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ブルーな気持ち

もし、翔太君にチョコをあげたとして受け取ってもらえなかったら? 答えが“NO”だったら? 私はどうするの? 翔太君、ビックリしてまともに顔を合わせられないと思う。

…ゴメン…。

翔太君の答えがぐるぐる回ってる。どうしよう。ハッピーエンドなんて無理だよ。翔太君の答えはわかってる。わかってるつもりだけど考えたくない。翔太君の「ゴメン」を聞きたくない。



「瑠璃花ちゃん!」

背後から翔太君が私の名前を呼んで、私の心臓はハイジャンプした。

「しょ、翔太君…?」

私ってば思わずビックリ顔をしてしまう。

ドッキン…ドッキン…。

私の心臓、今にも飛び出しそうなくらい大きな鼓動をしてる。

翔太君は昨日とうって変わっての笑顔。

「昨日はゴメンね」

「え…?」

急に謝るからわけがわからないでいる。

「五時にさっさと帰れみたいな態度取っちゃって…」

「全然いいの。アハハ…」

笑ってごまかすけど実は気にしてる私。

「…ならいいんだ」

笑顔でそう言った翔太君。

だけど、私、見たんだ。翔太君が一瞬、悲しそうな笑顔をしたのを…。

まだ何もわからないけど、一体、誰の事を考えてるの? 何を見つめてるの? 私の心の中、不安が広がっていく。もう少しでバレンタインなのに、不安にさせないでよ。

「今から二人でケ―キ食べに行こうか?」

翔太君が提案する。

「…うん…」

少し間をあけて返事した。

すぐに返事は出来なかった。迷ってるからすぐに返事は出来なかった。



「人並んでんな」

翔太君が店の前で唖然としてる。

駅前にある人気のケ―キ屋さんに来たんだけど、外にはたくさんの十人近くのお客さんが並んでる。夕方なら結構空いてるんだけど、今日はスペシャルメニューのせいかお客さんが並んでる。

「今日はスペシャルメニューがあるからだな。中に入れるまで寒いけど待とうぜ」

「そうだね」

うなずきながら店内を見る。

ガラス越しの私、真っ暗でなの。私、一人が暗い。こんなに暗いのは、バレンタインのせい? それとも、翔太君のせい? まだ迷ってるから暗いの?



「おいしいね」

「オゥ!」

ケ―キを前にしてぎこちない笑顔を作る私。

並んで三十分で中に入れたんだ。

私はスペシャルメニューで、キャラメルのシフォンケ―キの生クリーム添えにオレンジジュース。翔太君はブルーベリーのタルトにコ―ヒ―。ケ―キ食べて元気を補充して、バレンタインたくさん悩むよ。

私、自分に自信が持てないでいる。神様って意地悪だよね。私みたいに自信が持てない子と明るい性格の子を二種類作ったんだもん。明るい性格の子でも自信が持てない時もある。だけど、私にはそんなふうに見えないよ。みんながみんな同じ性格が良かったな、なぁんて思ってる。だけど、それじゃあ、つまんないよね。

神様、私みたいな子でも好きになってくれますよね? もしかして、明るい子じゃないとダメなの? ううん、絶対そんなことない。私みたいな子でも好きになってくれるよね?



「今日はどうもありがとう」

自分の家の前で、翔太君に礼を言う。

「いいよ。オレこそ急に誘ってゴメンな」

「うん。今日はごちそうさまです」

「じゃあな!」

翔太君は元気よく私に手を降って家に入っていく。

「バイバイ…」

そんな翔太君の後ろ姿を見ながら、私は小さく手を降った。

瑠璃花、どうするの? 翔太君にチョコを渡すの? 失恋するかわからないけど渡すの? 答えはまだまだわからない。やるだけの事はやっていきたい。






翌日、私が学校に来ると、クラスの女子が雑誌のバレンタイン特集を見てる。

「これ可愛いね」

「こっちも可愛いよ」

指差しながら騒いでる。

みんなキラキラ輝いてる。不安な気持ちはみんなにだってあるはず。私だけじゃないんだよね。

雑誌のバレンタイン特集を見てる同じクラスの女子を見ながら思う。

「瑠璃花、どうするの?」

真理が私の背中をツンツンつつきながら聞いてくる。

私は振り返って、苦笑いしちゃってる。

「決めた?」

「え、あ、えっと…」

うまく言えない。

「まだ迷ってる…」

「ええっ?!」

真理は信じられないっていう感じの表情をしてる。

「バレンタインまであと十日だよ。わかってる?」

「うん、わかってる」

わかってるけど決められない。自分の気持ちがコントロール出来なくて、ブルーな気持ちだよ。こんなのって悲しいよ。

翔太君の笑顔が、私の頭の中でぐるぐる回ってる。自分ではどうすることも出来ない淋しさと不安。二つが重なってふいに泣きたくなる。

「今年もそんなに迷うなら渡すのやめたら?」

真理は冷たく言うけど、ホントにそのとおり。

あげないほうがいいよね。

「渡すのやめる…」

真理の言った事をおうむ返しのようにつぶやく。

真理が他の人に取られちゃうって言った。だけど、今は迷うなら渡すのやめたらって言われちゃった。当たり前だよね。バレンタインは目の前まで来てるのに、まだ迷ってるなんて変だよね。はっきりしなきゃいけないよね。

真理の一言に色んな想いが駆けめぐる。

「…私、チョコあげるよ」

ポツリそう言ったんだ。

「よしっ! そうこなくちゃ!」

真理は自分の事のように喜んでる。

「実は瑠璃花のあげるって答えを導くために、渡すのやめたらって言ったんだ。冷たく聞こえたかもしれないけどゴメンね。どうしても今ここで諦めて欲しくないし、自分の気持ちを伝える大切さを知って欲しかったんだ」

真理は謝りつつ言葉の意味を伝えた。

「そういう意味だったんだ。私、ホントにやめたらって言ってるんだと思ったよ」

「ビックリさせてゴメンね」

「ううん、いいの。真理のおかげで決断出来たから、ありがとうね」

真理に苦笑いじゃなくてにっこり笑顔を向ける。

自分の気持ちを伝えたい。失恋したっていい。気持ち伝えなきゃ、何も始まらない。

ハァ…。

たくさん悩んだ後のため息をひとつ。

もしかして、私、チョコの事、後悔してる…?


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