中学生に戻った俺は学園一の美少女の自殺する過去を変え未来に戻ったら彼女と結婚していました。
(デート編)中学校に戻った俺は学園一の美少女の自殺する過去を変えたら彼女が家で待っていました。
学校に戻った俺は学園一の美少女の自殺する過去を変え未来に戻ったら彼女と結婚していました。及び
〜椎名小鳥視点〜学校に戻った俺は学園一の美少女の自殺する過去を変え未来に戻ったら彼女と結婚していました。の後日談となっております。
前作を読んでいたたでるとよりこの作品を楽しめると思います。
特にオチとか山場とかはなく主人公とヒロインがいちゃつきながらデートする話です。
宜しければお読みください!!
俺と小鳥は生活雑貨を買い揃えるべくショッピングモール向かうため最寄り駅に来て居た。
が
「なんか、人が多いな……」
満員電車とか行かないが、それでも人の群れと言えるほどの数が合った。
ガヤガヤしていて正直、みているだけでげんなりしそうだ。
「あー昼過ぎだから、多いんじゃない? しかも春休みシーズンだし。小鳥達みたいに学生も多いのよ」
いつもここはこんな感じよと見慣れたように小鳥が言った。
あーなるほど。確かにみてみれば学生さんが多い気がするなぁ。
「ま、しょうがないわね。あの有象無象の中にとりあえずいきましょ」
「いや、言い方」
意を決して小鳥曰く人混みの中に入って行く。
とりあえず、はぐれないようにーてあれ? 小鳥?
さっきまで隣に居た小鳥の姿がない。
……はぐれるの早くないか?
ひとまずあたりを見渡すと
あ、居た。ひ、人混みに流されてる。
「っとすいません、すいません」
人をかき分け、小鳥に近づく。
あともう少しのところまで来ているが、俺に気がついていないのか小鳥はすごく不安そうな顔をしていた。
まるで迷子の子猫みたいに弱々しく感じる
安心させてやりたいが、手を振っても一向に気づかない。
……仕方ない、恥ずかしいけど。
「小鳥ー!!」
名前を叫けびながら彼女のもとに駆けつけた。
周りの視線が一気にこちらに向いた。
ぐ、わかっていたことだけどだいぶ恥ずかしいな。これ。
「!! い、一樹」
こちらに気がついた小鳥の曇っていた表情が嘘のように晴れ上がっていく。
そんな小鳥をみていたらさっきまで感じていた恥ずかしさなんて消えていた。
ガシッと小鳥の手を強く掴んだ。
「とりあえず端に行くぞ。手、離すなよ」
「う、うん」
なぜか頬が赤い小鳥の手を弾きながらひとまず、人混みをかき分けながらなんとか壁の近くに待避した。
「………………」
手を離し、壁に手をつき、うずくまっている小鳥さんに恐る恐る話しかける。
「あの、小鳥さん? 大丈夫ですか?」
「……こいつら半分くらいどっか行けばいいのに……」
物騒な顔をして物騒なことを言い出した。
うぐぐと恨めしそうな表情で心のこもった声だった。
まぁ、俺もあまりの多さに少し人酔いしてるから気持ちはわからなくもないけど
でもまぁ……
「何よ? 小鳥の顔をじっと見て」
「ああ、さっきまで不安そうにしてたけど今は大丈夫そうで安心したなぁって」
くすくすと笑ながらちょっとからかうような感じで言った。
いつも尻に敷かれている感じがするからな。
こんな時くらい優位に立ちたいと思い少し攻めてみた。
「……そうね。誰かさんが必死な顔で小鳥ーって呼びながら来てくれたから、不安なんてどっか行っちゃった」
「うっ!!」
強烈なカウンターをもらってしまった。
「えへへ。ことり、一樹くんのそういうところ大好きですっ!!」
さらにもう一発と言わんばかりに小鳥はいつものように素ではなく、猫を被りの天使のような笑顔と甘ったるい声であざとく言った。
それは小鳥ではなくことりちゃんって感じがした。
「やめてください! 許してください!」
「ふん、ことりをからかうなんて100年早いのよ」
すと素に戻った小鳥はからかい返しがスッキリしたのか楽しそうだった。
「でもあんた凄いわね。あんな人混みだったのにすぐに小鳥を見つけるなんて」
感心したように小鳥は言った。
確かに、言われてみればすぐ見つけられたなと自分でも感心する。
でもまぁ、小鳥は可愛いからな。人混みの中でもやっぱり目立ってしまうんだと思う。
そして何より
「半年間だけとはいえずっと、小鳥を見てきたからな。すぐ見つけられるさ」
ははと笑いながら言った。
……なんか言ったあとから恥ずかしくなってきた。
「っ!!……あ、あっそ。……けどまぁ……いいんじゃない? 小鳥、一樹のそういうところがすー」
小鳥ははっとした表情で目を逸らし
「ま、あんたらしいくていいんじゃない?」
「? うん。ありがとう」
いいんじゃないって2回言ってるんだけど。
まぁいいか。
「よし。ひとまず行くしかないな。先に進むか」
あの中には入りたくないが、駄々をこねても仕方がないので再び意を決し、電車の方へ向かおうとした瞬間
「ちょっと」
少し、小鳥に声をかけられた。
その声は少し不服そうだった。
何かまずいことをしたのだろうか? と少し焦る自分がいる。
ふり振り返ると予想とは外れ、恥ずかしそうに目を逸らしながら手を差し出す小鳥が居た。
「……えと? 何この手」
「だから……その、またはぐれたら駄目だし……さっきみたいに手繋いでよ」
「……え、あ、はい」
今度はさっきより少し強く、小鳥の手を握った。
けっして離れないように。
なんとか電車に乗ることができ、無事にショッピングモールに着いた。
一度も来たことがない上にとても広い。どこにどんなお店がある分からない状態だ。
「さて、こういうのはテキパキとテンポ良く行くわよ」
「いえっさー」
小鳥が先導してくれるおかげで迷わず、一直線に雑貨店へと入って行った。
前に進む小鳥についていく俺はまるでカルガモのようだった。
しかし、入った雑貨店はなかなかにおしゃれでこう女の子が好きそうな所だ。
流れるような動きをする小鳥についていきながら買い物かごを手に取り、まずはシャンプーなどがあるコーナーへと向かった。
ひとまず、並んでいる商品を一通り見る。
わー容器がとてもおしゃれな形をしてるな〜という感想しか浮かなかった。
うーんよく分からないな……どういうやつを買えばいいんだろう。
というかここにあるやつ全部高そうだ。
商品名が全部英語なんだが……
「あ、あった」
むむと考え込んでいると横から小鳥が慣れた手付きでシャンプーとリンスを買い物かごに入れていく。
小鳥が選んだシャンプーはお洒落な入れ物で美容に気を遣っている女性が使いそうなものだった。
「これが小鳥的にはおすすめなのか?」
小鳥は美容に色々と気を使っているところがあるから彼女が選んだ物に間違いはないと思うが、あまりにも迷いなく手に取ったのでつい聞いてみてしまった。
「まぁそうね。このシャンプーことりが家で使ってるやつなの。髪だけじゃなく、頭皮や肌に優しいし、匂いもおすすめなのよ。このボディーソープとかオイルタイプだから肌を保湿してくれるし、いい香りが長く続くわ」
小鳥は説明してくれながら手に持っているボディーソープを買い物籠に入れた。
なるほど、未来ではシャンプーなんてどれも一緒だろと思い安いやつばっかり買っていたが、それじゃ駄目な様だ。
そんな深く考えたことなかった。俺が無頓着すぎるのだろうか。どちらにせよ勉強になる。
それにまるで自分も使うかのように真剣に選んでくれていることに対してもありがたいなと思った。
次にボディータオルを見ているとこれも色々と種類があるなと色々と手に取ってみる。
こういうのは手触りで決めた方がいいんだろうか?
チラリと隣にいる小鳥を見ると
「ん? こういうのは肌に合わない生地じゃなかったらなんでもいいんじゃない? それか好みの生地があればそれでいいと思うわよ」
こちらに気が付き小鳥が俺に聞いてきた。
「あーそういうのはない……かも?」
あ、でも実家にあるやつっていつも同じ素材のやつばっかりだったような……
いつも使ってたのは……どんな素材だったっけ?
「うーむ」
「なら、コットン素材のやつでいいじゃない? コットンって赤ちゃん用のボディタオルにも使われるほど柔らかくて肌に優しいからおすすめよ」
ことりの家もコットン素材だしねと悩んでいる俺にアドバイスをくれた。
またもや自分が使うかのように真剣に考えてくれている小鳥に頭が上がらなかった。
「へー小鳥がそういうならそうしようかな?」
ここはいただいた意見を採用させて貰おう。
青色のボディータオルを手を伸ばした瞬間
「待って」
と小鳥に手を止められてしまった。
「こっちにある2枚セットの方がお得だからこっちを買いましょ」
なるほど、確かにそっちの方がいいか。今のうちに予備の分も買っておくということだな。
さすが小鳥先生だ。
なら、青色のタオル2枚セットでいいかと手を伸ばした瞬間
「待って」
再び小鳥に手を止められてしまった。
「ちょっと、なんで同じ色のセットを取ろうとするのよ」
「え、色なんて同じでいいだろ?」
「両方とも同じ色じゃあ使う時にどっちが自分のボディータオルかわからなくなるでしょ?」
「あ、そっか。そうだよな。すまん」
「全く……青と黄色の2枚セットのやつにするわよ」
「了解」
小鳥は呆れた様子で2枚セットのボディータオルを取り、買い物かごに入れた。
俺が青のタオルで小鳥が黄色のタオルを使っていくということか。
「小鳥は黄色が好きなのか?」
「まぁそうね。あ、ちょっと買い物かご貸して」
「あ、はい」
「ん。歯ブラシとフェイスタオルも買いましょうか。小鳥はフェイスタオルを選ぶからあんたは歯ブラシ2本をお願い。ちゃんと色違いのやつにしなさいよ」
「あ、了解」
一旦別れ、歯ブラシコーナへと迎う。
あー歯ブラシもたくさんあるんだな。しまった。小鳥にどんな歯ブラシがいいのか聞いておけばよかった。
けど……まぁ小鳥ならこだわりがあったら指定してくるか。
それか自分で選ぶよな。ということは俺が適当に選んでしまっても大丈夫だな。
「俺のは青色で小鳥は黄色でいいか。好きって言ってたし」
適当に良さそうな歯ブラシを2本選び、小鳥を見つけ買い物かごへと入れた。
買い物かごには青と黄色のフェイスタオルが入っていた。
考えることは一緒なんだなと少し笑ってしまった。
買い物かごを見てふと思った。
……あれ? なんで小鳥の分のボディータオルと歯ブラシとフェイスタオルが俺のマンションに必要になるんだ?
「なぁ……小鳥思ったんだけど……あれ? 居ない?」
いつの間にか小鳥はいなくなっており、慌てて姿を探すとすでに会計をしている最中だった。
その後、洗剤とか色々なものを買ったが、全部小鳥が家で使っているものを買って行った。
そこを突っ込むと
「どうせ、あんたあんまり家事しないでしょ? 小鳥がやるのが目に見えてるからいつも使ってるやつにしてるの」
と言われてしまい、何も言えなかった。
そうこうしていると1時間が経ち一通りのものは買うことが出来た。
「ひとまず、これくらいかしら」
う、色々と買い込んだから結構な荷物になってしまった。
「さて、これからどうする? 帰る?」
小鳥の質問に少し考える。
「……どうせならもう少しここを見て回りたいけどな」
せっかくここまできたんだし、ここで帰るのは少し勿体無いかなぁと少し思ったのだ。
「……ん。それじゃ荷物をロッカーに入れちゃいましょ」
ひとまず、荷物をロッカーに預けて二人で色々と見て回った。
本屋
「ちょっとみて回ろかな」
「どうせ漫画コーナーとか行くんでしょ?小鳥このフロアにいるから」
う、読まれていたか。
「……了解です」
小鳥と一旦別れ、一直線に漫画コーナーへと向かった。
漫画コーナにつき、当時はこんな漫画もあったなぁと懐かしい思いに浸りながら一通り眺める。
そういえば、ラノベとかも買ってたなぁ。これとか結構終盤が面白かったり。
まぁ結末知ってるしこの時代で買うことはないんだろうけど。
いやぁでも完結して最後までおもしろかった漫画やラノベは買ってもいいかもしれないな。
改めてみると過去に戻ってきたんだなーとそんなことを思いつつ、漫画コーナを離れ小鳥の元へと向かう。
「……ん? これって」
引き返す最中、ある本が目に止まった。
それは結婚情報雑誌だった。
……そう言えば。未来で俺と小鳥はけ、結婚するんだよな。
いや、違うだろ。
小鳥が好きになって結婚するのは27歳のフリーターの俺じゃない。
前の俺なんだ。
どんな過程があったのかは知らないけれど高校生だった俺が小鳥と時には笑いあって、時には喧嘩してそうやって共に歩んで行ったんだ。
そうやって入江一樹は椎名小鳥に好意を持たれ、結婚までに至った。
勘違いするな。小鳥が好きになったのは俺じゃないんだ。
今、小鳥は困っている俺を善意で助けてくれているんだ。
……よし。
気を入れ直して、再び歩き出すと真剣に本を見ている小鳥の姿があった。
「何見てるんだ?」
「ん? 料理本。美味しそうなやつあったから」
へぇ、どんな料理だろと隣から覗いてみるとチキン南蛮のレシピだった。
う、うまそう。普通に食べてみたい……
ペラペラとページをめくっているのをみるとハンバーグなど俺好みな料理が結構あった。
あ、これもいいな。この料理も食べてみたい。おお、これもうまそう。
「……ちょっとこれ買ってくるわ」
小鳥はやれやれといった感じでパタンと本を閉じ、そのままレジに向かおうとした。
「え?」
「さっきからずっとこれ食べてみたいーって顔してる」
「……あはは」
俺は何も言えず、レジに向かう小鳥の後ろについていった。
料理本を買い、再び歩き回っていると小鳥が足を止めた。
「……あ、ちょっと寄っていい?」
小鳥が指さしたのは服屋だった。
結構有名なブランドであまりおしゃれに詳しくない俺でも知っている店だ。
「ん。どうぞ」
「ん。ありがと」
「小鳥、鞄」
「……え?」
手を差し出した俺に対して少し困惑した様子だ。
言葉が足らなかったかな?
「服を手に取るとき邪魔だろ? 持っておくから」
「あ、ありがと」
鞄を受け取り、少し離れたところで小鳥の様子を見守る。
「うーん」
小鳥は真剣に服を見てる。
気になったものは少し体に当てたりしてあーこんな感じかと言いながら鏡で確認したりと楽しそうだった。
女の子はこうなると結構長いらしい。しかも結局買わずに帰るとコンビニでバイトしてた陽キャ君が愚痴ってたっけ。
彼女なんか出来たことがない俺にとってはこうやって真剣に女の子が服を選んでいるのを待つのは苦にはならない。
むしろ真剣に選んでいるところを見て、その子の服の好みとかが分かるし結構楽しいんだけどなぁ。
「う〜ん。一樹はこの服はどう思う?」
小鳥は二つの服を手に取りながら悩んでいる様子でこっちに聞いてきた。
「……えっ」
ま、まさかのこっちに飛んできたか。
小鳥はすごくおしゃれだからな……かなり高レベルの意見を求められそうだ……
いいんじゃない? とかそういった曖昧な感想を言ってしまうと……終わりだ。
これは真剣に考えないと!
う〜んと二つの服を凝視しながら考える。
「……そ、そうだな。小鳥の雰囲気にあった服というか。小鳥らしさが出てるのは右で、左は小鳥のいつもの小鳥とは一味違った感じが出せると思います。えっと、つまり……両方とも似合ってます。はい」
……なんか自分で何言ってるのか分からなくなってきた。
何を言っているんだ俺は?
こんなんでアドバイスになるのか?
「……そっか。ふぅん……ふふ」
なぜか嬉しそうに笑う小鳥に
だ、大丈夫だったのだろうか?
「な、なんか嬉しそうだな?」
「そう? ま、そうかもね。ま、小鳥は可愛いから何を着ても似合うってことね♪」
「私もそう思います〜お二つともとっても彼女さんにお似合いですもの」
「「えっ」」
「彼氏さんもすごく真剣に悩んでくださってて!! 今時服選びにこんな真剣に付き合ってくれる人なんてそうそういませんからね〜彼女さんがとっても羨ましいです〜」
気がつくと綺麗な女店員さんがニコニコしながらこちらに話かけてきた。
い、いつの間に……全然気がつかなかった。
どうやら、俺たちをカップルか何かと勘違いしているらしい。
頭が真っ白になる。
えと、あ、そうだ。とりあえず否定しないと。
「あ。いやー俺たちは」
「そうなんですよ〜ことりもすっごく助かってて〜!」
!?
こっ!?
「ことりってこういう買い物になると長くなっちゃうんですけど、彼はちゃんと最後まで付き合ってくれますし。さっきみたいに一生懸命一緒に悩んでくれたりとか〜」
「ひゃ〜彼女さんとっても大切にされてるんですね〜!! いいなぁ。とっても羨ましいです〜」
「そ、そうですかぁ〜? なんだか恥ずかしいですっ。というわけでこの人の好みとかもう少し聞きたいなぁ〜なんて」
「あら、ふふ。これは失礼しました。また何かありましたらお声かけくださいねー」
それではと一礼し、女店員さんは去っていった。
それにしてもあの女店員さん、歳は未来の俺と同じくらいか? 嵐みたいな人だったなぁ……
先程の言葉をい思い出し、ついつい目でその姿を追ってしまう。
「なんで小鳥がいるのに他の女の子に見惚れてるんですか?」
店員さんの後ろ姿を見ているとぐいぐいと強く袖を引っ張られてしまった。
見るとジトとした目で頬膨らませている。
声は甘く、猫をかぶっていることりちゃんモードの方だったが機嫌はあまり良くはない。
「……あんた。ああいう大人な女の人が好みなの?」
今度は小鳥の素の声で聞いてきた。
「……え? いや、別にそういうわけでは」
ただ、あの店員さんの言葉が残って目で追ってしまっただけで好みというわけではない……が、ただ同い年くらいの女性だっただから、微塵もそういう目で見てませんよとは否定できなかった…
「ことりだって……成長すれば……あれくらい」
小鳥はむくれて悔しそうにボソっと呟いた。
「というか。あれだな。俺たちそう見られちゃうこともあるんだな」
強引に話題を変えてみた。
「ま、店員さんの話に乗るのが一番無難でしょ。恋人と服を選びにくるなんて別におかしいことじゃないし」
平然と話す小鳥にすごいなと思う。
俺はあの時頭が処理落ちしてたからな。
あんなスラスラと返せる余裕なんて微塵もなかった。
「な、なるほど。なんか、その……ごめんな? 嫌だっただろ?」
「何がよ?」
「いや、俺なんかと恋人と間違われたわけだから……その」
風船が萎んでいくように声がだんだん弱々しく、小さくなってしまう。
外見は高校生だけど中身は27歳の借金まみれのフリーター童貞だからな……
そんなやつと恋人なんて思われるなんて……罪悪感が湧き出てくる。
「一樹、ちょっとこっち向いて」
「おう!?」
小鳥の方向を向くと少し背伸びしながら俺の頬に手を伸ばしてぐにっと伸ばした。
「ほへ?」
わけがわからず困惑していると真剣な顔をした小鳥が俺を見つめ、口を開いた。
「なんかって何? 小鳥は一緒にいて恥ずかしいと思う人とこんなところに来ないし、あんなこと言わないから。あんたかっこいい所あるんだから、うじうじしないでもっと自信を持ってシャキっとしなさい。わかった?」
「は、はひ」
全くと言いながら小鳥は振り返り、店の外へ歩き出した。
びっくりした……なんかすごく褒められたような気がする。
あ、小鳥の耳赤くなってる。
恥ずかしかったのだろうか。
それでも、俺のために言ってくれたんだよな。
……ありがとう。
背筋をピシッとして小鳥を追いかけた。
その後、色々と見て回った。
なんだか、普通にショッピングでデートしているみたいで楽しかったが体力がもたなかった。
「……あんた顔色悪いけど、大丈夫?」
「ごめん……ちょっと疲れと若干の人酔いが……」
「う、ごめん。調子に乗って連れ回しちゃったかも」
「い、いや。楽しかったから。そんなことは……ちょっと帰る前に休憩していいか?」
「そ、そうね……休憩できる所を探しましょうか」
モール内の休憩所探すが、人が埋まっていて、一旦外に出ることになった。
外に出ると天空の広場という芝生で作られた広場のようなところがあった。
空は夕焼け色になっている。
人はいるが、休憩できるスペースはあるようだったのでひとまずそこで腰を下ろした。
「ふぅ〜悪いのう、小鳥さんや」
茶化しながらため息をつき、一息つく。
あ〜いっぱい歩いたからな。足がとてもジンジンする。
「まぁ、色々と回ったからね。疲れが溜まっちゃたのよ。私も疲れちゃった」
小鳥も疲れを見せながら隣に座った。
ふと周りを見るとここカップルだらけじゃないかっ。
これは移動した方がいいのだろうかと考えたが体が重くて動く気にならない。
……やばい。一息ついたらなんだか眠たくなってきたぞ。
ちょうど良い温かい温度と心地よい風、周りの人々の話声が子守歌のように感じる。
「何? 眠いの?」
小鳥が顔をのぞかせながら聞いてきた。
「いや……だ、大丈夫」
頑張って返事をする。
だめだ。寝るな。しっかりしろ。
「いや、大丈夫そうじゃないし……しょうがないわね。ほら。ここ、頭のっけなさい」
小鳥は座り直し、自分の膝をぽんぽんと叩いた。
これはまさか……膝枕ってやつか?
「そんな……悪いよ……外だし……周り人がいるし……」
「はいはい……うるさい」
「わっ」
小鳥に頭から倒され、強引に膝枕をしてもらう。
……なんか、柔らかくて不思議な感覚だ。いい匂いがする。それになんだか安心して……本当にこのまま眠ってしまいそうだ。
なぜか小鳥は俺を幸せそうな顔をして見つめている。
「なんで……」
混濁した意識の中不意に声にでた。
「……わからない。なんで小鳥ははこんなに俺に対して優しくしてくれるんだ?」
俺にはわからない。
「もし、中学生の時の事を気にしているのなら小鳥が生きているだけで俺は報われてるんだよ。それに俺が意識を失っている間、母さんを説得して毎日来てくれたんだろ? 俺にはそれだけで十分なんだ……」
今、俺は疲れや眠たさのせいで本音をぶちまけている。
「ここまでして俺を支えてくれる。母さんに聞いたけど答えてくれなかった……どうして俺なんかにここまでしてくれるんだ?」
そう、マンションで小鳥が料理を作って待っていてくれた頃から思っていたことだ。
確かにさ、とっても嬉しかったよ。今日もすごく楽しかった。
だけども俺にはそこまでしてくれる小鳥の気持ちが分からなかった。
「そうね。一樹のお母さんにも同じ事を言われたわ。お見舞いも出来ないのに毎日なんで来てくれるの? どうしてそこまでするのって」
小鳥は正面を向きながら言った。
その表情はしたからでは見えなかった。
「小鳥はその時、一樹のお母さんになんて言ったと思う?」
逆に質問されてしまった。
小鳥が顔をのぞかせ、俺を見ている。
消えかけている意識の中必死に頭を働かせ、答えを絞り出した。
「……私も支えてもらったから、今度は自分が支えたい……とか」
「残念、ハズレ。小鳥はね……」
「あんたのことが好きだからって言ったのよ」
……………………は?
眠気は一瞬で覚めてしまい。思わず体を起こして小鳥の顔を見た。
「……え? お前……? 何?」
わけがわからず、小鳥の顔を見る。
彼女の顔は夕焼けに負けないくらいに赤く染まっていた。
「確かに一樹を支えたいっていう気持ちもあるわ。一樹に少しでも何かお返しできたらとも思う。だけどそれは全部ただのおまけなのよ」
小鳥は両手を自身の胸に当てた。
「小鳥の真ん中にあるものは一樹のことが好きっていう気持ちだけ。だから、一緒にいたいし、支えたい。ただそれだけ」
違うだろ? え? なんで?
小鳥が好きなのは……好きになっていくのはこれからの俺のはずだろ?
今の……27歳の俺じゃないはずだろ……?
「……あーあ。こんなところでいうつもりじゃなかったのにな」
小鳥が何か言っているが頭に入ってこない……
「………………」
「……その顔、伝わってないわね。しょうがない。言っちゃったし。言葉で伝わらないのなら」
小鳥はポンと俺の体を押し倒し覆いかぶさった。
「キスするわよ」
「ーは? ング!?」
一瞬で小鳥に唇を奪われてしまった。
あまりにも唐突で、人もいるのにっ!と足をバタバタとさせ、数十秒が経ち、小鳥の唇が離れると
「これが小鳥の気持ちよ。ちゃんと伝わった?」
顔を真っ赤した小鳥がしてやったと言わんばかりの笑みで言った。
「あ、あの……」
「別に、今すぐ返事をくれとは言わないわ。小鳥はずっとあんたにきつく接してきてたし。だからこれからの小鳥を見て欲しいの」
小鳥は立ち上がりながら言った。
「あんたに好きになってもらえるように頑張るからさ。小鳥から目を離さないように」
小鳥は呆けている俺に手を差し伸べ、笑った。
その笑顔は俺の好きな椎名小鳥の笑顔だった。
その笑顔に思わず、手を伸ばし、手を握った。
「さて、帰るわよ」
手を繋ぎながら、小鳥に手を引かれるようにショッピングモールに向かって歩き始める。
色々とありすぎて何がなんだかわけがわからなくなったが、俺はこの日のことを永遠に忘れることはないだろうと心の底から強く思った。
繋がれた手は離れないように強く強く握られていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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