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ルーファとリイナのコンビネーション

☆☆☆


「ええいっ!」


 リイナのかかと落としが頭部に炸裂して、モグラ型モンスターは大きくよろめく。


「そこだ」


 そして、背後に回り込んだルーファがロングソードで斬りかかる。

 前後から大ダメージをくらったモグラ型モンスターは霧消した。


「やったね!」

「うむ、いい連携であったな」


 再び洞窟に挑んだルーファとリイナは、順調に敵を倒し続けていた。

 昨日のレベリングの効果は抜群で、向かうところ敵なしだ。


 ふたりの息もかなりあってきており連携は抜群。

 リイナの『格闘術』もルーファの『剣術』のスキルもかなり上がっていた。


(なるほど……ただレベルが上がるだけではなく、戦うごとに仲間との連携がうまくなり、スキルも上がる。魔王のときの戦い方とは根本的に異なるわけだな)


 魔王時代は仲間と一緒に戦うなんてことはありえない。そもそも同格となる存在はおらず、部下と一緒に戦うということもない。


 そして、魔王に限らず、ある程度の力を持つ魔族は戦闘時にほかの魔族や魔物と共闘することはほとんどなかった。

 魔族道ともいえる美学があり、群れることは弱者がするものだと思っているのだ。


(……こうして仲間とともに戦うことで様々なバリエーションの戦い方ができる。我が先の戦いで勇者と相打ちになったのも、四人を相手にしたからであるしな……)


 勇者たちとの戦いでは、まずは白魔法使いが戦闘開始時に全員の攻撃力と防御力を上げる魔法を使ってきた。通常なら白魔法使いがそんなに早く行動できないので、特殊なアイテムを使ったのだろう。


 続いて、勇者と格闘家が協力して攻撃をしかけてきて、こちらの隙ができるのを狙って黒魔法使いが強烈な爆滅系魔法をぶっ放してきた。


 最初は四人を相手にしても遅れをとらなかったが、じりじりと押され始めた。


 それでも魔王の矜持にかけて戦い続け格闘家に大ダメージを与え、ほかの三人にも少なからぬダメージを与えた。


 最期は、勇者が突っ込んできて、後衛にいるべき黒魔法使いまで距離をつめてきた。


 そのあとは周囲の存在を無に帰する衝撃波を放ちながら、魔王の剣を大上段から勇者に向かって振り下ろし――そこで記憶は途切れた。


(もし勇者が単独で挑んでいたら、あるいは四人がひとりずつ我に挑戦していたら、ひとり残らず殺すことができたであろう)


 そこが人間の狡さであり、浅ましさであり、軽蔑すべきところだと魔王時代は思った。

 しかし、こうしてリイナと一緒に協力して敵と戦い、倒して感じることは――。、


「あはっ、うまくいった! バトルって楽しいね、ルーファ!」


 連携プレイがうまくいって、リイナは弾けるような笑みを浮かべる。


(――そう。楽しいのだ)


 人間は確かに非力である。

 魔族や魔物に比べて体力も魔力も攻撃力も防御力も、なにもかもが劣る。


 だからこそ、防具や武器を揃え、各種アイテムでステータスをアップし、スキルを身に着ける。そして、仲間と協力して自分よりも強い存在を倒していく。


 いまのモグラ型モンスターだって、ヒットポイントが多く攻撃力が高く、一対一なら厄介な相手だ。


(これが、人間の……冒険というものか)


 魔王時代には決して味わえなかった冒険の楽しさ、バトルの楽しさというものを戦えば戦うほどに感じることができた。


 最初からレベル99でレベルを上げる必要のない魔王の毎日は退屈であった。


 基本的に水晶で勇者の動向を探り、各フィールドや洞窟の魔物を選別し、あとは指揮官級の魔族に委ねる。


 歴代魔王には、退屈しのぎに村人を皆殺しにする者もいたが、理知的な第九十八代魔王はそのような暴虐は行わなかった。


 来る日も来る日も魔王城からの景色を眺め、勇者の動向の報告を受け、魔王城内を歩き回るぐらいだった。


(ふふ……現在の魔王も、さぞかし退屈であろうな。おそらく元勇者が魔王なのであろうが……冒険の楽しさを知っているなら、なおさらであろう)


 そんなことを思いながらルーファはリイナとともにさらに洞窟を進んでいく――。


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