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星降る夜に 2  作者: サイダー
1/1

天衣と名乗る女性

女性は目を覚ました御影と会話した。

どこか不思議な御影について、探りを入れる。

“御影”


少年はそう呟いた。


「御影か!いい名前をつけてもらったな。親に感謝しないとな!それでお前、なんであの夜あそこで倒れてたんだよ。親と連絡取らないとな...無理やり家に連れ込んじまったし...」


御影は新東京の路地裏で倒れていた。人しれない場所で冷たい雨に打たれて。


「親...?わからない。」


「わからない?言葉の意味か?」


「わからない。」


「んー...、お前 わからないってそう言う意味か...?」


思い当たる節があった。察しのいい女性だった。


「わからない、親がなんなのか、言葉の意味もわからない。」


少年はそう答える。


「...」


彼女は悲しそうな目で御影を見つめた。


「そうか、わかった。ならもう聞かない。他に知ってることは?」


立て続けに問う。


「御影...名前...それしかわからない。」


「ふむ、わかった。もう大丈夫だ。今飯持ってくるから、ちょっと待ってろ。」


彼女はさっと襖を閉め、歩いていった。


______暫くすると、雑炊のようなものを持ってきてくれた。


「食いな、全部お前のだ。」


「...」


蓮華を握る手がぎこちない、震えてしまう。


「お前、食べ方もわからないとかじゃないよな!?」


「...」


「わかった、食べさせてやる。あーんしな。」


開く口もどこか震えている。あんな事件があったあとだ、無理もないと思ったんだろう。


フー、フー...


ぱくっ トロッ...


少しこぼしてしまった。


「あーあー、しょうがないな。ゆっくりでいいよ。飯は逃げたりしないから。」


黙って咀嚼する。飲み込む。ここまではできるようだ。


全部食べ終わったあと、片付けざまにこう言った。


「行く当てがないならうちにいな。今日からここがお前の家だ。嫌じゃなければな。」


(黙って見つめ返す)


結局、悪意のない純粋な優しさに、従うことにした。


お茶を持ってまたきてくれた。


「ほい、お茶...って蓮華掴めないんじゃ飲めないか」


フー、フー...


またゆっくり、飲ませてくれた。


眩しい、ニヤリとした顔で彼女はこう言った。


「ようこそ、天衣家へ。これからは俺たちが家族だ。困ったこととかわからないこととか、遠慮なく聞けよ。御影。」


天衣...この人は天衣と言う苗字らしい。その笑顔に似た表情の意味はわからなかったが、嫌な感じはしなかった。


この出会いが御影の運命の選択肢を増やし、沢山の進む道を与えた。最悪な結果も、最良の結果も、妥協した結果も、これから紡いでいくのだ。


天衣と名乗ったその女性は、御影にここにいていいと言う。今はゆっくり体を休め、話したくなったら聞けばいい。

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