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恋の消失パラドックス  作者: 葉方萌生
第六話 恋の消失パラドックス
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文化祭の準備は滞りなく進んだ。

授業の中でも文化祭に費やす時間が増え、そのたびに気が引き締まった。無事に当日を迎えられるかという不安の中で、しかし神林の的確な指示により大きな揉め事もなく時間が過ぎていった。彼への恋情を失ったことで、彼が穂花と楽しげに話しているところを見ても嫌な気分にならなくなった。余計な感情に振り回されなくなったことで、文化祭後の期末テストの勉強にも身が入るし、そんな私を見て母も気持ちを落ち着かせている。

アプリを使ってから、気持ちの面でいいことしかない。最初はとんだアプリだと思っていたけれどまさか感謝する日が来るなんて。


「永遠、本当にありがとうね」


「どうしたんだ急に」


11月に入り、当日に向けて放課後に教室の準備をしていた。他のクラスも同じように文化祭の準備で盛り上がっている。2年2組は壁の装飾を作ったりメニューを考えたり本を並べたりとやることが満載だ。

私は彼と共に装飾を手伝っていた。前より素直に彼と話をすることができる。フラットな気持ちで彼と向き合える。ずいぶんとやりやすくなった。実行委員のパートナーとして、良い関係を築けていると思う。


「前にも言ったけど永遠のおかげで順調に進んでると思う。男子も女子も、永遠の言うことだから素直に聞いてくれてる気がする。正直、実行委員に推薦された時は不安で仕方なかったから助かってるの」


この数週間、私がどれほど彼に感謝したかを伝えたかった。2年生が始まった頃には知らなかった彼のカリスマ性にどれほど助けられたか。まさかここまで彼が積極的にクラスを動かしていくなんて想像すらしていなかった。


「はは。何言ってんだ。俺も前に言ったけど、最初からこんな男だったわけじゃないんだ」


「どういう意味?」


神林はしばらく考え込んでから、言葉を続けた。


「まあつまり、日和がいたから頑張れたというか……」


嘘をついているようには見えなかった。でも、彼をここまで突き動かす原因が

自分だとは信じられなくて思わず息を飲んだ。


「気を遣ってくれてるの」


わざと茶化すように言った。そうでもしなければ、全身を駆け巡る喜びを隠し

きれないような気がしたから。


「そんなわけないだろう。でもまあ、それだけじゃないかな。日和が仲間だったこともそうだけど、もう一つ……」


「もう一つって?」


「それは——」


「永遠、こっち来てくんない?」


彼が口を開きかけたところで、後ろから名前を呼ばれて振り返った。メニュー班の男子が相談があるんだと手招きしていた。


「どうした?」


神林がメニュー班の方へと駆けていく。彼は何を言おうとしたんだろう。気になったけれど、その後の作業が一時間以上続き、気がつけばへとへとになった身体で帰路についていた。


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