フライパンを描く
じぅと心臓の奥が焼けた
いきなり濃くなる味付け
胸焼けがしそう
わたしの知る愛はこんなものじゃない
春が巡り来る爽やかさよりも
白いキャンバスに投げたトマトみたいに
その色深く、爪痕強く どろりと融け落ちる
仄暗い赤に吸い込まれるようで
この指は止まることを知らない
短冊切り、銀杏切り
可愛らしくしたいからと星で型抜き
ボウルには山盛りの食材たち
イーゼルを立てて
パレットから油をひいて
大きな筆を取り出した
思っていたよりも、今までよりも、厄介な感情だ
綺麗な野菜も炒めただけじゃ味気ない
多少のスパイス、のつもりが
手が滑ってしまった
整えようと、影を足す
あれ、光源は 凹凸は 質感は
そもそも何を映したいの?
不足も過剰もありすぎる
温めすぎたフライパンの中
少しだけ形が崩れてしまった
素材は良いからと言い訳して
綺麗に盛り付けたら、夕食に出そうか