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お待たせしました、牛丼大盛、野菜サラダですごゆっくりどうぞ

「すいません、牛丼大盛と野菜サラダでドレッシングはゴマダレお願いします」


U字テーブルのカーブの部分、今何かとうるさい間隔開けとは関係なく


おっさんは一つあけてそこに座った。いろいろ入ってるバッグは足元に置き


歩いてきた店員に注文する。注文を受けた店員は手にした機械で注文を送信し


挨拶して踵を返した。おっさんはそれを見るでもなく取り出したスマホをいじりだす。


ふとおっさんは立ち上がりきょろきょろし出す。何かを見つけてその方向に、トイレだった。


おっさんがいない空席に店員がトレイをもってやってきた。


おっさんがその席にいたのを確認しているその店員は独り言をしゃべってトレイを置いた。


目線でおっさんがトイレに行ったのを確認しながら、おっさんも店員さんに


『置いておいて大丈夫です』的なアイコンタクトをして、それでOKなのである。


そして事故(?)はそこで起こる。


しばらくしておっさんがトイレから出てくる。


その店のトイレは、トイレ、ドア、手洗い、ドア、店内。


となっていてドアを開けるまで店内を見ることはできない。小さな用を足し手全体を


多少磨く程度に洗い。備え付けの紙タオルを3枚ほど取り手をふく。普通の作業だ。


戻れば自分のいたテーブルに牛丼と野菜サラダが待っている。


ドアを開けようとしたその時。あいた隙間から何か大きな虫が流れるように入ってきた。


「うわ虫!」おっさんは飛びのいた。大人になるとあまり虫が好きではなくなるものだが


おっさんは子供のころからあまり好きでなかったのだ。


大きな虫だがそのかけらが一つ引き返してきて開きかけているドアを押すようにしめた。


「あ!」おっさんは虫が入ってきた同じ空間から出たかったがドアノブ付近に虫が


引っ付いてきたので八方ふさがりに陥った。


「うーわなんだこの店、でけぇ虫入ってきてるぞ」 「おい!少し黙れ!!」


出れない気分を少し大きめに愚痴ったおっさんに聞こえるように


小声で怒鳴る声がおっさんに聞こえた。


おっさんの視界はドア。ドアノブの虫(?)はいなくなっている。


トイレには自分しかいなかった。外からの声じゃない。おっさんは悩む。


?2「どうする?出れなくなっちゃったよ!」


?1「ここが開いてくれたのが幸いだったな」


?3「同じ空間でもここだけ意識できてなかったみたいだ。ありがてぇ」


おっさんは狭いトイレ前の手洗いスペースであたりを見渡す。そこには虫しかいない。


虫・・・?おっさんは悩む。虫だったらどこか壁についているだろうけども、それらは


宙に浮いている。日本語しゃべってる。そもそも形がない。3つの薄ぼんやりした光の塊だ。


人魂?おっさんのイメージとは違う。でも現実の人魂はこうなのかもしれない。


おっさんはこの歳でまーだゲームとかする独身男性だ。ファンタジー物には慣れている。が、


それはそういうゲームだの、の話、現実にそういうものを見てしまえばどんな人間も、


「うわあああああ!」


と大きな声を出す。叫びとまではいかないのがおっさんらしい所。


?1,2,3「「「!!!」」」 形もないのに明らかにビクっとビクついた光達。


直後、ズン、ズン、2回ほど大小の振動がする。


?「なんか聞こえたな?この辺っぽかったが・・・」


大きなスピーカーから聞こえたような声がドアの向こうから聞こえた。


おっさんの記憶している限り店内にいる人間が出せる声じゃない。つまり人間じゃない。


現実に生きているオッサンも直感するその声の主(?)は音を響かせながら引いていく。


その間おっさんは黙れを実践。ドアの付近にあった気配がなんとなくなくなるのを待った。


おっさんは自分の身に起きた事をなんとなく整理する。


『今日は仕事もないし配達を少な目で切り上げて練習して昼ゲームして、言葉勉強して・・・


んでちょろっと筋トレして飯食ってゲームして・・・漫画読んでゲームして』


?1「うわ、こいつ本当に大人か?」    「!!」


心の中でその日を整理していたおっさん、まるでその整理中の自分のその日の行動を


自分でもダメと思ってるのをダメ出しされたような声が聞こえて驚いた。


?2「ゲーム多くない?本当に仕事してんのかね?」


?3「仕事ってイメージ内にあったなんか芸してるやつ?でもお客なんていなかったよね」


「あれは客寄せだから!これから集めるんだよ!」


聞こえてきた声に同じ声の大きさで反論するおっさん。


普段子供にもこういうことを聞かれるのだろう、返しながら落ち着いてきた。


がそういいながらもイメージは流れ、


?2「その割にはあんま面白くないね。なんか棒振ってるだけだし」


?1「自分でも凹んでる感じじゃない?」


?3「面白くないね」


「・・・」


自分でやっている分にはやっていれば忘れられる現実の部分を看破された気分になるおっさん。


?2「配達ってのが仕事じゃないの?なんか見てるときの数字増えてるし」


「!!」


そこでようやくおっさんはその光の塊にツッコんだ。


「な、なんだお前ら・・・」


?1,2,3「「「あ!こいつ!」」」


3つの光の塊が同時に気づいた。あの生垣の中で見つけた生贄のおっさんだ。


こいつらもたいがいこんな感じだ。


この3つ達は、おっさんが公園を離れていくところは尾行できていた。


ある建物の自動ドアをくぐったあたりでその部屋に立ち込めるいい匂いにつられて


厨房に向かった3つの塊は店内の明るさ、店員の忙しさ、お客の周りに気をとめない雰囲気、


それらから大して目立つことはなかった。が、


?「みつけた・・・ほんとにここに出た・・・」


?1.2.3「「「!!!」」」


塊にしか聞こえない声がして店内、というより建物全域の空気が変わった。


直後、塊たちは一気に光が強くなる。周りの空気がよどみ浅黒い景色に厨房、店内が変わっていく。


空間そのものが変わっていくように。


ヒュウウーン   ドズズンンン!


およそ現実だったらクレーターができていただろうほどの音が塊の前に落ちてきた。


現実にもいないだろう3メートルはあろう大男。建物内のあらゆる壁やら部品やらを透過、


というより周りの空気の色がすでに空間が変わったように、店内のように見えている者がただの


空気になっている。何かが壊れることも人が殺されることもないのが幸いかもしれない。


?「さすがリョーマ様だ。正確におろしてくれたぜ~」


?2「リョーマ?あ、あの王国の?」


?3「な、なんだよ!なんでこっちの世界に」


?「どーせこっちの世界もじきに俺らのもんになるんだ・・・今は次元が違うがよぉ。


お前らはそっちの次元に入れてる・・・羨ましいなおい。この景色の中の人間、


全員うまそうにゃ見えないが腹の足しには悪くねぇっぽいもんな。お前らを食えば俺もそっちに


乗り込めるんだよな~そうすりゃぁ・・・げっへへへ」


下品な笑いが3つの塊を恐怖させる。


その時一つの塊が大男の股下から、別の空間からの隙間を見つけた。


?1「あ!あれはなんだ?」


わざとらしく急に塊は大男の目線の遠くの先を見て叫んだ。そこは空間自体べつの空間なので


その空間に何かがあっても不思議ではなかった。


?「あ?」


大男はその目線の先を目を凝らしながら見る


?1「ほらあの先だよ!お前には見えないのか?」


?「ああ?」


大男はそう言われ、さらに見ようと目を凝らしながら歩きだす。


塊の一つが煽る煽る。煽りながら他の塊たちの手を取り合い一目散に広がっていく


別の空間の隙間に飛び込む。すかさず閉じる別空間の隙間。逃げられた顛末はこれ。


?「おい!何もねぇぞお!・・・あれ?」


一杯食わされたことに気づいて周りを見渡す大男。


周りを探しているうちに声がして近づいてきて何もなかったから引き返す。


いろいろ見渡すがやはりいない。が、大男はやることがあり、そのやること


のために絶対いるはずのあの塊たちを探す。


「絶対いるはず」この根拠が大男の現状の根源である。


色々さがしたが、やはりさっきの位置が気になる大男。すると


ガチャ。大男の見る先、ちょっと横から別空間の隙間が開いた。


?「お?なんだ?あそこ次元転移できてなかったのか?」


トイレのドアを開け出てきたのはおっさん。ドアの向こうでなにやらやっている。


ジョボボボボボボ・・・水をためている音がきこえる。


?「おろ?人間、こっちの世界の人間か?おっほ!おやつが出てきた!」


首を後ろに向けおっさんは見上げる。大男を。現実にはまずいない大男。


進撃のなんたらにいそうな大男。おっさんはそれはなぜか読んでない。


怖いのですぐさま目線をそらすおっさん。足が震えてくる。


いつでも逃げられるようにドアノブをしっかり掴んでいる。ドアを閉めてしまえば


空間はまたそれぞれで遮断される。だが、


空間が変わる前からその空間の物体に触り続けているとその空間の物体を認識し続ける限り、


触り続けることができるとも光の塊から聞いた。


?「おい!言葉は通じるな?その中に変な光が3つ入ってんだろ?


それをこっちにわたせ。そうすりゃお前は助けてやるよ」


おっさんは聞いたことを考えながらいろんな表情をした・・・凹んだり怒ったりまた凹んだり


そして凹んだり・・・水がたまったのを感覚で確認して少し扉に入りかけて水をとめる。


?「おい逃げんのか!」


大男が小走りに近づいてくる振動がおっさんをさらに怖がらせる。


すぐにでもドアの隙間に飛び込みたいおっさん。


「   とまれ!!!   」


開きかけのドアに挟まれながら今までにない声で怒鳴るおっさん。


予想外に響く大声。空間が波打つ錯覚を大男は感じた。ドア一枚隔てた手洗い場にいた


3つの塊も驚いていた。洗面台に置いてあったバケツが動く。


何気になみなみとたまった8リットル入る掃除用のバケツを片手で持ち上げるおっさん。


肘を伸ばしたまま持ち上げバケツはするりと隙間から出て行った。


「なぁ、」


おっさんがドアの向こうに声をかける。


「信じるぞ、今の事。どうせこの先このまま進んでもどうにもできないんなら・・・」


?1「お、おう、でも、とりあえず作戦通りに早く戻って」


?2「あ!」


バケツを引き隙間からおっさんが塊に声をかけたあと、塊からの声も聞かずにドアは閉まり切った。


バケツを足元に置き深呼吸するおっさん。目の前はすでによどんだ空気一色の空間。


?「お?ああ!お前!空間閉じやがった!こんにゃろ!ぜってぇ食ってやるぁああ!!」


止まっていた大男は閉じ切った隙間を見て大声で叫んだ!憤怒の形相のまま走ってくる。


「役者にもなれず・・・大道芸人としても鳴かず飛ばず・・・やりたい夢にも近づけず・・・


でも、それでも、今でも、離してないものがある・・・ただ孤独に野たれ死ぬより


こういうへんぴな夢の中で、そいつ握ってもがいて死ぬのが、俺らしいかもな・・・」


そう呟いておっさんは力なく膝まづいてバケツの水に左手を沈めた。


うつむいた顔、表情に力はない・・・ただ、口元が少し笑っていた。

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