赤い糸は誰につながっているの?!
私、高野瑠璃花。美術部に所属する中二の女の子です。
私の片想いの翔太君は、私の家から十m先の家に家族と住んでる。翔太君は仕事が忙しいみたいだから、家には帰ってくるのが遅いみたい。私の事は瑠璃花ちゃんって下の名前で呼んでくれる。名前を呼ばれる時が一番嬉しいんだ。翔太は優しくて勉強がよく出来て、小学校から高校までバスケをやってたんだ。社会人になってからは、全くやってないみたいなんだ。私なんか、運動オンチだからバスケなんてとんでもない。運動得意って羨ましいなって思ってしまう。
「瑠璃花、何ニヤけてんの?」
真理がジ―ッと私を見ながら言う。
「べ、別に…アハハ…」
笑ってごまかしちゃう。
「わかった。例の彼の事でしょ?」
「バレた?」
「バレバレよ。ホント、瑠璃花ってわかりやすいよね―」
お弁当を片付けながら言う。
やだな―。そんなにニヤけてたのかな? そんなことなかったと思うけど…。
「早くお弁当食べなよ。時間なくなっちゃうよ」
真理が催促する。
「あ、うん」
催促されて、私は時計を見かながら慌てて返事する。
いつもこんな感じだから、何をするのにも真理に催促されちゃう。
一日、翔太君の事考えてる。教室で「翔太君、大好き!」って言いたいくらいなんだけど、そういうわけにはいかないから、自分の胸の中にしまってる。
それに、翔太君に恋してるからクラスの男子が子供っぽく見える。当たり前なんだけど、五つも年上だとこんなに違うんだって感じてしまう。でも、翔太君の少年っぽい目はクラスの男子と変わらないんだよね。
放課後、私は部活はなくて、一人で歩いてる学校の帰り道。真理は陸上部だから、週に一日しか休みがない。真理は運動が好きだから、毎日でも運動したいって感じなんだ。ついでに私は美術部で、週に三日だけの活動。絵は上手くもない下手でもない中ってとこかな。
もうすぐで家につくって時、誰かにポンッと肩を叩かれた。
ビックリして振り返ると、
「よっ!」
翔太君が手を上げて立ってた。
その瞬間、私の胸は高鳴り始める。
「今、学校の帰り?」
「はい。翔太君は仕事は?」
「今日は休み。オレの仕事は、土、日が仕事がある仕事だからな」
「へぇ…」
ドキドキしながらうなずく。
学校の帰りに翔太君に会えるなんて嬉しいよ。学校の帰りに翔太君に会ったのってこれが初めてじゃないかな? 今までは塾の行く時ぐらいしか会わなかったもん。今日はなんかついてるみたいだよ。
「瑠璃花ちゃん、宿題ある?」
「確かあったはず…」
あれれ? 宿題ってなんだっけ? えっと…えっと…あっ! 数学のプリントだ!
「瑠璃花ちゃん…?」
「ある! 宿題あります!」
宿題を思い出し大声を出す。
「じゃあ、宿題持ってオレの家に来てよ」
「瑠璃花ちゃんわかった?」
「なんとなく…」
気弱な返事をする私。
せっかく翔太君に数学教えてもらってるのに、こんなんじゃダメだよね。私、数学が苦手なんだ。やれば出来るんだろうけど、理解するのに時間がかかる。まったく自分が情けないよ。
実は私、三年前の夏に引っ越してきたばかり。偶然、引っ越してきた家の近所に翔太君一家が住んでて、翔太君がいることを知って好きになったんだ。翔太君を好きになった理由なんてないと思う。翔太君を見た途端に、“好き”っていう気持ちが芽生えてきちゃった。
チラッ。
翔太君をチラ見する。
彼女いるのかな? もし、彼女いたら、私がこんな近くにいたらヤキモチ妬かれるかな? いないって答えを期待してるんだけど、未だに怖くて“彼女いるの?”って聞けないでいる。あまりに臆病すぎて…。
「ん? どうした?」
翔太君は顔をかしげる。
ジ―ッと翔太君の顔を見すぎて、翔太君の言葉で我に返った。
「なんだよ―?」
「な、なんでもないっ!」
自分の顔が赤くなっていくのがわかる。
「ま、いいか。あと一問だし頑張ろうぜ」
「は―い」
「お―、いい返事だな」
「エヘヘヘ…」
私が笑うと翔太君も笑ってくれる。
翔太君…笑った。なんか、友達といるみたいにリラックスしてるよ。
この気持ちはなんだろう。淡い魔法をかけられてるみたい。今までに感じたことのないトキメキ。このまま翔太君に甘えたい気分。そう思っただけで心が和むよ。
最後の一問も終わって、翔太君のお母さんが作ったクッキーと紅茶をご馳走になって、翔太君と色んな話をした。
「うわぁ…翔太君、今と同じ顔してる」
翔太君の子供の頃の写真を見せてもらった。
「当たり前だろ?」
「そうだよね。私、小さな時と今と違うよ?」
「アハハ…。それ、絶対整形したんだって」
「ひど―い!」
「ごめん、ごめん。冗談だよ」
こんな冗談を言ったりして楽しい時間が過ぎていった。
「あっ! もう五時だ!」
ふと時計に目をやった私は、声を上げた。
「もうそんな時間か…」
私の声に目をやった翔太君はポツリと呟く。
「もう暗いから早く帰りなよ」
翔太君の口調がさっきとは違いキツい口調になる。
「でも…」
「いいから早く…」
よりキツい口調になる翔太君。
なんかこの言い方すごく嫌な言い方。私にいてもらいたくないような、私の胸にグサッとくる、そんな言い方だった。
翔太君、なんでそんな言い方するの? なんでさっきとは違う言い方するの? 五時には帰って欲しい理由があるの?
翔太君が少し怒ったような表情で私を見てる。そんな表情で見られるのが嫌で、
「じゃあ、またね」
って、数学のプリントと筆箱をカバンにつめて出て行ったの。
翔太君の怒った表情。少し嫌だった。怒った表情で見られた時、ドキッとしちゃった。さっきまで機嫌の良かった翔太君。どうしたんだろう? もしかして、私何かいけないことしたの?
じわっ。
そう思ったら涙が出てきた。
きっと知らない間に何かいけないことしたんだよね…。きっと知らず知らずの間に…。