

彼は私の掌から、画鋲たちをかっさらって、カバンの中から取り出したプリントにそれらを包んだ。


「必要のないものなら、捨てちゃえばいいんだ。こんなふうに」


ほい、と彼が投げた画鋲入り紙屑は、見事に教室の後ろにあったゴミ箱にダストシュート。


「すごい!」


思わず歓声を上げてしまう私。


「まあ、これでもバスケ部だからさ」


「そっか。シュートだね」


「いま距離なら、確実にスリーポイントだな」


「神林って、スリーポイントシューターなの?」


「そうとも言う」


大人しいだけの男の子だと思っていた。

教室の中ではほとんど喋らない。声を聞いたことさえあまりなかった。

でも、今日の神林は違った。

彼が優しい心根をしているということが、口調や話の内容からよく伝わってくる。春の暖かな日差しのように、格好悪い私のことを優しく包んでくれる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ