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「いや、肩凝ってさ」
ぐーっと両腕を耳の後ろで伸ばす。新鮮な空気が肺に流れ込んでくる。教室でどんなに嫌なことがあっても、中庭で穂花と話していると、心がすっと軽くなる。
穂花もお弁当を食べ終わったようで、二人でもう一度伸びをした。
この感じ、失くしたくないなあ。
なぜだか分からないけれど、ふとそう思った。
穂花には謝らなくていいと言われたが、やっぱりなんとなく気が済まなくて、放課後に神林に声をかけた。
「神林、ちょっといい?」
彼は、これから部活に行く予定だったのか、エナメルのカバンの紐を肩にかけたところだった。
普段全然話をしない私から突然声をかけられたことによっぽど驚いたのか、神林はビクッと肩を揺らした。紐が、ちょっとだけずれる。彼は右手でそれを整えた。
「どうしたの」
まだ教室にはちらほらと生徒がいたが、私は構わず彼に話しかけた。幸い柚乃とその取り巻きたちはすでに教室からいなくなっている。
「さっきのこと、謝ろうと思って」
「さっきのって?」
「犯人にされてたでしょ。これの」
私は掌にそっと握っていた画鋲たちを彼に見せる。ダイレクトに画鋲を見せられると思っていなかったのか、彼は少しだけたじろいだ。
「ああ、あのとき。大丈夫、気にしてないし」
「そう。それならいいんだけど」




