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それというもの

自分というものを自覚できたのはそう早くなかった。


生まれて?生きて?死ぬ?


それが生きることを強いられた命のやるべきこと、やらされる事・・・。


誰に?誰が?生き物には親がいる。自分という命を作ってくれた同じ生命体。


自分にとっての「それ」はどこにいるのか?


それが最初に気づいた自分の中での疑問だった。


自分には「それ」が認識できなかった。今の自分がそこに在ると気づいた時には


周りに何もなく目の前にあったのは火の海だった。見上げた上に煙に包まれた空。


視界が動いたことで自分が動けることに気づいた。


手や足というものを知ったのはそこから出た後だった。


暗めの視界に目の前に見える岩の壁。背後に感じる火の海。熱さもない。


充満する煙も煙たく感じない。ただ目の前の壁に手をついた感覚。立っているという感覚。


それらを自覚しながら上に見えた煙に包まれたかすかに見える空を目指す。


引っかかりを掴んでいるわけでもどこかを押さえているわけでもないのに


私がそこに手を付けるとそこから離れない。離すと離れる。不思議な手足で


絶壁のような岩肌を、一度つけた手を放し少し上に伸ばした場所にまたつけて、


それを交互に繰り返し、幾度か滑り落ちながら煙に包まれながら煙から出るように・・・


火口だったそこから急傾斜となっていた山を転げ落ちる。


鮮やかな青空、砂利や石が入り混じった活火山山頂特有の岩肌が目まぐるしく視界を回る。


痛みはない。が、何かに当たる感触、引力に引っ張り込まれるように落ちる感覚を


言葉すら知らないその時の自分は楽しむように止まるまで楽しんだ。


止まった時、少しの後、足だったもので立ってみる。視界に手だったものを見てみる。


そこに手は見えなかった。


あるのはわかる。そこにある。手を伸ばしている。曲げている・・・見えない。


下を見る。足元を見るように・・・見えない。自分の姿がない。だが


自分という認識を「うわ!」という外から聞こえた音に


その方向を向いた時に会えたその男からもらった。


「な、なんじゃ?おんしぁ(なんだお前は?)」


「な、な・・・お・・・すぁ」


聞こえた音を自然とまねた。なぜかはわからなかった。不思議と出た。


「ん?生まれたてか?わしよりでかぁが人型の、魔物、になるんかいの?」


男の姿を見る。布を重ねたようでしっかりとした着付けをした姿。


初めて見た動いた生命体。初めて見たのに


『わたしはこれなんだ(生命体として)』と妙に自信をもって自覚した。


だがこれは「それ」じゃない。本能というものなんだろうな。すぐに理解した。


「しかし見にくいな。ほぼ透明な人型の魔物か。向こうが歪んで見えちょぉもんな。


初めて見た魔物じゃな。殺気がないけぇ近寄ってみたがまぁ危害はなさそうじゃの」


ぶつぶつ言っている男を見つめながらわたしはその時


『この生命体は何だろう?なぜこれを生命体と認識できたのか?同じだと思ったのか?


この生命体を作った「それ」はあるのか?となぜか自分を作り出した「それ」が


この男にもあるのか?』とか考えながらぼーっとしていたんだ。


すると男は懐から太めの紐?細めのロープ?を取り出し丸い輪を地面に作り出した。


大きさは大きめの人間が三人ほど入れる大きさ。


男は恐る恐る右手を差し出してきた。私はそれをまねて見た。温かかった。


「お、おお、思い切ったがさわれるな!ひんやり気持ちええのぉ。


おんしゃぁ悪い魔物じゃなさそうじゃ、人型ならいろいろ賢くなれるじゃろう。


どうじゃろ?わしとこんか?」


温かい手からこの男の人と為り、なのか自分にとって安心していい生命体という認識を。


その男の声という音が、何を言っているのかわからなかったがわたしを受け入れてくれそうな


場所を教えてくれそうな気持を持った。握りあった手に少し力が入る。


「ん?おお、来てくれそうじゃな。じゃぁこっちきてくれるか?」


そういいながら手を引いて輪の中に入る。輪に入ると男は小さい声で何かをつぶやいた後、


紐は光を発し光は縦に伸び、輪の内側を包むようにひかり、


男と私はその光に包まれるように消えた。光に包まれながら私は最初の疑問を思い返した。


思えば最初に持った疑問から光に包まれるまで一時間もなかったがその間、


決めたことがある。自分を作ってくれた私の「それ」に会いたい。と。


あれからどれくらいたったのか・・・



   ようやくここにこれた。



しみじみとつぶやいた私。


「ん長い!!!!!!」


でかいツッコミがその空間にこだまする。


そこは日の光もないのに明るく、そこにはヌンチャクのおっさんとほぼ透明の人型の何かだけが


向かい合っている。果ても見えない空間だがおそらくそんな広くもなさそうな雰囲気の空間。


「おい!なんなんだお前!こえーよ!ヌンチャク握ったら、


なんかヌンチャクに引っ張り込まれる気分になって気づいたらこんなとこで


目の前にプレ〇ターみたいな透明のやつがいきなり自分語りしてそれが思いのほか長くって


突っ込んだのが今でぁぁあああなんで俺は解説してんだあああ!


しかも話の流れだと俺がお前の親っぽいけどわけわかんねーからな!なんなんだよそれ」


おっさんは困惑した。

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