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どうしよう…

「考えすぎだって。そんなことないよ」

昨日の事を真理に話したんだ。

「だって…」

「彼、瑠璃花の事、嫌いで言ったんでもないし何かされたってわけで言ったんでもないと思うよ」

「すごく嫌な言い方だったんだよ?」

「そんなことないってば。帰るのが遅いと瑠璃花の家の人に怒られるからって意味で言ったと思うよ」

「…だよね…」


昨日の事がつっかかってる。怒ったような表情。それに、早く帰って欲しそうな言い方。私にはグサッとくる感じだった。

失恋したわけでもないのに、胸がチクチクして痛い。ただ翔太君に嫌な言い方されただけだよ。それなのに、涙が頬に伝う。


「瑠璃花?! 何泣いてんの?!」

真理が驚いてる。

「ううん、なんでもない」

涙をぬぐって立ち上がった。

「理科室行こう」

私は涙を誰にも気付かれたくないから立ち上がる。

「う、うん…」

真理は呆気にとられる。

当たり前だけど…なんか…淋しいな…。あんな言い方されて…淋しくなっちゃったな…。

だって翔太君は私が好きだって事は知らない。翔太君は何にも知らない。私のこの気持ちはどうしたらいいの…? どこに持っていったの…?

こんなに好きなのに、翔太君に“好き”が伝わらない。どうやったら伝わるの? いっそのこと、翔太君に私の“好き”は伝わらないほうがいいの? それとも、気持ちを伝えたほうがいいの?



「今日の実験よくわかったね」

真理はやっと終わったというふうに言った。

「そうだね。さっぱりだった」

私は笑顔になる。

そんな私を見ながらふっと笑って、

「やっと笑った」

「え…?」

「理科室行く時から授業中、ずっと落ち込んでたから…」

「ありがとう、真理」

礼を言いながら、理科の教科書とノートを両手で抱きしめた。

「瑠璃花、彼にバレンタインあげるの?」

真理がバレンタインの話題を変えると、思わず私の歩く足が止まっちゃった。

バレンタインのチョコだよね。去年のバレンタインはいっぱい迷って結果、結局渡さなかったんだ。

二月十四日。聖バレンタインデー。

神様が一年に一度チャンスをくれる日。片想いの女の子も、両想いの女の子も、チョコを渡す日。全国が甘い香りのチョコが漂っている。

そんな中、私は、

はぁ……。

大きなため息をついてしまう。

い、いけない。ため息なんかついちゃった。

「もしかして、今年も悩んでるとか言うんじゃないでしょうね?」

ジロッ。

真理が睨みながら言うの。

真理が言うとおり、今年も悩んでる。

翔太君は十九歳。中二の私なんか目に入らないと思う。チョコを渡しても失恋することはわかってる。失恋なんか嫌だよ。だけど、翔太君なら受け取ってくれるような気がする。でも、私の考えは良くないほうへ向いちゃう。

「私、チョコなんてあげれないよ」

「瑠璃花っ!」

真理がまた睨むの。

ああっ…どうしよう…。私、迷いのツボにハマってるよ。

「去年も“チョコなんてあげれない”って言ったでしょ? 今年こそあげなきゃ。フラれたからって近所付き合いが終わるわけないんだから…」

「うん…」

「彼女いたっていいじゃない。まぁ、出来ればいないほうがいいけど、気持ち伝える事が大切なんだからね。それにいないと仮定して、他の女の人に取られちゃうよ」

真理の言った言葉に、言いかけた言葉を飲み込んじゃった。

そうだよ…ね…。自分の気持ち伝えないと他の女の人に取られちゃうよね…。取られちゃう…。この言葉が胸にズシンってきたけどそのとおりだよ。それに、失恋したからって翔太君家族と近所付き合いが終わるわけないもんね。

私が臆病じゃなかったら良かったのにね。傷付くのが怖い。失敗が怖い。だから、ずっと片想いのまま。

今年のバレンタイン、まだ迷ってる。チョコをあげるかあげないか――。

甘い香りのバレンタイン。ホントにどうしよう…。


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