軸受の損傷と対策~すりきず、かじり、スミアリング~
「お次はすりきずだ。これは名前から分かりやすいな」
「すりきずってあの擦り傷ですか?」
「その擦り傷だな。すべり接触で起きた表面の比較的浅い傷、これだな」
「この擦り傷でした。確かに名前で分かりやすいですね」
「ただ擦っただけの傷だから、溶けたりしてないってのがポイントな」
「はい!」
溶けることを溶着と言い、その溶着があると別の損傷になるらしいよ。
「原因は潤滑剤の給油不足、初期の潤滑不良。そして取り付けや取り外しん時の取り扱い不良」
「それって、手で動かした時に擦っちゃった、ってことですか?」
「そういうことだな」
「なるほど」
「防止策は潤滑剤の塗布をしっかりと行う。もう一つは組み込み作業手順の標準化」
「アタシも気を付けます!」
「おう、まぁ大分先の話だけどな」
まだまだ基礎的な知識を勉強中だからね。
もっともっと勉強して早く実作業も任せてもらえるようにならないと。
「次はかじりな。接触圧力が高く、かなりの熱影響を受けて局部的に表面が溶着してるもので、つば面やころの端っこに出来やすい。すりきずが酷くなったら大体こうなるわけだな」
「なるほど」
「原因としてまずは潤滑剤の選定が合ってなかったり、単純に給油不足。二つ目が取り付け不良や潤滑剤のない状態での軸方向への移動。最後が過大なアキシャル荷重。この三つだな」
「はい」
「防止策はお馴染の潤滑剤の選定と潤滑法の見直し。後は軸受の取り付け位置の検討、改善の実施だ」
「すれちゃうのが良くないってことですよね」
「そうだな。油が足りないと大体何かしら悪いことが起こるってわけだ」
給油って大事なんだねー。
軸受みたいにたくさん回転する部品は給油が栄養補給みたいなものなんだねきっと。
「次がスミアリング。二つの金属が大きな荷重を受けてこすれ、潤滑油膜が破れて直接接触すると接触面に肌荒れを起こす。その摩擦熱でちーいさい溶着を起こしたもんがスミアリングってわけだな」
「直接接触による摩擦熱での溶着ですね」
「おう、そうだ。原因は潤滑剤不足や、油膜の強度不足。後は軸受内に水が入ったり、硬すぎるグリースを使った場合にも起きるぞ」
「なるほど。防止策は……!?」
「潤滑剤、潤滑法の検討や極圧剤の見直し、水の侵入防止、転動体のすべりを防ぐ、の三つだ」
「極圧剤って何ですか?」
「潤滑油に混ぜると耐熱性を付与したりして油膜を強化してくれるもんだな」
「なるほど、パワーアップアイテムですね!」
「おう、多分そんな感じだな」
そんな便利なものもあるんだなー。
今更だけど基本的な知識が全然ないから、実技の勉強よりも学科の方が良いんじゃ……でもシャチョーさんがそう言うんだし大丈夫だよね。
「次はなしに似た感じになるなし地。異物混入、潤滑不良が大半の原因だ。防止策は密封の強化、適性潤滑剤の選定、油のろか向上だ」
「なし……?」
「これだ。この辺でも採れる果物で中々美味い。これ食ってもいいぞ」
「わ、ありがとうございます!」
うーん、しゃりしゃりしてみずみずしくて甘くておいしー!