ころがり軸受の分類
アタシはラジアル・アキシャル・スラスト。ドワーフだ。
突然変な世界に来てしまったけど、拾ってくれた恩を返す為に勉強をしながら仕事のお手伝いをしている。
今日は初仕事の日。
シャチョーさんと一緒に近くの工場へとやってきた。
不思議な鉄の乗り物、クルマを運転しているのがナカタ・シャチョー。アタシの恩人だ。
シャチョーは近くにあるいくつかの工場と契約していて、機械が壊れたりメンテナンスを頼まれたりしたら出向いて対応するのが普段の仕事らしい。
たまに工作物を納品したり、持って帰って修理することもあるんだって。
ドワーフ魂がソワソワするような仕事で、恩返しの意味もあるけど純粋に楽しみになってきちゃった。
到着したアタシ達は着替えて工場内へ。
そこではコンベア(?)の上を色々な食べ物が流れている、魔法みたいな空間だった。不思議ー!
「どうも中田社長、お世話になっております」
「こちらこそ贔屓にしてもらって。んで、今日はベアリングだったかい」
「ええ、これなんですけども」
「ああ、こいつは駄目だねぇ」
「ええ、そうなんです」
この工場の従業員ニージマさんが示す先には一つのコンベア。
その内側にある回転する筒、ローラーからガリガリガリガリと変な音がしている。
他のローラーではしていないから、これは異常なんだろう。
「そいじゃまぁ任せときな」
「はい、ではお願いします」
ニージマは頭を下げた後去って行った。
「よし、今日はころがり軸受についての勉強だな」
「軸受?」
「出る前に軽く説明しといたけどよ、こいつがローラーだな」
「はい!」
「そういう回転するやつらを支えるのがこのころがり軸受っつうやつだ。大体ベアリングって呼んでんな」
「転がり軸受、ベアリング」
「このローラーの端っこがこの輪っかの中に通してあるわけだな。反対側にもおんなじもんがあるぞ」
「なるほど」
見ると確かにローラーの端が、金属製の輪っかにはめ込まれているように見える。
その輪っかも金属の板にはめ込んであって、両側がこうしてあるんだろう。
構造をじっくり見ている内にシャチョーさんは作業を進めていく。あっという間に問題のあったローラーとベアリングを外してしまった。
その内の異常がなかった方の軸受を手渡されたので、手にとってじっくりと見る。触る。
「この輪っかを見てみな。こいつは二つの輪っかの間に金属の玉が入ってんだろ?」
「はい」
試しに内側の輪っかを回してみると、スムーズに回転した。
なにこれすごい。
これがあれば回転する道具も作り放題だ。
「それが玉軸受ってやつだ。玉じゃなくて円筒が入ってりゃあ、ころ軸受けって名前になる」
「ころころ転がるからころ軸受なんですかね!?」
「ははは、そうかもしんねぇな」
軸受けは中身によって玉軸受と、ころ軸受に分かれる。なるほど。
「おもしれぇのは、それぞれラジアル軸受とスラスト軸受に分かれるってことだ」
「ラジアルと、スラスト……?」
「そう、お前さんの名前だな。玉軸受のラジアル軸受が、深みぞ玉軸受、アンギュラ玉軸受、自動調心玉軸受の三つ。玉軸受のスラスト軸受が、スラスト玉軸受と腹式平面座スラスト玉軸受の二つに大別されるってわけだ」
「こ、こんなすごいものと同じ名前なんて、感動です!」
「ははは、な、愉快だろう?」
「はい!」