視えてる者が見せたもの
暗い。その部屋はとにかく暗い。
人、いや、視覚に頼る生き物がそこで動くことすらできないほど暗い。
あらゆる光を遮断した部屋。その中から音がする。
かちゃ、かちゃ・・・ス、
?「ふぅ、ありがとう、下がっていいよ。」
??「はい失礼しました。」
一筋の光が縦にまっすぐ伸びる。部屋の外から光が差す。
開いた扉からの光が部屋を照らす。何もない。部屋の壁、
壁とも思えないほど暗い。照らされた光との2色のコントラストが
はっきりしているほど何も映されていない。その闇から抜けてくるように
一人の女性(?)が明るい廊下に出て振り返って一礼。扉を閉める。
静寂・・・の中から時折聞こえる陶器を重ねたり離れる音。
?「このコーヒーという飲み物、美味しくないな。苦い。
・・・でもなんか苦いんだけど口の中に残る匂いがいいな」
??「お前が何かをほめるのは珍しいな」
先ほどの??とは違う声が聞こえた。
?「俺は正直なだけなんだよ。周りがそういうもの。なだけさ。
で、結局彼どうなったの?」
??「まんまと逃げられてる。現世にな」
?「・・・殺して転生させてこっちに連れてくる予定だったのに、
あの3バカ、本当にバカだったんだな・・・」
??「作戦を部隊長止めにしたのがまずかったな。茶番にして
やらせるより必死にさせるほうがやる気も出ただろうし」
?「いや、それが茶番だったと気づかれてたらしい。
あの人数送っといて人死にをださなかったからな~」
??「そうだったのか、まぁあの3体の次元転移と
あの力で異世界という形で別次元につながる。、
それが実証できただけでもよし。かな」
?「だな。俺としてもあっちもこっちもできるだけ犠牲者は出したくない。
でも・・・その人間はただの人間だったんだろ?」
??「ああ、地球という星の日本という国の、霊視感応から判断して
ごく普通の、少し以上ひどい未満のくたびれた中年だな。」
?「君その表現好きよな「なになに以上なになに未満」って」
??「わかりやすくないか?」
?「うん、映像からの表現としてはしっくり来てるよ。でも
そんな中年が、ジャイアントをまっぷたつか・・・」
??「縦に一刀両断してんだよな。あいつら刀なんて持ってたのか」
?「いや、刀じゃないな。しかも見えるほど濃い衝撃波は下から上に伸びてる
しかもあんな間合いで。ん?」
??「どした?」
?「これ水か。」
??「水?そういえばなんか持って出てきてたな」
?「でかいのが邪魔でよく見えないな。あーもう!
なんでこんな位置で撮影してたんだこいつ」
??「記録映像は確かに頼んだけど。ぬけがけの単独でやったせいで
固定撮影になっちまってるんだよな。音声の録音設定もできてないのが
また減点もんだし。自分を追尾させる設定組むくらいなら
音をどうにかしてほしかったもんだ」
?「そういやその出し抜かれたってやつは?」
??「ああ、なんでも予定通りだったとかでお咎めなし。普通にしてるよ」
?「ほーん・・・じゃ最初からあいつ行かせる予定だったのか」
??「あのジャイアント。巷じゃ出世欲はでかいが天邪鬼だったらしくて
少しライバル視してたっていうそいつを行かせる予定にしてわざと知らせて、」
?「で、わざと盗ませてやらせた。と。あのメンツ本当にこええな」
??「まぁそこまで見えてたそうだけどな。本当に怖いのはあいつの能力だわ」
?「確かにな、お!ここだなジャイアントが棍棒を振り上げた直後下から上に
水の刃?がジャイアントの背中から伸びてる。でかいな」
??「ああここで魔石砕けてるな。衝撃波に魔力が乗ってたのか、
・・・なんか怪しくなってきたな」
?「?」
??「地球人類には魔力なんかないだろ?」
?「あ、そうだっけ!じゃなんでこのおっさんこんな・・・
ああ、あの3バカか」
??「だけどあの3体はあの1セットでせいぜい次元転移するポータルのような
能力しかないって・・・」
?「・・・担がれてるっぽいな。確かにあんなおっさんだけで
ジャイアントを倒せるわけはねーわ。あの村なんかあるな・・・」
??「確かに、当然の結末を考えればあの人間をジャイアントが殺して
魂をこちらに転生させて使役魔獣にするって寸法だった。
それを変えたのはあの3体・・・」
?「リョーマのやつここまで見えてんのか・・・?」
??「何も言わず映像球貸してくれてるってことはそうなんだろうな。
使役魔獣の補充計画はやんなきゃならんのに・・・」
?「・・・」
??「ん?」
?「これどのへんだっけな?」
衣擦れの音がしだす。立ち上がった?
??「リョーマと部下の緑頭しか知らんはずだ。行くのか?」
?「なんか最後に見えた。妙に気になるから行ってきてぇ」
??「お得意の勘か?どれだ?ああ、なんか見えるな。ちっさくて見えにくいが。
でもあれから三日は立ってるぞ?もうないんじゃないか?」
?「回収したやつも映像球の止め方をしらんみたいでそのまま帰ってるだろ。
景色だけは見覚えがある。断罪の岩場だろう。あんなとこそうそう人なんか行かないだろ。
なんかまだありそうな気もするし。でも広いからどのへんかは知っときてぇ。
リョーマん家に連絡しといてくれ・・・あ、」
??「どした?」
?「やっぱいいわ、どうせ分かってんだろうしな」
そういうと闇から再び光の筋が柱となってそびえる。
その中から光へと黒い人影が闇を引きずり出てきた。
黒い人影がまるで液体のようにまとわりついた闇を流れ落としながら
一歩一歩進んでゆく。
闇が落ちていくほどに人影の姿が現れてゆく。成人男性、
より少し大柄な体格をした男性のような・・・。
一つ明らかに違うのは闇を落としきったその姿は
ガラスの彫刻のような質感を持った透明な肉体だという事。マッパだ。
部屋から垂れる闇の柱は少しずつ細くなる。男が床に落とした液体のような闇は
生きているかのようにその闇の柱へと流れるように吸い込まれてゆく。
その柱が筋へと変わろうとした時、その右側から綺麗な白い手が扉を支えるように見えた。
その少し上には赤く光るガラス玉のような瞳。
??「行ってらっしゃい、アデル。棺桶は作っておくよ・・・」
背を向けて消えてゆく男を見送りながら聞こえない声でつぶやく。
そしてその声とともに闇の一筋も消えていった。
あけましておめでとうございます。
ヘタしたら隔週になりそうですが
何卒よろしくお願いします。




